中島雑貨店です。 まいど ごひいきに

飯田市を中心に活動するアコースティック楽団「中島雑貨店」の活動のご案内です。

妻の「ただいまあ」

2007年01月31日 | 雑貨店主のつぼやき
妻の生まれた在所はここから車で30分ほど北へ行った隣町にある。妻は21年間をその家で過ごした。そしてその家には両親が住んでいて、妻はこの家に行くと「ただいまあ」と元気な声で玄関を入っていく。彼女にとってはもう一つの帰る場所で、その場所は彼女が子供に戻れる場所でもあるわけだ。21歳という世間の何かもあまり知り得ないうちに僕の処へ嫁いできた。二人姉妹の長女だからもちろん両親の反対を拭っての結婚であった。でも、幼き時を過ごしたその「ただいまあ」の家が突然人手に渡ってしまう話がやってきた。それは先週の日曜日の昼下がり、義母からの電話「話したいことがあるので行きます」それから「何の話だろう?」と僕たちは不安な気持ちを言葉にあれやこれや詮索しながら待つこと30分。とあるレストランで待ち合わせ、義母の開口一番「家が古くなってどうしようもないので他に土地を買ってそこへ移る」というのである、今月の初めにあったときはそんな話の微塵もなかったので驚くのは妻だけでなく僕もおなじだった。すでにもう業者との話も売却の話もとんとん進んでいるらしく、3月の終わりには新築の新居へ移るのだそうだ。で、お願いがあって「しばらく家財を我が家に置かせてほしい」ということなのだ。そんなことならおやすいご用なのだが、問題はそれ以前の家を手放す話を何故、娘にしてもらえかったのかである。嫁に出した娘ではあるが、妻はあの家で21年間を泣き笑いし、多感期をも過ごした。想い出深きかけがえのない今でも「ただいまあ」の家なのである。今度の新居はそこからさらに1時間ほど北へ行った、今、妻の妹夫婦が住んでいる家の隣の土地だという話。非常に好条件の土地であることは良く理解できたが複雑なのは妻の気持ちである。
いずれにしろ手放す意志は固まっているとは言え、ここまでの経過の内に話をしてほしかったのである。
その夜、台所で洗い物をする妻の背中は泣いているようだった。あの「ただいまあ」家がなくなるのである。彼女の子供に還る場所がなくなるのである。床にしゃがみ込んでいつのもようにナンプレに興じていてもその肩は泣いている。
僕の父の介護に追われ、都会で一人暮らしをする娘には毎日毎朝携帯を入れる。息子と僕のお弁当を毎日欠かさず作ってくれる。昨年まで努めた保険外交員の職は離れ、今はバイトのような生活。地区の公民館役員の一年間が終えようとしているが、なんと来期からは本館の文化部の役員に推薦抜擢され2年間を約束させられた。前向きに明るく、いつも「なんくるないさあ」を心で言い続けている妻。傷害を持つ僕をいつも支えてくれ、気遣ってくれる妻。彼女の背中が泣いている。
これからはなんとか僕が彼女の「ただいまあ」の場所になってあげよう。
妻よ、君には「スタンド・バイ・ミー」のほうがやっぱり似合っているよ。

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6 コメント

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ココロ震える話です・・ (たるみごーごー)
2007-02-01 07:58:53
妻の帰る場所は<雑貨店主さん>ですね・・・
子供のころ育った<ただいまぁ>の家が無くなる
寂しさ・・分かりすぎるほどわかる。。身につまされます。。ここで、、もう胸イッパイです。。
そして、、妻の忙しい愛ある毎日に頭が下がります。
いい話です。。。
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そろそろ・・・ (まさみ)
2007-02-01 09:05:31
奥様が何も言わずに肩が泣いているのは「ただいまあ」を言える家そのものだけではなくて・・・
そろそろ自分が「ただいまあ」の言えるところを作ってあげる年代になったということなのかもしれません。

これからは僕が・・・のところで、図らずも涙がとまらなくなってしまいました。
昨年夫の父と私の母を送り、ゆっくりですが自分もそうありたいと思い始めたところです。
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今日の妻 (雑貨店主)
2007-02-03 22:32:49
たるみさん>
たるみさんには幼い頃の有無も言わされぬ、辛い郷愁がありますね。
物心つき始めた多感なころだっただけに、信州への思いはすかいものでしょうね。でもそうですか?信州はやさしいですよ。誰にもおなじにやさしいですよ。またいつでもお出かけください。僕の実家へもご案内しましょうね。
まさみさん>そうですね。妻にとって娘は「あかり(娘の名前です)の還る場所は私とこの家」と自分では無意識のうちにそういう気持ちがでんと心に居座ってきているのでしょうね。
口では「あの子はどこへ行っても一人でやっていける子だよ」といいながらも毎朝電話しています。
だんだんに自分の親も遠いところへいく年になりやっと自分はもう少し大きくなってせめて家族を受け入れる器にならなくては、と思うこのごろです。
ところで東京オフ会は昨晩でしたか?あ、今日でしたっけ?
楽しまれましたか?僕もあのなつかしい東京へ行きたいこの頃です。オフ会、あるいはナターシャナイトなど機械があったらまたお伺いしますね。
今日の妻はすこぶる陽気でした。午後から僕と息子を連れ出して
ホームセンターへ買い出し。地下室の修理にいるつっかい棒なるものを購入、それからいつもの食料品店へ恵方巻きの具材を買い出し。「ちゃんちゃんとやってかないと日が暮れちゃうね」なんていいながら帰ってきてしっかり午睡。いつのも陽気な妻になってました。
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昨晩の妻 (雑貨店主)
2007-02-03 22:35:17
そうそう、昨晩の妻はテレビで「千と千尋」をやってたもんですから
早速グロッケンを出してきて、テーマソングにあわせて「いつも何度でも」を一緒に弾いていました。この人の演奏は結構完成度高い!
あらためて驚かされました。
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Unknown (まさみ)
2007-02-08 00:53:41
今日の妻、そして昨晩の妻
読ませてもらいました。

オフ会は、VegaさんがUPしてくれた通り、穏やかで温かいムードでした。
まだまだオートハープビギナーですが、皆さんの後をマイペースで着いていこうと思っています。

原宿こんとん館は毎月第2金曜日です。そう、今月は今週です。あ~練習しなくては!
でも、下手でも参加できるのがいいところなのです。

今年の「OUT OF FOLK 」は6月なのですね。
又みなさんに会えますように・・・楽しみにしています。
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原宿こんとん館 (雑貨店主)
2007-02-08 22:00:59
まさみさん>
こんとん館にもし行けるチャンスができたら一緒に行ってくださいね。町田まで車で行きます。それから先は考えましょう。駐車場あれば原宿まで行きたいところです。ナターシャナイトで皆さんの歌を聴いたり自分の演奏もきいてもらったり。

オフ会の盛り上がりぶりはMLのほうで拝見しました。山下さんも楽しそうでしたね。
OUT OF FOLK、6月になりました。また常連の皆様には通知いたしますので、宜しくお願いします。
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