2006年06月08日 16:47
聖なる野獣にして敬虔なる音楽家ヨーゼフ・アントーン・ブルックナーを
神々しき我が国最年長の現役指揮者である朝比奈隆氏が
その長い長い長いキャリアと全生命を賭して指揮する。
これは未完の大作で全三楽章から成り立ち原典版にして
神秘的でさえある。うまく言葉で説明することは難しい。
ハース版やノヴァーク版ではなく様々な解釈や最終章が存在するが
大阪フィルのなんともいえないこの粘り強い素晴らしく力強い
昔ながらの長い時間を共に過ごしたこの大楽団の演奏とあいまって
荘重で尚且つ天へ限り無く近づくインスピレイションが涌き起こる
この盤は絶品である。もう最高傑作といっても過言ではない。
ブルックナーといえば明るい曲調のものは第四番交響曲の
変ホ長しかないのだがこれは二短調といえども少しも悲壮感や
絶望の想いは微塵も感ぜられない。いやきっとそれどころか
むしろ明るい未来さえ予感させるような深い味わいが存在する。
迫力の第二楽章は特に取り立てて個人的には浄化されてゆくようで好む。
なにか美術的創作もしくは原稿作成へ打ち込まねばならぬとき
精神を集中させるためにも聴き続けると自分の場合は莫大な効果が有る。
自分的には多勢に反するようではあるが「第九」といえば
年末に巷でよく歌われる歓喜の楽聖ベートーヴェンよりも
聖ブルックナーを特にとりわけ心から好んで聴くのである。
 | 朝比奈隆 生誕100周年 ブルックナー交響曲全集 交響曲第9番 ニ短調(原典版)大阪フィルハーモニー交響楽団 朝比奈隆ポニーキャニオンこのアイテムの詳細を見る |