3メートルの槌 ~ほぼクラシック音楽ブログ~

その日に聴いたクラシック音楽の演奏会やCDを気ままに書き綴っていきます。

東京交響楽団 ニューイヤーコンサート2022

2022-01-09 20:06:32 | 演奏会

2022年最初の演奏会は、毎年恒例の秋山和慶×小山実稚恵×東京交響楽団のニューイヤーコンサート。自分にとっては、4年連続5度目です。

プログラムは、

  1. J.シュトラウスワルツ「春の声」Op.410
  2. ショパンピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11
  3. ドヴォルザーク交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
ピアノ:小山実稚恵
指揮:秋山和慶東京交響楽団/コンサートマスター:グレブ・ニキティン

    

前半。最初の曲は、ヨハン・シュトラウスⅡ(1825-1899)のワルツ「春の声」Op.410。元々はオーケストラ伴奏付きの歌曲として作曲されました。歌曲版初演の2週間後にはオーケストラ版が初演され、それぞれ大成功を収めたようです。

今年81歳を迎える秋山和慶さん。背筋をピンと伸ばして登場し、指揮ぶりも若々しい。演奏の方は、若干手綱が緩んだような感じで締まりが悪い。一本調子で面白みがなかったですが、ウィーンの風を感じられました。

    

前半2曲目は、ショパン(1810-1849)のピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11。ショパンの2曲あるピアノ協奏曲は、ともに初恋の女性とされるコンスタンツィア・グワドコフスカ(ワルシャワ音楽学校の声楽家の学生)への思いが込められていると言われています。確かに両曲とも哀愁を帯びている。

小山実稚恵さんのショパンを聴くのは5年ぶり。説得力のある演奏でしたが、バックのオーケストラがもたれ気味。聞いた場所が悪かったのか、しっとりし過ぎて音に覇気がない。煌びやかな小山さんのソロが素晴らしかっただけに残念。

ソロ・アンコールは、ショパンノクターン第2番変ホ長調Op.9-2。ショパンのノクターンと言えば、この曲。という位有名な曲です。小山さんの優美でしっとりした演奏で感動的でした。

    

20分の休憩後の後半戦。毎年ニューイヤーで演奏されるドヴォルザーク(1841-1904)の交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」

休憩が入って一転、東響の本領発揮といった演奏でした。安定の木管楽器とホルン。オーケストラすべてが一体化していました。イングリッシュホルンは客演の方かな?良い音でした。

秋山さんの指揮はメリハリがあり、聞きどころを押さえた演奏で素晴らしかった。

アンコールは、恒例のヨハン・シュトラウスⅠ(1804-1849)のラデツキー行進曲。拍手で会場が一致団結した感じで良かったです。


ノット監督×東京交響楽団 特別演奏会「第九」 2021 (12/28)

2021-12-28 21:52:42 | 演奏会

今日は、ノット監督が指揮する「第九」の演奏会を聞きにサントリーホールへ行ってきました。去年はコロナ禍&仕事の都合で聞きに行けなかったので、2年ぶりになります。

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プログラムは、

  • ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱付き」
盛田麻央 (S), 金子美香 (Ms), 小原啓楼 (T), 甲斐栄次郎 (Br)
合唱:新国立劇場合唱団 (合唱指揮:河原哲也)
指揮:ジョナサン・ノット東京交響楽団/コンサートマスター:グレブ・ニキティン

今回の公演もコロナ禍によりソリスト4人が変更になりました。

     

2年前の初日公演は肩に力が入った少し不満の残る演奏。2日目が別団体が演奏しているかのような段違いに素晴らしかった演奏でしたが、果たして今回は。

オーケストラは、14-12-10-8-5の2管編成でした。

もちろん3年目なのでノット監督の意図をだいぶ汲み取ることができたようで、第1楽章冒頭から自然に流れる音楽となっていました。ヴィブラートを控えめにする古楽器奏法を取り入れたり、テンポの緩急やアクセントを鋭く取ったりとより明確になり、常に進化しているノット監督のアイデアはさすが。第1楽章後半は嵐のような荒れ狂うようで激しい。

第2楽章でも激しさは変わらず。早いテンポの明るいトリオとの対称性がはっきりとしていました。オーボエソロとホルンソロが大変素晴らしかった。

 

合唱団とソリスト4人は、第2楽章が終わってから登場。コロナ禍なので合唱団は間隔をあけて着席。SATB=17-15-13-15の総勢60名。ソリスト4人はオーケストラの前方に着席。

 

第3楽章は牧歌的な印象がありますが、ノット監督の手にかかると、さらに神秘的になるのが不思議。ここでもテンポは速めなのは古楽器奏法を意識してなんでしょうか。慌ただしさはなく、爽やかでのどかな草原の風景が目に浮かびます。

そして2年前と変わらずアタッカで第4楽章へ。激しいティンパニが印象的。前3楽章を否定するレチタティーヴォをサラッと流し、さっさと歓喜の歌へ。勢いがあって流れは良いがスッキリしすぎかな。

合唱は60名で音量に不足なく十分聞き応えが有りました。ソリストでは11月のカルミナ・ブラーナでも歌ったソプラノの盛田さんの線の細い歌声が気になった。もう少し前に出てもいいんじゃないか?テノールの小原さんとバリトンの甲斐さんは申し分なかったです。

最後の最後までテンポが弛緩することなく、勢いでフィナーレに突っ込んでいく感じで素晴らしかったです。明日の2日目はどんな演奏になるんでしょう。聞きに行きたかった。残念。

     

アンコールは、恒例の「蛍の光」。ソリスト、合唱団のメンバーは手にライトを持ち、最後は会場内が暗転しライトが点々と輝くという演出でした。

    

今日で2021年の演奏会は聞き納め。来年もコロナ禍は変わりないでしょうから、ぼちぼちと聞きに行きたいと思います。


過去の演奏会から ~ ブロムシュテット×NHK響の「第九」(2016年12月21日)

2021-12-25 21:26:34 | 演奏会

今日の「第九」は、過去のNHKの放送から。2016年12月21日に収録されたヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団の演奏会。

自分が初めて生で聴いたN響の「第九」が、この収録の2日後の23日でした。しかも初ブロムシュテットさんでもありました。

  • シモーナ・シャトゥロヴァ(S)、エリーザベト・クールマン(A)、ホエル・プリエト(T)、パク・ジョンミン(Br)
  • 東京オペラシンガーズ
  • ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/NHK交響楽団

ブロムシュテットがNHK響で「第九」を振るのは1985年以来31年ぶりだったそうで、当時89歳。テンポがきびきびしていて若々しい。使っている楽譜も最新版と、常に進化し続けているブロムシュテットさん。さすがです。


追悼 パヴレ・デシュパイ(1934-2021) ~ 仙台フィル #135 定期演奏会の思い出

2021-12-18 14:34:08 | 演奏会

12月16日、クロアチアの作曲家、指揮者のパヴレ・デシュパイさんが亡くなったそうです。

デシュパイさんは、ザグレブ放送交響楽団の音楽監督(62~67)、フロリダ交響楽団音楽監督(70~81)、ザグレブ・フィルの常任指揮者(86~91)などを歴任。日本では藝大の教授、藝大フィルの指揮者の他、東京フィル、東京交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、仙台フィルなどに客演しています。

指揮活動に加え作曲活動も行っており、「ピアノと弦楽のためのパッサカリアとフーガ」「管弦楽のための変奏曲」「ヴァイオリン協奏曲」他の作品があります。

自分がデシュパイさんの指揮する演奏会を聴いたのは、仙台フィルの定期会員だった1998年1月の演奏会でした。自分が聴いた外国人指揮者と仙台フィルの初めての組み合わせでもありました。

この時のプログラムは、

  1. ベートーヴェンヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
  2. チャイコフスキー交響曲第5番ホ短調Op.64
ヴァイオリン:服部譲二
指揮:パヴレ・デシュパイ仙台フィルハーモニー管弦楽団/コンサートマスター:渋谷由美子 or 森下幸路

この時のコンサートマスターは森下さんだった気がするが自信がない。

前半の服部さんのベートーヴェンは、芯が太くて説得力のある演奏だった気がする。バックのオーケストラが、重厚な響きを出していて、デシュパイさんはただ者ではないと確信。後半のチャイコフスキーの5番は、素晴らしくブラボーの嵐でした。珍しくアンコールがあって、ドヴォルザークスラヴ舞曲第10番ホ短調Op.72-2も最高でした。

あまりの興奮で30分位歩いて家まで帰った気がする。

この演奏会が唯一でしたが、もう一度演奏を聞きたい指揮者の一人でした。今夜はデシュパイさんのCDを漁ってみようかな。


飯森範親×福間洸太郎でラヴェル2つのピアノ協奏曲&ベルリオーズ ~ 東京ニューシティ管弦楽団 #144

2021-12-12 19:31:15 | 演奏会

今日は、3か月ぶりに東京ニューシティ管弦楽団第144回定期演奏会を聴きに、池袋、東京芸術劇場へ。ラヴェルの左手と両手のピアノ協奏曲を一挙に聞けるということで行ってきました。

プログラムは、

  1. ラヴェル左手のためのピアノ協奏曲ニ長調
  2. ラヴェルピアノ協奏曲ト長調
  3. ベルリオーズ幻想交響曲Op.14
ピアノ:福間洸太郎
指揮:飯森範親東京ニューシティ管弦楽団/コンサートマスター:執行恒宏

東京ニューシティ管弦楽団の演奏会は去年から聞き始めて、今回で通算3回目。客演奏者の方が多そうですが、頑張ってる感があっていいですね。

     &     

前半は、ラヴェル(1875-1937)の左手のためのピアノ協奏曲ニ長調ピアノ協奏曲ト長調

この2曲は、1928年『ボレロ』を発表後の1929年頃からほぼ同時進行で作曲が進められました。確かに『左手の協奏曲』にはボレロを彷彿とさせる旋律が出てくるし、両手の『ピアノ協奏曲』では左手だけで演奏する箇所があったり、更にアメリカ訪問で影響受けたジャズやブルースの要素も含んでいたり共通点が多い気がします。

左手の協奏曲は第1次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱で書かれ1931年初演。両手の協奏曲はマルグリット・ロンに献呈され、1932年に初演されました。

 

福間洸太郎さんは、パリ高等音楽院、ベルリン芸術大学、コモ湖国際ピアノアカデミーで学び、20歳でクリーヴランド国際コンクール優勝(日本人初)及びショパン賞を受賞しています。

自分はこれまで6回演奏会で聴いてますが、フランスものは初めて聞きます。両曲とも力強さと柔軟さを備えおり、輪郭のはっきりとしたメリハリのある演奏でした。片手の協奏曲はまるで両手で演奏しているようで、ずっと手元を見てました。すごい。2曲目の両手の協奏曲では、第2楽章の哀愁を帯びた美しさが絶品でした。

アンコールは、ゴドフスキーが編曲したサン=サーンス白鳥。これまた美しかった。

    

後半は、ベルリオーズ(1803-1869)の幻想交響曲

この曲を生で聴くのは8度目。いろんな演奏、演出を見てきましたが、今回の飯森さんの演奏は自分の理想に近い。それは、第1楽章から第5楽章までアタッカで演奏していたことです。第1楽章で夢の中に入って、そのまま第2楽章の舞踏会に進み、舞踏会の会場の外に出て第3楽章へ。ここで小休憩入れても良いかな。第4楽章でギロチン台に進み、首を切られて第5楽章で魔女や妖怪が現れる。休憩なしで一気に行った方が心地よい。

演奏は打楽器の強打でアクセントをつけるのは、今や常套手段のようで新鮮味はなかったが、テンポの緩急の付け方が心地良い。第2楽章のワルツといい、第3楽章の素朴感といい、物語が頭の中で浮かぶようでした。イングリッシュホルンと会場外のオーボエが美しかった。第4楽章での打楽器群は圧巻。第5楽章では音がカオス状態で、魑魅魍魎感が出ていて素晴らしかった。自分的にはもう少しアップテンポが良かったかな。少し重たい感じがした。

    

これまで東京ニューシティ管弦楽団と言えば、ベートーヴェンを新しい楽譜で演奏したり、ブルックナーを新しい版で演奏したりと、前音楽監督が趣味でやっているプロオーケストラという印象でしたが、飯森さんが指揮した9月と今回の演奏会でオーケストラが伸び伸びと演奏していてイメージが変わりました。

来年4月からパシフィックフィルハーモニア東京に生まれ変わり、飯森範親さんが音楽監督として就任します。応援したいですが、来シーズンは演奏会に行けるかどうか。プログラムが意欲的で行きたいんですけどね。