3メートルの槌 ~ほぼクラシック音楽ブログ~

その日に聴いたクラシック音楽の演奏会やCDを気ままに書き綴っていきます。

アクセルロッド×富田心×都響 ~ プロムナードコンサート No.395

2022-02-11 20:07:27 | 演奏会

朝早く大阪を出まして、お昼に東京到着。東京都交響楽団プロムナードコンサートを聴くために、そのままサントリーホールへ。大好きなチャイコフスキーの第4交響曲と、グラズノフのヴァイオリン協奏曲なのでテンション上がります。

プログラムは、

  1. チャイコフスキー歌劇「エフゲニー・オネーギン」~ ポロネーズ
  2. グラズノフヴァイオリン協奏曲イ短調Op.82
  3. チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調Op.36
ヴァイオリン:富田心
指揮:ジョン・アクセルロッド東京都交響楽団/コンサートマスター:矢部達哉

指揮のアクセルロッドさんは、去年の12月からずっと日本に滞在して色々なオーケストラと共演していますが、どれもが素晴らしい演奏だそうで。それにしてもレパートリーどれだけあるんだろ。

     &     

チャイコフスキー(1840-1893)の歌劇「エフゲニー・オネーギン」交響曲第4番は、ほぼ同時期の作品。傑作が続々と誕生した時期ですが、その背景には不幸な結婚があることを忘れてはなりません。結婚破綻後、失意のうちに海外へ旅立ち、スイス、フランス、イタリアで保養することになり、そこでこの2作品を書き上げます。

歌劇の内容は、厭世的な青年詩人エフゲニー・オネーギンと田舎地主の娘タチアーナを中心とするもので、タチアーナの一途な愛を拒絶したオネーギンが、時が経って侯爵夫人となって成熟したタチアーナに再開し、今度は彼の方がタチアーナに求愛するものの彼女に拒絶される、というもの。

「ポロネーズ」は、第3幕冒頭、ペテルブルクの上流階級の人々が集まるパーティで踊られるもので、極めて華やかな作品です。冒頭のトランペットのファンファーレが聞きもの。アクセルロッドが登場し、拍手が止むと間髪入れずにファンファーレ。熱気がオーバーアクションな指揮ぶりとともに伝わってきます。オーケストラをグイグイ引っぱっていく力がありそうです。

プログラム最後の交響曲第4番同様に、アクセルロッドのドライブ感がすごい。華やかな「ポロネーズ」のファンファーレとは対照的に、第1楽章冒頭のホルンとファゴットによる運命の動機のファンファーレからかなり力が入り、熱のこもったものを感じました。音の強弱といい、テンポの緩急といい、一時も気が抜けない。第1楽章の終わり方は、バーンスタインが指揮した演奏によく似てました。バーンスタインの元で学んだことがあるので、影響を受けたんでしょうね。

第2楽章の哀愁を帯びた印象、第3楽章のおどけた感じと表情をコロコロと変え、再び第4楽章で大爆発。これだけブラスをガンガン鳴らすとは。耳が壊れそうです。それにしても、何度聞いても気分が盛り上がります。

    

プログラム2曲目。グラズノフ(1865-1936)の唯一のヴァイオリン協奏曲イ短調。本格的に作曲が行われたのが1904年で単一楽章で書かれています。

ヴァイオリンの富田心さんは、Coco Tomitaとして活躍中。2002年生まれ。2017年イーストボーン交響楽団ヤング・ソリスト・コンクール優勝。2019年ウィーン国際音楽コンクール、ベルリン国際音楽コンクールにおいてともに金賞受賞。カール・フレッシュ・アカデミーにれカール・フレッシュ賞を受賞。2020年BBCヤング・ミュージシャン2020弦楽器部門優勝。という素晴らしい経歴の持ち主。

緑のドレスで登場したCocoさん。冒頭の一音から貫禄のある響き。音がよく鳴り響き、情熱さと甘美さとを合わせもった表現力が感じられました。カデンツァでの高度なテクニックも素晴らしい。フィナーレでの華やかさも良かった。

アンコールは、エネスク(1881-1955)の「幼き日の印象」~ I. 辻音楽師Op.28-1。音がきれいで、テクニックも抜群。若いのに堂々としていて、これからの活躍に期待したいです。

    

グラズノフのヴァイオリン協奏曲のフィナーレでもトランペットのファンファーレが鳴り響きます。ということで、今日の3曲に共通するのは「ファンファーレ」でしょうか。2日連続の演奏会は今までにもありますが、今回は距離が長すぎた。疲れたので寝ます。


尾高忠明×大阪フィルの「ブルックナー第5番」 〜 大阪フィル #555

2022-02-10 22:36:38 | 演奏会

木曜日休み&東京が雪ということで、1年半ぶりに大阪に来ちゃいました。目的は、大阪フィル音楽監督、尾高さんのブルックナー第5番。大阪フィルの本拠地フェスティバルホールに初めてお邪魔しました。

プログラムは、

  • ブルックナー交響曲第5番変ロ長調 (ノヴァーク版)
指揮:尾高忠明大阪フィルハーモニー交響楽団/コンサートマスター:崔文洙

朝比奈隆時代が終わってから20年経ちますが、ブルックナーと言えば大阪フィルの代名詞のようなものです。尾高さんのブルックナーも定評があるので期待が持てます。

     

初めてのフェスティバルホールは、空間が広く、響きも良い感じ。なるほど、大阪フィルがブルックナーを得意とする理由がわかった気がします。

演奏時間約80分の交響曲第5番ですが、インテンポで演奏しても最後は盛り上がりますが、聴いてる側とすると徐々に飽きてくることがあります。その点尾高さんは、テンポでメリハリをつけ、聞き手にも飽きさせない工夫があったように思われます。特に第4楽章のテンポの緩急は凄まじく、一気に駆け抜けたかと思うと、穏やかな箇所でテンポを落としたり、コーダで曲が終わるのを惜しむような一音一音アクセントを加えたスローテンポを取ったりと、目まぐるしく風景が変わるようで面白さがありました。

オケは16型の2管編成。ブラスのドスの効いた迫力は朝比奈時代の演奏を思わせます。安定のホルン。そして管楽器も素晴らしい。弦楽器に美しさと荒々しさと両方を併せ持たせたのは、ブルックナーのロマンティシズムと野生味を表現したように思えました。

また大阪に来たい。今度はゆっくりと2泊以上で満喫したいです。

明日は9時台の新幹線で戻り、都響です。

 


まさに王道、そして圧巻!秋山和慶のブラームス ~ 東京交響楽団 #679

2022-01-30 19:53:13 | 演奏会

2日連続で、今日はサントリーホールへ。東京交響楽団第679回定期演奏会です。今回も日本政府による新型コロナウイルス感染症に係る入国制限により、当初出演予定だったヴァイオリンのクリストフ・コンツから新進気鋭の吉田南に変更になりました。

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プログラムは、

  1. ブラームスヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
  2. ブラームス交響曲第1番ハ短調Op.68
ヴァイオリン:吉田南
指揮:秋山和慶東京交響楽団/コンサートマスター:水谷晃

という、秋山さんの十八番のオール・ブラームス・プログラム。秋山さんのブラームス第1番を聴くのは5年ぶりです。

    

前半1曲目。ヨハネス・ブラームス(1833-1897)のヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77。ブラームス45歳。まさに円熟期の作品で、よく演奏される人気曲です。

急遽代役を任せられた吉田南さん。第1楽章オケの前奏の後、ソロの情熱的なカデンツァ風の登場の仕方から堂々としていて、ただ者ではない。線は細くなりすぎず太くなりすぎず丁度良い感じ。穏やかさと激しさとの表現のバランスも良い感じ。まさに理想的な演奏。

第2楽章ではオーケストラのオーボエが秀逸。ヴァイオリン・ソロも合わせるように美しい。一転第3楽章ではジプシー風というべきか、気性の激しさが伝わってきました。

ソリストアンコールは、テレマン(1681-1767)の無伴奏ヴァイオリンのための12の幻想曲~第10番ニ長調 第1楽章。繊細で美しかった。もっと聴いてみたい。今後の活躍が期待されます。

    

後半は、交響曲第1番ハ短調Op.68。40歳を過ぎてから初めて完成させた、ブラームス初の交響曲。大変な人気曲で、生演奏は今回で9回目、だと思う。

今日聴いた第1交響曲は5年前と比べるとスケールや重厚さが加わったようで、まさに圧巻な名演奏。第1楽章冒頭のティンパニの連打と低音楽器の響きが恐ろしいほど重い。主題に入ってからも重厚さは失われず、第1楽章全体が緊張感に包まれたような荘厳さがあった。

対称的に中間2楽章は穏やかな雰囲気を湛えていて、牧歌的な印象。東響の安定の木管楽器群が素晴らしい。

再び重く暗く始まる第4楽章。しばらくするとクララへの愛を現すとされるホルンのフレーズは、ゆったりとしてスケールが大きく聞き応え抜群。フルートを始め木管楽器もさすがに上手い。続く第1主題も雄大で、自然と圧巻のクライマックスに繋がっていきます。コーダでの金管のファンファーレも素晴らしい。

全てが完璧な演奏だったんではないでしょうか。久しぶりに爽やかに疲れました。 


シューベルトのピアノ協奏曲!? 世界初演 ~ 東京シティ・フィル #67 ティアラこうとう

2022-01-29 20:55:00 | 演奏会

今日は3年ぶりにティアラこうとうに行ってきました。目的は、東京シティ・フィル 第67回ティアラこうとう定期演奏会。吉松隆編曲のシューベルトのピアノ協奏曲の世界初演というので興味津々です。

プログラムは、

  1. シューベルト(吉松隆編):ピアノ協奏曲…ピアノ・ソナタ変ロ短調D960(第21番)のピアノとオーケストラのための演奏用バージョン
  2. シベリウス交響曲第1番ホ短調Op.39
ピアノ:田部京子
指揮:藤岡幸夫東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団/コンサートマスター:戸澤哲夫

吉松隆編曲のシューベルトのピアノ協奏曲の原曲がピアノ・ソナタ第21番ということで、聞きまくって予習してました。もちろんピアノは田部京子さん。

    

藤岡さんと吉松さんの楽しいプレトークの後、前半1曲目。上記のCDを聴いたのをきっかけに、吉松隆さんが彼女への誕生日プレゼントとして編曲したそうです。2000年の春に仕上がったものの演奏が実現することはなく、20年以上お蔵入りになりました。

その20年以上前スコアをみせられた藤岡さんは、東女シューベルトにグロッケンシュピーゲルはないでしょという反応でした。しかしコロナ禍でスコアを整理している時にこの作品を再発見。これは面白いと考えを改め、世界初演するに至ったとのこと。

シューベルト(1797-1828)のピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960は、作曲者最晩年(といっても31歳)の作品。全体的に歌うような旋律が現れ、いかにも歌曲の作曲家らしい。全体の半分の時間を要する長大な第1楽章は、死を覚悟した美しい音楽。人は死を意識すると優しくなるんです。第2楽章は自身の葬送行進曲。短いスケルツォでテンションを上げ、第4楽章で未来へと突っ走る。確かに感動的な音楽です。

吉松隆(1953-  )はピアノ・ソナタをそのままオーケストラ用に編曲したようで、小節数は同じとのこと。第1楽章は、まるでオーケストラ伴奏付きのピアノ・ソナタという感じで、ピアノ協奏曲とは程遠い印象。第2楽章でピアノが主役にしたのは良いアイデア。田部さんのしなやかな腕が美しい。第3楽章と第4楽章はピアノ協奏曲風に仕上がっており、聞き応えはあった。

今後、藤岡さんのオーケストラである関西フィルでも演奏されるそうで、評価はこれから定まっていくんでしょう。いじれにせよ田部さんのピアノが聞けたので大満足。

    

後半。吉松さん&藤岡さんともに大好きなシベリウス(1865-1957)の交響曲第1番ホ短調Op.39。藤岡さんは関西フィルとシベリウスの交響曲全集を録音しているそうで、得意にしている様子。

第1楽章冒頭のティンパニのトレモロに強弱(表情)を大胆につけ、これをバックに奏したクラリネット・ソロが神秘的で美しい。続く第2ヴァイオリンの激しい刻みと第1ヴァイオリンの強烈な音(第1主題)が、霧に包まれた大地に降り注ぐ明るい太陽の日差しのようで変化が激しい。続く第2楽章の物憂い感じが出ていて良かった。その反動で激しい第3楽章でのアンサンブルの粗さが曲調にあっており、その勢いのまま第4楽章になだれ込み、最後まで力強さを失っていなかった。

シティ・フィルの絶好調ぶりが感じられた演奏会でした。来月も聞きに行きます。


下野竜也×メシアン&ブルックナー ~ 読売日本交響楽団 #614

2022-01-21 21:54:00 | 演奏会

昨日の1月20日木曜日

今年2度目の演奏会は、メシアンブルックナーという二人の敬虔なカトリック信仰者の作品を並べたもの。メシアンとブルックナーのプログラムと言えば、1996~98にかけて行われた若杉弘×NHK交響楽団のチクルスを思いだされます。自分もラジオで聴いた記憶があります。勿論CDも買いました。

さて、当初出演予定だった指揮者がローター・ツァグロゼクから下野竜也に変更になったものの、曲目の変更がなかったのは嬉しい限り。ブルックナーの第5交響曲は、下野さんが正指揮者としての最後のプログラムで取り上げて以来なので、9年ぶりの再演となるそうです。

プログラムは、

  1. メシアンわれら死者の復活を待ち望む
  2. ブルックナー交響曲第5番変ロ長調WAB.105 (ハース版)
指揮:下野竜也読売日本交響楽団/コンサートマスター:林悠介

サントリーホール。前半約30分、後半約80分。長丁場になりそうな予感。

    

前半1曲目は、オリヴィエ・メシアン(1908-1992)の『われら死者の復活を待ち望む』。1964年、2つの大戦のために没した人々を追悼するために作曲されました。曲名は、カトリックのミサ通常文の「クレド=信仰宣言」から採られています。1965年5月7日にパリのサント・シャペルで私演会的に初演、翌6月に同じ場所でフランス大統領隣席の元に再演されました。

5つの部分からなっており、それぞれ聖書からの抜文が注釈として添えられています。

  1. 主よ、私は深い淵からあなたに呼ばわる。主よ、どうか、わが声をお聞きください
  2. キリストは死人の中からよみがえらされて、もはや死ぬことがなく、死はもはや彼を支配しない
  3. 死んだ人たちが、神の子の声を聞くときがくる
  4. 彼らは栄光あるものに、新しい名とともに蘇るだろう ― 星たちの喜ばしい合唱と天の子たちの歓呼のうちに
  5. わたしはまた、大群衆の声を聞いた

聖書を読む人には分かる内容なんでしょう。音楽との脈絡があまり感じられない気がする。信仰が足りないのかな?

屋外での演奏を想定したため楽器編成は弦楽器はなく、金管楽器は低音重視。さらに多種多様な打楽器が使われるという特殊な編成。聞かれるサウンドもなかなか面白い。今までCDで幾度となく聞いてきましたが、やはり生の音は良いですね。

舞台上の最前列左にフルート、右にクラリネット。2列目左がオーボエ、右にファゴット。その後ろに6つのホルンなど金管楽器。最後列は打楽器群。4管編成の弦楽器なし、金管楽器補強と打楽器多めといった感じでしょうか。

下野さんは指揮棒なしで指揮。分かりやすい指揮ぶりで、複雑な音楽を分かりやすくかみ砕いたような演奏でした。丁寧に音楽を作り上げていった感じを受けます。

    

15分の休憩後は、アントン・ブルックナー(1824-1896)の交響曲第5番変ロ長調。ブルックナー人生で最も生活が困窮した時期に書かれた作品。そう思って聞くと第2楽章は諦めの思いが詰まったような哀愁を帯びた音楽に聴こえます。

この作品は1878年に書き上げられたものの、その後15年もの長きにわたって陽の目を見ることもなく、ようやく初演されたのは1894年になってから。弟子のフランツ・シャルクによる改訂版によるもので、これが初版となりました。

現在通常に演奏される作曲者オリジナル版は、まず1935年のハース版が出版され、さらに1951年のノヴァーク版が出版されました。この二つのバージョンには大きな違いはありません。今回はハース版での演奏でした。

下野さんは指揮棒を持って指揮。2管編成ですが、弦楽器は16型?14型?弦楽器の人数が多かったように思います。ブラスをガンガン鳴らすには、それなりの弦楽器が必要ということか。

第1楽章冒頭からゆったりとしたテンポで開始。その分金管のファンファーレは荘厳な雰囲気を醸し出す。テンポ設定も分かりやすくメリハリがあり、聞き手を飽きさせないのはさすが。第2楽章の哀愁を帯びたフレーズもなかなかだし、対照的に第3楽章スケルツォでは節度を保った野性的な舞踏音楽のようで興味深かった。第4楽章は、コーダの分厚いサウンドに向かって全てのエネルギーを注ぎ込んでいたようで、感動的なフィナーレになったと思います。

    

去年11月の第4番「ロマンティック」も素晴らしく、読響は絶好調なんでしょうか。2月公演の「エレクトラ」中止は残念。代演の井上さんのショスタコーヴィチ行きたいなぁ。別のコンサートに行くので聞けなくて残念。コロナ、早くどこかに行ってしまえ。