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高浜原発 再稼働認めず 即時差し止め、初の仮処分 福井地裁

2015-04-21 02:16:55 | 記事

高浜再稼働認めず 即時差し止め、初の仮処分 福井地裁「新基準、合理性欠く」

2015年4月15日05時00分

 

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町) の再稼働をめぐり、福井地裁の樋口英明裁判長は14日、住民らの訴えを認め、運転を禁じる仮処分決定を出した。原発再稼働の可否を決める新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と指摘し、新基準を満たしても安全性は確保されないと判断。政府の原発政策に根本から見直しを迫る内容となった。

 原発の運転をただちに差し止める司法判断は初めて。仮処分決定はすぐに法的な拘束力を持つため、今後の司法手続きで覆らない限り、再稼働はできな い。関電は福井地裁に異議を申し立てる方針だが、審理は上級審に及んで長引くとみられ、目標とする11月の再稼働は見通せなくなった。再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に法的な影響は与えない。

 仮処分を申し立てたのは福井、京都、大阪、兵庫4府県の住民9人。高浜原発から約50~100キロ離れた地点に住んでいる。

 樋口裁判長は決定理由でまず、各電力会社が原発の耐震設計で想定する最大の揺れ(基準地震動)を超す地震に2005年以降だけで福島第一など4原発が5回襲われていることを挙げ、想定そのものが信頼性を失っていると述べた。

 さらに高浜原発では、基準地震動を下回る地震でも外部電源が断たれて給水が止まり、原子炉の冷却機能が失われる可能性がある▽使用済み核燃料プールは原子炉のように堅固な施設に囲われていない――などと指摘。「現実的で切迫した危険」があると認定した。

 そのうえで、高浜原発の脆弱(ぜいじゃく)さは、基準地震動の大幅な引き上げとそれに応じた耐震工事の実施▽原子炉冷却にかかわるシステムや、使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性を最高レベルに強化――などの条件を満たさない限り解消されないとした。

 高浜原発は今年2月に再稼働に向けた規制委の主な審査に通ったが、樋口裁判長は新規制基準がこうした抜本的な対策を求めていないと判断。新基準は「緩やかにすぎ、安全性は確保されない」と結論づけ、住民らの人格権が侵害される危険性があると認めた。

 樋口裁判長は昨年5月、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転をめぐる訴訟で差し止めを命じる判決を言い渡した。だが、関電が控訴して判決は確定せず、規制委の審査が終わって知事の同意などがあれば再稼働できる状態にある。

 このため住民らは昨年12月、より法的な即効力がある仮処分の手続きをとり、大飯、高浜両原発の再稼働差し止めを求めて訴えた。樋口裁判長は、審査が先行する高浜原発についてまず判断する考えを表明。3月に審理を打ち切っていた。

 (室矢英樹、太田航)

 ■「承服できない」

 関西電力は「当社の主張を理解いただけず、誠に遺憾で、到底承服できるものではない」とのコメントを発表した。

     ◇

 菅義偉官房長官は14日午後の会見で、再稼働について「独立した原子力規制委員会が十分に時間をかけて、世界で最も厳しいと言われる新基準に適合するか判断をしたものだ」とし、「粛々と進めていきたいという考え方だ」と述べた。

 ■<視点>規制と司法、異なる立場

 原子力規制委員会の規制基準は、放射性物質が放出されるような事故の発生を前提にしている。一方、福井地裁による仮処分の決定は、そうした考えは許されないという全く違う立場に基づく結果だ。

 決定では、地震時の揺れや津波の想定、設備の安全対策など多くの点について、原子力規制委員会の基準とは異なり、想定を超える地震が繰り返し原発を襲った事実などを元にした市民目線が貫かれている。原発に対する不安や疑問が背景にある。

 一方で、決定について関電は異議申し立てなどをする方針で、今後覆される可能性もある。司法判断として定着するかどうかは見通せない。その間にも再稼働に向けた審査は進む。決定が変わればふたたび再稼働は現実のものになる。

 国や電力業界は今回の決定がほかの原発の再稼働に影響しないとみている。現在、国は2030年の電源構成について検討を進めているが、市民からの幅広い意見をくみ上げて議論を広げる取り組みは乏しい。

 今回の決定を国や電力業界が「特異的な判断」とみなすだけでは、「3・11」の事故からの教訓を生かしていないことになる。

 (編集委員・服部尚

 ◆キーワード

 <新規制基準と基準地震動> 東京電力福島第一原発事故の反省から、原子力規制委員会がつくった安全対策の基準。新たに炉心溶融のような重大事故を想定した対策を義務づけ、地震や津波の想定の仕方も厳しくした。このうち基準地震動は、耐震設計の基礎になる。周辺の活断層のデータや過去に各地で観測された地震の記録などをもとに、最大級の揺れを計算し、原発ごとに設定する。



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