*** june typhoon tokyo ***

BONNIE PINK@渋谷公会堂


 祝デビュー20年、結婚、そして次なる明日へ。

 BONNIE PINKが初のアルバム『Blue JAM』をリリースしたのが1995年9月21日。そのデビューから20年を記念するライヴ〈BONNIE PINK 20th Anniversary Live“Glorious Kitchen”〉がデビューした日と同じ日に東京・渋谷公会堂で開催された。初期からの古参や近年ファンになった人まで、老若男女幅広い層の観客が所狭しと渋谷公会堂の座席を埋め、BONNIE PINKの“二十歳”を祝う音の宴に酔いしれた。

 BONNIE PINKを知ったのは初期の頃(本人いわく“赤毛時代”)だが、ライヴに行き始めたのは2002、3年頃からだったか。まだ「A Perfect Sky」が大ヒットする前だったので、ヒット後のライヴ動員が急激に増加したのを覚えている。これまでの観賞記録は次のとおり。

 2005/10/24 BONNIE PINK@東京厚生年金会館
 2006/09/28 BONNIE PINK@東京厚生年金会館
 2006/10/05 BONNIE PINK@渋谷公会堂
 2007/10/26 BONNIE PINK@日本武道館
 2008/09/26 BONNIE PINK@NHKホール
 2009/07/31 BONNIE PINK@赤坂BLITZ
 2011/11/27 BONNIE PINK@日本橋三井ホール
 2012/10/08 BONNIE PINK@日本橋三井ホール
(2013〈“BONNIE PINK Coin Toss Tour”「HEADS」&「TAILS」〉は不参加)
 2014/11/01 BONNIE PINK@Zepp DiverCity Tokyo
 2014/12/16 BONNIE PINK@O-EAST



 ステージに白幕が張られ、幕の中央には“20th Anniversary”のエンブレムが映されている。開演時刻の18時を5分ほど過ぎた頃にノイズ音とともにそのエンブレムの真ん中にある“20”の数字だけが浮かび上がり、“19、18、17……”とカウントダウン。“0”と同時に幕が下ろされると、瞬時に伸びやかな声で「So Wonderful」が始まった。
 イントロダクションや凝ったオープニング・アレンジなどはなく、すぐにいつも通りの演奏でスタートしたのは、これまで支えてきてくれたファンに多くの曲を届けたいという思いがあったのだろうか。二十歳の祝いだからこそ自然体のステージでという思いもあったかもしれない。そして、「So Wonderful」からの幕開け。“なんて素晴らしいんだろう”というタイトルどおり、この記念すべき日のライヴの冒頭としてはこれ以上ない選曲だった。

 左奥にキーボードの奥野真哉、中央やや右奥にドラムの白根賢一、左前方にギターの八橋義幸、右前方にベースでバンマスの鈴木正人が陣取る。気心知れたメンバーに囲まれ、ピンクのドレスで着飾ったBONNIE PINKが躍動。「なにかどこかにピンク色のものを着けてきて」とのBONNIE PINKの願いに、八橋はピンクのネクタイ、奥野はキーボードにバラの花を飾るなどしたが、白根は髪をピンクに染めてくるという予想以上の演出で、この“バースデイパーティ”を賑やかなものにしていた。

 20年間、さまざまな曲を生み出してきた彼女だが、セットリストは比較的全時代万遍なく、テンポやノリの良い楽曲を中心にセレクト。いつもは終盤やアンコールなどで歌われる「Tonight, the Night」「Heaven's Kitchen」なども出し惜しみすることなく披露するほか、デビュー初期の“赤毛時代”を中心としたメドレーを組み込むなど、節目を祝うにふさわしい構成。さらには、「Forget Me Not」の中盤からステージ・インしたtofubeatsがその流れからDJセットを展開。「実はワーナーに入る前から水面下で作っていた」というBONNIE PINK楽曲によるマッシュアップ・ミックスで彼女の楽曲の新たな聴き方を提示すると、DJセットの間に着替えを終えたBONNIE PINKが再登場して、tofubeatsと二人でコラボレーション曲「衣替え」を。続いて、そのままDJセットで始まり、曲中にバンドメンバーが戻ってきて演奏に加わった「Thinking Of You」と、普段では見られないスタイルでステージを彩っていった。

 終盤は代表曲「A Perfect Sky」で観客とのコール&レスポンスを楽しむと、「Anything For You」を経て、「両親に捧げます」と一言つけての「Surprise!」。1996年の2ndシングルで、ライヴでもなかなか目にかかれないレア曲で本編を終えた。

 ただ、本当の“サプライズ”はこの後にやってきた。アンコール1曲目の「Don't Cry For Me Anymore」を終えた後、「40を過ぎて、まだ経験していないこともあるからそれに向かって頑張ろうと思うのだけれど、一つ叶ったことがあります」とのくだりから、「実は(4月に)結婚しました」との報告。これには会場も騒然。「結婚しても、ラヴ・ソングも、失恋の曲も片想いの曲だって書く。私、ストーリーテラーだから」「結婚しても変わらずにBONNIE PINKの曲を作っていくので、応援してくれますか? 女子は大丈夫か……だ、男子はー?」などと茶目っ気たっぷりに話す彼女だったが、そこにはアンコール後に自身を待ちわびていた多くの観客たちを、結婚報告に祝福の声と拍手で包まれた風景を見て、喜びと安堵、そして充実を感じていたに違いない。

 その後、新曲となる「Spin Big」を。スウェーデンのプロデューサー・チーム、Burning Chickenがプロデュースしたこの曲は、“人生、大きな回転をさせていけば、きっと乗り越えられる”というBONNIE PINKらしい表現で綴った、明日への活力を得られるようなナンバーで、彼女のこれからの音楽人生へ向けての心意気をも感じさせる。
 ラストは「鐘を鳴らして」。当初はこの曲の詞のように、これまでの自分の見つめ直しながら、紆余曲折あったけれど、この道を歩いて無事に“二十歳”を迎えられたことをアニヴァーサリー・ライヴという鐘を鳴らして君(=ファン)に知らせようという意味だったかもしれないが、突然の結婚報告によって、自身の幸せの鐘を鳴らすという、嬉しいダブルミーニングにもなった。

 今年にリリースするつもりだったアルバムはどうやら来年まで持ち越しとなりそうだが、ライヴは毎年やっていくとのこと。11月からの全国ツアーで、再び充実期に入りそうな彼女の未来予想図がじんわりと見えてくるかもしれない。
 楽しませること、伝えること、感じてもらうこと、そして自らも楽しむこと。時には苦悩と不安にさいなまれながらも、大地に足をしっかりとつけて立つことが意識出来た二十歳のBONNIE PINK。歌唱力や表現力、そしてバンドメンバーほか盟友たちと刺激し合うことで生まれる質の高い音楽やパフォーマンス。“二十歳の大人”となってこれから美しく熟していくだろうことを、会場の多くの観客が実感したに違いない。
 
 いつかポキっと折れてしまいそうな陰りをこれまではどこかで感じていたが、その心配はもうしなくてもよさそうだ。しなやかさを手に入れた彼女の次なる高みにますます期待したいと思えた記念日の夜となった。



◇◇◇
 
<SET LIST>
01 So Wonderful
02 Bad Bad Boy
03 Gimme A Beat
04 カイト
05 Wildflower
06 5 more minutes
07 Tonight, the Night
08 ~MEDLEY~
 かなわないこと
 It's gonna rain!
 Silence
 犬と月
09 金魚
10 Heaven's Kitchen
11 Forget Me Not
12 ~tofubeats' DJ Section~
 BONNIE PINK song's mush up
13 衣替え(feat. tofubeats)
14 Thinking Of You(feat. tofubeats with BAND)
15 You Got Me Good
16 A Perfect Sky
17 Anything For You
18 Surprise!
≪ENCORE≫
19 Don't Cry For Me Anymore
20 Spin Big(New Song)
21 鐘を鳴らして

≪MEMBER≫
BONNIE PINK(vo,g)

鈴木正人(b/Band Master)
奥野真哉(key)
八橋義幸(g)
白根賢一(ds)

tofubeats(Guest DJ)



◇◇◇









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