大人のシンガーへの飛躍を誓った、23歳の決意。
2017年12月の六本木VARIT.でのリリース・パーティ(その時の記事→脇田もなり@六本木VARIT.)から、“上昇して進んでいきたい”という彼女の意欲とバンド・スタイルで臨むという表明を兼ねて、“Up and Coming”を冠して活動中の脇田もなり。年が明けて、彼女の誕生日である1月28日に、23歳の誕生日記念ライヴ〈Up and Coming 脇田もなりBirthday Live〉が開催された。会場は下北沢BASEMENTBarで、最大250名収容のフロアに彼女と彼女の音楽を愛するファンが多く詰めかけた。
開演時間が近づくと、フロアDJのyukaが“誕生日”に因んだ楽曲や脇田もなりが好きなYUKIの「JOY」をセレクトするなど、セレブレーションなムードを高めていく。定刻を約5分ほど過ぎたところで“Up and Coming”なるバンド・メンバーが登場。それに続いて、左肩に白い羽をデコレートしたイメージカラーとも言える赤のワンピース姿の脇田もなりがステージイン。フロアもこの日は“生誕祭”と自覚しての心持ちだけに、曲が流れるまでもなく、微笑みがあちらこちらで咲くようなアットホームな空気で包まれていた。
ラップ導入曲ながらもどこか心地良い浮遊感が漂う「ディッピン」からバースデーライヴはスタート。続く「IRONY」で既にオーディエンスのヴォルテージもグイグイと上昇し続け、これまで多くのステージで掛け合ってきたコール&レスポンスが響く。場数を踏んできた経験からくる自信もついてきたのか、オーディエンスが盛大にレスポンスをしても、「まだまだ」「まあ、それくらいにしておこう」などとフロアを煽る術も手馴れてきている様子。もちろん、この日に集ったのは脇田もなりのコアとなるファンが大部分を占めるだろうから、ホームのような安心感も得ていたようだ。
ジョージ・マイケル「フェイス」マナーの“もなりとSHAKE BODY”する「泣き虫レボリューション」では、自ら誕生日をエンジョイするような弾けんばかりの笑顔でシャウト。彼女が笑い叫べば、オーディエンスもそれに破顔一笑で応える。そうかと思えば、イックバル産のグルーヴィ・ポップ「Cloudless Night」では、胸の内なる襞を騒がせるような艶やかな表情と声色で魅了。これまでに取り組んできた表現のヴァリエーションの幅を披露しながら、歌手としての成長を伝えたいのではないかと感じさせるパフォーマンスを序盤から繰り出していく。
表現の幅という意味では、次に披露した山下達郎の「Love Space」のカヴァーはその挑戦の一環か。正直なところ(原曲と比べるとというのではなく、自分の歌として引き込めてないという意味で)まだ粗さが目立ったカヴァーではあったが、ソロ歌手としてデビュー1年が経過し、さらに上を目指したいという気持ちがこの楽曲を歌おうと決心させたのだろう。その心意気は充分に感じ取ることが出来た。
「EST! EST!! EST!!!」を挟み、「今日はバースデーライヴだから落ち着いた曲も」の前フリから「祈りの言葉」「あのね、、、」を。ミディアム・スローやバラードなどは情感を深く伝えやすい一方、ピッチが不安定だとそのブレがより目立ってしまうが、これらの曲は歌いこなしてきているだけあってその心配もなし。そればかりか、メロディに表情の陰影を加えるなど、彼女独自の感情の発露を歌唱において見出そうとする気概も。これらはMCで度々述べていた「大人の歌手として成長したい」「もっと大きなところでライヴをやりたい」という向上心がそうさせているようだ。個人的には、成長ももちろん大切だが、あまり先ばかりを意識し過ぎて、今ある土台が浮ついてしまわないか、前のめりし過ぎて空回りしないかという思いもある。
確かに、club asiaでの初ソロ・ワンマンではフロアに入り切れない集客であったことを考えると、それからの初の“生誕祭”であればもう少し規模の大きい会場を設定してもいいようなものだが、実際には即ソールドアウトとはならなかったようだから、彼女自身に“もっと自分の名や楽曲を知らしめなければ”という思いも強かったのかもしれない。
初めてバンドを擁しての披露となった「TAKE IT LUCKY!!!!」では「上手く歌えたかな?」とはにかむ一方、「夜明けのVIEW」では大人の面持ちを再び。楽曲のテンポと同様に、楽曲の世界観に添って見せる顔立ちやヴォーカルワークが異なるなど、歌への強い思い入れに彼女のソロ歌手としての努力と成長が窺える。
「LED」以降はヴォルテージのギアもトップへと入り、デビュー曲「IN THE CITY」、今日の衣装を象徴するかのようなタイトルの「赤いスカート」、フロアとのコール&レスポンスが恒例となっているPWLマナーの「Boy Friend」と畳み掛け、“Up and Coming”バンドとの呼吸も良好。溢れる笑顔の要因の一つは、録音とは異なるアレンジのバンド・サウンドでの歌唱にも手応えを感じていたからではないだろうか。
アンコール後にはサプライズで花と「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」の合唱のプレゼント。目頭を熱くして感極まったからか、「I'm with you」では歌詞が飛んだりもしたが、そこは誕生日ということもあり、ご愛敬。ハウス・ダンサーにおいてもブリッジで声色に変化をつけるなど、ここでも歌手としての矜持を示していた。ラストはフロア全体に“パッパラッパパーラ”の合唱がこだまし、脇田もなりのホイッスルも飛び出した「WINGSCAPE」で幕。“My Way 自由の翼はばたかせ 今の私を強く信じて”という詞は、この日彼女が宣言した“大人の歌手へ成長する”という想いを奇しくも具象化していたのは偶然か。ソロ歌手1年という助走を終え、大空という次なる高みへの“テイクオフ”が近づいていると信じて、今後もその動向を注視していきたい。
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<SET LIST>
01 ディッピン
02 IRONY
03 泣き虫レボリューション
04 Cloudless Night
05 Love Space(Original by Tatsuro Yamashita)
06 EST! EST!! EST!!!
07 祈りの言葉
08 あのね、、、
09 TAKE IT LUCKY!!!!
10 夜明けのVIEW
11 LED
12 IN THE CITY
13 赤いスカート
14 Boy Friend
≪ENCORE≫
15 I'm with you
16 WINGSCAPE
<MEMBER>
脇田もなり(vo)
しまだん(Healthy Dynamite Club)(g)
越智俊介(Shunské G & The Peas / CICADA)(b)
KAYO-CHAAAN(Healthy Dynemite Club)(key)
山下賢(Mop of Head / Alaska Jam)(ds)
OPENING & CLOSING DJ:
yuka(DJ)
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【脇田もなりに関する記事】
・2016/09/23 星野みちるの黄昏流星群Vol.5@代官山UNIT
・2017/06/20 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
・2017/07/28 脇田もなり@タワーレコード錦糸町【インストア】
・2017/09/08 脇田もなり@clubasia
・2017/11/25 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
・2017/12/15 脇田もなり@六本木VARIT.
・2018/01/28 脇田もなり@下北沢BASEMENTBAR(本記事)
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