1927年創部の古豪・東京ガスが、都市対抗初優勝。
2019年、2020年と都市対抗本大会出場を逃してきたが、3年ぶりに東京都第1代表として出場を決めた東京ガス、Hondaグループ間での選手・指導者が刺激を深めながら、6年連続で都市対抗へ出場しているHonda熊本。東京ガスはミキハウスを2対1の接戦で勝ち抜けると、2回戦の三菱重工Westには5対1、準々決勝のENEOSには4対3、準決勝のNTT東日本には9対3と、接戦を挟みながら調子を上げて決勝まで辿り着く。一方、Honda熊本は、1回戦でJR東日本に3対2と逆転勝ちすると、2回戦の伯和ビクトリーズに7対6、準々決勝の東邦ガスには2対1、準決勝のセガサミーには9回裏のサヨナラ弾で2対1の劇的な幕切れとすべて1点差で勝ち上がり、粘り強さを発揮。
決勝戦も序盤こそ東京ガスの打撃が火を噴き、5回を終わって5対0とリードしていたが、Honda熊本は6回に中島、8回に和田のソロ本塁打で流れを次第に引き寄せると、9回二死1・2塁から丸山がレフトスタンドへ3ランホームランを放って1点差に。さらに和田、山本卓の連打で1・2塁と逆転のランナーを出し、異様な雰囲気が東京ドームを包み込んだが、最後は東京ガスの左腕・宮谷が中島を三振に仕留めて6対5でゲームセット。東京ガスが1927年創部以来初となる悲願の黒獅子旗を手にした。
東京ガスは東京都第1代表として出場する印象がないのだが、今年は小野田、地引、加藤の早稲田大学出身勢のクリンナップや石川、笹川ら厚みのある打撃陣が好調。一気に畳み込んでビッグイニングを作る集中打が奏功した。投手陣は石川(ロッテ)や山岡(オリックス)のようなドラフトの目玉まではいないものの、安定感のある臼井をはじめ、高橋や宮谷、明治安田生命からの補強の三宮の左腕勢が粘り強く凌いだ印象だ。連覇達成には投手力のさらなる強化が必要だろう。
この第92回大会は、Honda熊本もそうだが、推薦枠のHondaを破って準々決勝まで進出したJR東日本東北など勢いをつけたチームが上位に進出。戦前に上位進出が予想された強豪が敗れることも少なくなかったが、試合の展開の綾というところも。8強に進出したのは、JR東日本東北、JFE東日本、東京ガス、NTT東日本、セガサミー、ENEOS、東邦ガス、Honda熊本と東日本勢6チーム、西日本勢2チームと東日本勢が優勢に。ただ、勝敗が紙一重だった部分も大きく、一概に東高西低とまではいえないだろう。
それでも東京勢4チームのうちJR東日本を除く3チームが4強入り。東京勢の決勝戦も期待されたが、4強の4分の3を東京勢が占めるなか、Honda熊本が劇的な試合で勝ち上がり、決勝でも好ゲームを展開したことは今大会を最後にさらに盛り上げた要因の一つといっていい。
そのほかトピックスとしては、初出場となる北海道ガスをはじめ大手ガス5社(北海道ガス、東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガス)が初めて都市対抗に揃い踏み。ガス会社のなかのガス会社の頂点“ガス・オブ・ガス”に、東京ガスが初優勝という最高の形で輝くこととなった。
ドラフト指名組では、オリックス6位指名の横山楓(セガサミー)、広島5位指名の松本竜也(東邦ガス=Honda鈴鹿からの補強)、日本ハム9位指名の上川畑大悟(NTT東日本)が8強へ進出した。来季のプロ野球での社会人野球出身選手の活躍に期待したい。
【2021年ドラフト指名 都市対抗野球大会出場選手】
日本ハム 9位 上川畑大悟 内野手(NTT東日本)
広島 2位 森翔平 投手(三菱重工West)
広島 3位 中村健人 外野手(トヨタ自動車)
広島 5位 松本竜也 投手(Honda鈴鹿)
広島 6位 末包昇大 外野手(大阪ガス)
ソフトバンク 4位 野村勇 内野手(NTT西日本)
巨人 2位 山田龍聖 投手(JR東日本)
阪神 6位 豊田寛 外野手(日立製作所)
ロッテ 3位 廣畑敦也 投手(三菱自動車倉敷オーシャンズ)
ロッテ 5位 八木彬 投手(三菱重工West)
ヤクルト 3位 柴田大地 投手(日本通運)
オリックス 6位 横山楓 投手(セガサミー)
オリックス 7位 小木田敦也 投手(TDK)
この2年、秋冬季に開催された都市対抗野球大会だが、来季は通例の夏季の開催が決定。今年は観客の声出しは禁止ながら、応援団が復活して、都市対抗の雰囲気が戻ってきた。来夏には本当の意味での通例の都市対抗に戻れることを祈りながら、東京ドームに馳せ参じたいと思う。
◇◇◇
◇◇◇
【第92回都市対抗野球大会 出場チーム】
◇推 薦 狭山市 Honda(5年連続35回目)
◇北海道
札幌市 北海道ガス(初出場)
◇東 北
仙台市 JR東日本東北(2年ぶり27回目)
にかほ市 TDK(2年連続16回目)
◇北信越
高岡市 伏木海陸運送(2年連続6回目)
◇北関東
日立市 日立製作所(3年連続39回目)
小山市 エイジェック(初出場)
◇南関東
さいたま市 日本通運(7年連続46回目)
君津市 日本製鉄かずさマジック(3年ぶり13回目)
千葉市 JFE東日本(3年連続25回目)
◇東 京
東京都 東京ガス(3年ぶり22回目)
東京都 NTT東日本(6年連続45回目)
東京都 セガサミー(2年連続12回目)
東京都 JR東日本(12年連続24回目)
◇西関東
横浜市 三菱重工East(2年ぶり12回目)
横浜市 ENEOS(2年連続51回目)
◇東 海
浜松市 ヤマハ(3年連続42回目)
名古屋市 東邦ガス(5年連続15回目)
豊田市 トヨタ自動車(7年連続23回目)
大垣市 西濃運輸(3年ぶり38回目)
名古屋市 JR東海(2年ぶり30回目)
東海市 日本製鉄東海REX(4年ぶり14回目)
◇近 畿
大阪市 大阪ガス(4年連続27回目)
八尾市 ミキハウス(16年ぶり2回目)
神戸市・高砂市 三菱重工West(2年ぶり37回目)
門真市 パナソニック(6年連続55回目)
大阪市 NTT西日本(7年連続32回目)
◇中 国
東広島市 伯和ビクトリーズ(3年ぶり10回目)
倉敷市 三菱自動車倉敷オーシャンズ(2年連続9回目)
◇四 国
高知市 四国銀行(2年連続20回目)
◇九 州
大津町 ホンダ熊本(6年連続15回目)
福岡市 西部ガス(2年連続6回目)
◇◇◇
【第92回都市対抗野球大会 日程・結果】
◇11/28(日)
《1回戦》
Honda(狭山市)3-5 JR東日本東北(仙台市)
エイジェック(小山市)1-2 NTT西日本(大阪市)
西濃運輸(大垣市)3-5 日本製鉄かずさマジック(君津市)
◇11/29(月)
北海道ガス(札幌市)1-10 セガサミー(東京都)
Honda熊本(大津町)3-2 JR東日本(東京都)
伯和ビクトリーズ(東広島市)6-0 四国銀行(高知市)
◇11/30(火)
三菱重工East(横浜市)1-2 東邦ガス(名古屋市)
ヤマハ(浜松市)0-4 日立製作所(日立市)
ENEOS(横浜市)2-0 JR東海(名古屋市)
◇12/1(水)
日本通運(さいたま市)3-1 パナソニック(門真市)
東京ガス(東京都)3-2 ミキハウス(八尾市)
三菱自動車倉敷オーシャンズ(倉敷市)1-2 三菱重工West(神戸市・高砂市)
◇12/2(木)
JFE東日本(千葉市)7-4 日本製鉄東海REX(東海市)※延長10回
伏木海陸運送(高岡市)0-4 大阪ガス(大阪市)
NTT東日本(東京都)4-1 トヨタ自動車(豊田市)
◇12/3(金)
TDK(にかほ市)5-4 西部ガス(福岡市)
《2回戦》
JR東日本東北(仙台市)7-6 NTT西日本(大阪市)
日本製鉄かずさマジック(君津市)0-8 セガサミー(東京都)
◇12/4(土)
Honda熊本(大津町)7-6 伯和ビクトリーズ(東広島市)
東邦ガス(名古屋市)2-1 日立製作所(日立市)※延長10回
ENEOS(横浜市)3-1 日本通運(さいたま市)
◇12/5(日)
東京ガス(東京都)5-1 三菱重工West(神戸市・高砂市)
JFE東日本(千葉市)1-0 大阪ガス(大阪市)
NTT東日本(東京都)3-1 TDK(にかほ市)
◇12/6(月)
《準々決勝》
JR東日本東北(仙台市)2-7 セガサミー(東京都)
Honda熊本(大津町)2-1 東邦ガス(名古屋市)
◇12/7(火)
ENEOS(横浜市)3-4 東京ガス(東京都)
JFE東日本(千葉市)5-7 NTT東日本(東京都)※延長11回
◇12/8(水)
《準決勝》
セガサミー(東京都)1-2 Honda熊本(大津町)
東京ガス(東京都)9-3 NTT東日本(東京都)
◇12/9(木)
《決勝》
Honda熊本(大津町)5-6 東京ガス(東京都)
◇◇◇
【第92回都市対抗野球大会 表彰選手・チーム】
◇橋戸賞
臼井浩 投手(東京ガス)
◇久慈賞
片山雄貴 投手(Honda熊本)
◇小野賞
仙台市・JR東日本東北
◇首位打者賞
笹川晃平 外野手(東京ガス)
◇打撃賞
中川智裕 内野手(セガサミー)
◇若獅子賞
古寺宏輝 内野手(Honda熊本)
多田裕作 投手(NTT東日本)
瀧澤虎太朗 外野手(ENEOS)
◇特別賞
阿部博光 投手(日立製作所/SUBARU)
◇10年連続出場選手
田中健 内野手(日本製鉄かずさマジック)
嘉数駿 内野手(JR東日本)
佐竹功年 投手(トヨタ自動車)
那賀裕司 外野手(三菱重工West)
◇大会優秀選手(37名)
《投手》
臼井浩(東京ガス)
三宮舜(東京ガス/明治安田生命から補強)
片山雄貴(Honda熊本)
福田大輔(Honda熊本)
小孫竜二(NTT東日本/鷺宮製作所から補強)
多田裕作(NTT東日本)
草海光貴(セガサミー)
加藤三範(ENEOS)
辻本宙夢(東邦ガス)
松本竜也(東邦ガス/Honda鈴鹿から補強)
林桂大(JFE東日本)
《捕手》
馬場龍星(東京ガス)
竹葉章人(Honda熊本)
須田凌平(セガサミー)
《一塁手》
地引雄貴(東京ガス)
古寺宏輝(Honda熊本)
根岸晃太郎(セガサミー)
《二塁手》
相馬優人(東京ガス)
比嘉龍寿(東邦ガス)
《三塁手》
石川裕也(東京ガス)
吉田潤(ENEOS/東芝から補強)
平山快(JFE東日本)
《遊撃手》
稲垣翔太(Honda熊本)
上川畑大悟(NTT東日本)
中川智裕(セガサミー)
《外野手》
小野田俊介(東京ガス)
楠研次郎(東京ガス)
笹川晃平(東京ガス)
山本卓弥(Honda熊本)
長澤壮徒(NTT東日本)
向山基生(NTT東日本)
森龍馬(セガサミー/明治安田生命から補強)
瀧澤虎太朗(ENEOS)
鈴木聖歩(JR東日本東北)
《指名打者》
加藤雅樹(東京ガス)
喜納淳弥(NTT東日本)
石井信次郎(JR東日本東北/七十七銀行から補強)
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