
毎年恒例、その年のお気に入り作品を独断と偏見でランキング形式で決める〈マイ・フェイヴァリッツ・アウォード〉の2018年度篇。2018年はCD購入頻度が激減しましたが、それ以上に1作品をじっくりと聴き込む時間も失われつつあるように感じました。以前のように流行を片っ端から追うという作業は厳しくなり、自然と辿り着いて見つけたものを聴いていくというスタンスに変わったようです。そのため、この1年の曲を探りたいという意識も薄くなり、年代に関わらず吸収しやすいものを聴くことが多かったように思います。
とはいえ、古きものばかり耳を傾ける性分でもないので、そのなかでも2018年に耳に残った作品の中からフェイヴァリット作品をピックアップしてみました。ただし、チェック漏れは多分にあると思われるので、その点はご勘弁を。
それでは、2018年の本アウォードのノミネート30作品を紹介します。
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01 Amerie / After 4AM
02 Andy Allo / This Christmas EP
03 Brandon Coleman / Resistance
04 Ella Mai / Ella Mai
05 Flamingosis / Flight Fantastic
06 Hallca / Aperitif e.p
07 H.E.R. / I Used To Know Her : The Prelude EP
08 Jamilah Barry / Salix Babylonica
09 Janelle Monae / Dirty Computer
10 Jorja Smith / Lost & Found
11 Mariah Carey / Caution
12 Marcha Ambrosius / Nyla
13 Masego / Lady Lady
14 McCallaman / It Takes Two
15 Nakala / Girl
16 Nao / Saturn
17 Nile Rodgers & Chic / It's About Time
18 Noname / ROOM 25
19 Prep / Cold Fire
20 Raheem DeVaughn / Decade Of A Love King
21 Reel People / Retroflection
22 Solomons Garden / How Did We Get Here?
23 Summer Walker / Last Day Of Summer
24 Sunni Colon / Satin Psicodelic
25 The Carters / Everything Is Love
26 The Internet / Hive Mind
27 Victoria Monet / Life After Love Part2
28 Ye Ali / Ye Ali & Chill
29 Young Gun Silver Fox / Am Waves
30 Zilo / The Nature Of The Beast
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今年はあまり“吟味”する時間がなかったこともあり、作品の内容はもちろん考慮してますが、それよりも耳にした頻度が高かった作品をチョイスすることに重点に置いた結果、順位はともかく上位4位までは意外とすんなり選べました。ただ、5位が大混戦で、非常にセレクトを悩ませました。EPとフル・アルバムを単純比較するのも難しいし、それぞれ気になるポイントが一長一短あったりと……まあこういう企画立ててる時点で悩むのは当然の成り行きなんですが(苦笑)。
露出度高めのEP 2枚でどこか吹っ切れたようなエイメリー、ハイレヴェルで安定した物語を創作してきたジャネル・モネイ、大復活の貫禄のマライア・キャリー、ライヴも良かった80年代志向のシティポップバンドのプレップ、長年“キング”の肩書を背にラヴメッセージを伝えてきたラヒーム・デヴォーン……等々、挙げればキリがナッシングで、タイミングが違えばランキング入りしていたかもしれません。
ということで、2018年のマイ・フェイヴァリッツ・アルバムを発表したいと思います。
5位から1位へカウントダウンしていきます。

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【MY FAVORITES ALBUM AWARD 2018】
【第5位】

サマー・ウォーカー『ラスト・デイ・オブ・サマー』
(Summer Walker / Last Day Of Summer)
1984年に米・テキサス州ボーモントで生まれ、高校卒業後にアトランタを拠点に活動するシンガー・ソングライター。ネオソウル~トラップ系のサウンドなのでやや新鮮さに欠くかもしれないが、自己の世界観はしっかりと漂わせている。佇まいはSZAやH.E.R.あたりに近いか。“ネクスト・エラ・メイ”みたいな期待のされかたもしている模様。
【第4位】

エラ・メイ『エラ・メイ』
(Ella Mai / Ella Mai)
2018年に日本でも話題となった女性シンガーは、前半はジョルジャ・スミスが、後半はこのエラ・メイが話題をさらっていった感。登場当初は“エラ・マイ”なのか“エラ・メイ”なのか表記が錯綜していたことも。容貌はリーラ・ジェイムス風(アフロだけか…苦笑)だが、英・ロンドン出身。1994年生まれ。『Xファクター』にグループで出演するもブレイクせず、その後ソロで活動し、全米でDJマスタードが手掛けた「ブード・アップ」などが注目されて大ヒット。一気に2018年の顔になった。
【第3位】

ネイオ『サターン』
(Nao / Saturn)
当アウォードでは2016年はブルーノ・マーズに1位を譲ったものの、デビュー・アルバム『フォー・オール・ウィ・ノウ』が2位にランクインした英・ノッティンガム出身のシンガー・ソングライター、ネイオの2作目。先日の初来日公演も盛況だったが、本作でもファンク、ソウル、ジャズ、エレクトロニカからアフロビートらしきものまでを融合したネオ・ソウル/オルタナティヴR&Bマナーが全開。キュートなハイトーン・ヴォイスとハスキーな低音を素早くスイッチさせる技術も魅力。
【第2位】

ジ・インターネット『ハイヴ・マインド』
(The Internet / Hive Mind)
アーバン・コンテンポラリーなネオソウル路線のトップランナーともいえる地位を確立したジ・インターネットの4作目。取り立てて新たな刺激を導入したということでもないが、紅一点のシド・ザ・キッドをはじめそれぞれがソロでの経験値など個の力をプラスして、創り出す世界観のスケールが大きくなった。この路線は雨後の筍のようにフォロワーが生まれているが、一つ二つ頭が抜けている感も。
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第5位から第2位までを見ていただきましたが、女性ヴォーカルが多いのはやはり自分の嗜好ですね(笑)。同系統のサウンドが多いのは、今年の試聴傾向の幅が狭かったこともあるかもしれません。
さて、1位発表の前に、期待の若手“ブライテストホープ”をいくつか挙げておきたいと思います。
【ブライテストホープ賞】
□ RIRI『RIRI』
(Riri / Riri)

16歳よりロサンゼルスで制作をスタートさせた18歳。2018年2月に本作でメジャー・デビュー。日本だとデビュー時はR&Bを謳っているのに、いつも間にかオーセンティックなポップやエレクトロ方面へ転化して尻つぼみ……みたいな傾向がずっと続いているので、ぜひその悪い流れを打ち破ってもらいたい。やや90年代R&Bに寄せ過ぎなところもあるが、それくらいでちょうどいいのかも。
□ eill『MAKUAKE』
(Eill / Makuake)

東京出身でK-POPの質感とジャズバーでの歌唱経験もあるセンス、ハスキーでヒップホップ的トラックとの相性の良さが魅力のシンガー・ソングライター、eill(エイル)のミニ・アルバム。デビュー曲「MAKUAKE」、LUCKY TAPESの高橋海制作の「HUSH」、キラーチューン「FUTURE WAVE」とポップネスも携えており、幅広い層に受け入れられそうな素地は持っているはず。
□ FAREWELL, MY L.u.v「gloomy girl mic check ver.」
(FAREWELL, MY L.u.v / gloomy girl mic check ver.)

名古屋出身のダンス&ヴォーカル・ユニット、FAREWELL, MY L.u.v(フェアウェル・マイ・ラヴ)。いわゆるアイドル・グループとして活動しているが、US風に言えばキッズ・グループ(バブルガムソウル的な立ち位置)としての可能性もなきにしもあらず。まだ歌唱力を含め全体的に粗削りな部分は否めないが、SPEED的な親しみやすさも持ち合わせながら、ファンキーなグルーヴを奏でるという意味でその成長に期待。
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やっぱりブライテストホープ賞でも女性ヴォーカルだらけでした(笑)。SuchmosやWONK路線のSIRUPなどのグループも良かったんですけれどね。
というエクスキューズをサラッと混ぜ込ませておいて(苦笑)、と。それでは2018年の〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アウォード〉、最優秀アルバムの発表に移りたいと思います。

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【第1位・最優秀作品】

ナイル・ロジャース&シック『イッツ・アバウト・タイム』
(Nile Rodgers & Chic / It's About Time)
ブルーノ・マーズの席巻で、一端落ち着きを見せたかと思ったファンキー路線だが、やはりパーティ・ピープルの熱は冷めていなかったというか、再びファンキー・グルーヴを呼び起こさせた感じ。「ゲット・ラッキー」で一世を風靡したナイル・ロジャースが“ナイル・ロジャース&シック”名義で実に25年ぶりに投下したオリジナル新作は、潮流などどこ吹く風のナイル・ロジャース印全開のディスコ・グルーヴで圧倒。この路線が好きなフリークは見落とせない作品なのだから、仕方ない(笑)。ネイオやアンダーソン・パーク、ムラ・マサらが制作にあたり、クレイグ・デイヴィッドらが参加するっていう個人的な好物が集った作品なら、1位はこれしかないというところか。
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いかがだったでしょうか。
2019年もみなさんがグッド・ミュージックに出逢えることを祈って。
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【MY FAVORITES ALBUM AWARD 歴代受賞作】
■ 2005年
ERIC BENET『HURRICANE』
■ 2006年
NATE JAMES『SET THE TONE』
■ 2007年
洋楽部門:LEDISI『LOST & FOUND』
邦楽部門:AI『DON'T STOP A.I.』
新人賞 :CHRISETTE MICHELE『I AM』
功労賞 :ICE
■ 2008年
洋楽部門:Raheem DeVaughn『Love Behind The Melody』
邦楽部門:有坂美香『アクアンタム』
新人賞 :Estelle『Shine』
■ 2009年
洋楽部門:CHOKLATE『To Whom It May Concern』
邦楽部門:該当作品なし
新人賞 :RYAN LESLIE『Ryan Leslie』
■ 2010年
洋楽部門:ERIC BENET『lost in time』
邦楽部門:久保田利伸『TIMELESS FLY』
新人賞 :JANELLE MONAE『THE ARCHANDROID』
特別賞 :『SR2 サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム オリジナルサウンドトラック』
■ 2011年
洋楽部門:KELLY PRICE『KELLY』
邦楽部門:MISIA『SOUL QUEST』<“77 Minutes Of MISIA”Mixed By MURO>
■ 2012年
洋楽部門:SY SMITH『Fast And Curious』
邦楽部門:AISHA『I,Shout!!!』
■ 2013年
最優秀作:Joe『Doubleback:Evolution Of R&B』
特別賞 :Maxine Ashley『MOOD SWINGs』(配信作品)
■ 2014年
最優秀作:Jesse Boykins III『Love Apparatus』
新人賞 :Tinashe『Aquarius』
■ 2015年
最優秀作:Dornik『Dornik』
■ 2016年
最優秀作:Bruno Mars『24K Magic』
■ 2017年
最優秀作:FKJ『French Kiwi Juice』
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