*** june typhoon tokyo ***

横浜FC vs FC東京【J1リーグ】


 課題は山積みだが、力蔵東京としての初陣を飾る。

 Jリーグの2025シーズン、FC東京はアウェイにて横浜FCとの対戦で開幕。横浜FCは、2022年から指揮している四方田修平監督が4年目。2022年にJ2で2位、翌年はJ1昇格も18位で降格、2024年にJ2で2位となり再びJ1へ昇格してきた。G大阪から鈴木武蔵、札幌から駒井、町田から鈴木準弥、鳥栖から山崎などを補強し、残留を目指す。
 一方、FC東京は新たに昨季新潟を指揮した松橋力蔵が監督に就任。鳥栖からマルセロ・ヒアンを獲得したほか、橋本拳人が復帰、独から佐藤恵允が加わるなど、他クラブと比べると目立ってはいないが、現戦力を着実に底上げする補強をした。

 トレーニングマッチなどの情報がクローズされ、両者どのようなシステムやスタイルで試合に臨むかが予想しづらいなか、蓋を開けてみれば、両クラブとも3-4-2-1というミラーゲームに。シーズン初戦という堅さや緊張も窺えるシチュエーションではあるが、横浜FCはゴール前の工夫と決定力、FC東京は攻撃全般において、それぞれ課題が浮き彫りとなった一戦となった。

 前半は横浜FCが良いリズムで優勢に。1トップの櫻川ソロモンの高さを活かしながら、ジョアン・パウロと鈴木武蔵が絡んでゴールに迫る形を作るほか、左から福森、右から鈴木準弥がサイドチェンジやセットプレーで揺さぶっていく。前半からゴール前でチャンスを演出したが、FC東京のディフェンス陣に跳ね返される。

 FC東京は、特に攻撃で課題を露呈。ボールを持ち運ぼうとするもなかなか縦パスを送ることが出来ず。前日の“金J”での大阪ダービーは下馬評を覆してC大阪が勝利したが、特にC大阪のDF畠中の鋭い縦パスが効いていた。そこからワンタッチでG大阪のプレスを掻い潜り、ゴールへ迫るシーンを何度も作っていたが、FC東京はそういった形がほぼ見られず。ワンタッチ/ダイレクトパスがなく、相手のプレスに対してゴールに背を向けた後ろ向きのベクトルで構えることが少なくないから、どうしても外へ外へと各駅停車のパスが多くなり、推進力を欠いてしまう。

 それならばとGKから1トップのマルセロ・ヒアンへ向かってロングボールを送り込むのだが、そのボールの精度もいいとは言えず、またマルセロ・ヒアンが競り合いで上回ることも少ないため、チャンスを創出するに至らない。ボランチの高、小泉からの供給も乏しいため、仲川や俵積田が中盤まで下りてボールに関与しようとするが、そうすると、どうしてもマルセロ・ヒアンとの距離が遠くなり、セカンドボールが拾えず。昨季のディエゴ・オリヴェイラの周囲に人が足りずに攻撃が停滞してしまうという形に似た状況となり、連動性や躍動感が生まれなかった。

 後半になると、序盤は横浜FCの攻勢が続いたが、FC東京が次第に立ち位置を変えて動きをもたらしていくと、ようやく素早いボール回しが出始める。ただ、ボールは動かせるものの、アタッキングサード以降への侵入は増えず。横浜FCがジョアン・パウロの突破や鈴木準弥のロングスローなどを機にFC東京陣内へ進出し、優位に試合を展開。そのような状況のなか、60分に右サイドを白井が駆け上がり、深い位置でスローインを得る。白井のスローインから仲川、小泉、高と繋いで、高がダイレクトで斜めにグラウンダーのパスを送ると、俵積田がフリック、そこへ白井が駆け込み左脚を振ると、美しいカーヴを描いたシュートがゴールネット左へ吸い込まれて、FC東京が先制(俵積田から白井へボールが繋がった場面は、おそらく俵積田自身が相手DFをかわしてシュートを狙ったフリックが大きくなって、上手い具合に白井の前へボールが渡ったのだと思う)。それまでは良い攻撃の形を作れていなかったFC東京だが、このシーンではダイレクトを含む素早いパス回しで、相手を綺麗に崩すことが出来た。

 マルセロ・ヒアンが足を痛めて山下を投入したFC東京だが、どちらかといえば、横浜FCが優勢の流れ。森重のハードワークなどで横浜FCの攻撃を摘むも、横浜FCは山根を新保に、ジョアン・パウロを新井に変えたのを機に活性化。対するFC東京は白井を安斎、仲川を小柏、俵積田を佐藤恵允にチェンジして盛り返しを図るも、横浜FCは伊藤翔、ユーリ・ララをつぎ込み、FC東京ゴール前で絶好機を幾度も作る。横浜FCへ流れが傾いていたが、GK野澤大志ブランドンを中心に粘り強く対応し、ゴールは割らせず。オープンな展開となり、双方にチャンスが行き来するなかで、最後は守備で奮闘していた森重をエンリケ・トレヴィザンにスイッチして、試合をクローズ。厳しい試合となったが、アウェイでの開幕戦でしっかりと勝ち点3を勝ち取ったことは評価できよう。

 しかしながら、課題は山積みだ。得点をした場面以外は、FC東京としてのサッカーを見せることはあまり出来ず、1トップの周りに人が足らずにセカンドボールを奪えないという悪循環は解消されないまま。プレスへの回避も思うようにいかず、ロングボールでの空中戦も競り勝てたとは言えず、バランスとしてもまだ途上といったところだ。
 一方、横浜FCは櫻川のキープや推進力からチャンスを創出。特に終盤は途中から入った新保や 新井がペナルティエリア手前付近で仕掛け、福森の精度の高いクロスから絶好機を演出。ただ、最後の決定力が足りなかった。シュート数は横浜FCの14本に対し、FC東京は7本。枠内シュートは横浜FCが5本だったのに対し、FC東京は僅かに1本だったが、一つ“決め切る”という部分では、J1昇格組より一日の長があったということか。

 また、接触/コンタクトについては、かなりタイトな当たりでもファールを取らない傾向がみてとれた。この試合でも倒された後、動きが一瞬止まるシーンが散見されたが、笛が吹かれるまではファールを期待せず、プレーを続ける必要がある。あるいは、接触でボールを奪われるリスクを減らすため、相手のプレスの前に素早くボールを動かし続け、相手を“動かす”という対応でリスクを回避するよう、意識を高めることか。

 結果的には勝ち点3を奪えたFC東京だが、次節のホーム開幕戦は、昨季ダブルを喰らった町田を迎えることになる。今日の内容だけをみると、1トップよりも2トップの方が前線に連係が生まれやすくなるのかとも思うが、まだ1試合。3バックのシステムが今季の基盤になるとも限らないが、どのようなシステムにせよ、粘り強さを発揮しながら、少しずつ課題を克服し、精度を高めていくことが必須となる。まずは、昨季あまり勝てなかったホーム味スタで凱歌「眠らない街」を響かせるべく、課題を整理し、練習にて連係を密にする作業を重ねることだ。

◇◇◇

明治安田J1リーグ 第1節
2025年2月15日(土)14:03KO
ニッパツ三ツ沢球技場
入場者数: 12,195人
天候:晴 / 気温:14.9℃ / 湿度:26%
主審:上村篤史
副審:道山悟至、唐紙学志
第4の審判員:中川愛斗
VAR:長峯滉希
AVAR:森川浩次

横浜FC 0(0-0 / 0-1)1 FC東京

【得点】
(横):
(東): 白井康介(61分)

〈試合経過〉
40分  警告 横浜 市川暉記
61分  得点 東京 白井康介
67分  交代 東京 マルセロ・ヒアン → 山下敬大
69分  交代 横浜 山根永遠 → 新保海鈴 / ジョアン・パウロ → 新井瑞希
75分  交代 東京 白井康介 → 安斎颯馬 / 仲川輝人 → 小柏 剛 / 俵積田晃太 → 佐藤恵允
79分  交代 横浜 鈴木武蔵 → 伊藤 翔 / 小倉陽太 → ユーリ・ララ
87分  交代 横浜 駒井善成 → ミシェル・リマ
90+2分 交代 東京 森重真人 → エンリケ・トレヴィザン

◇◇◇

【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 03 森重真人
DF 05 長友佑都
DF 30 岡 哲平
DF 32 土肥幹太
MF 08 高 宇洋
MF 33 俵積田晃太
MF 37 小泉 慶
MF 99 白井康介
FW 19 マルセロ・ヒアン
FW 39 仲川輝人

〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
MF 27 常盤亨太
MF 07 安斎颯馬
FW 11 小柏 剛
FW 14 山下敬大
FW 16 佐藤恵允
FW 28 野澤零温
FW 98 エヴェルトン・ガウディーノ

〈監督〉
松橋力蔵



◇◇◇

【FC東京 2025シーズン 試合日程】
◇2025明治安田J1リーグ
第01節 02月15日(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FC(A・ニッパツ

第02節 02月22日(土)15:00 FC東京 ✕ 町 田(H・味スタ
第03節 02月26日(水)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(H・味スタ
第04節 03月01日(土)14:00 FC東京 ✕ 鹿 島(A・カシマ
第05節 03月08日(土)16:00 FC東京 ✕ 湘 南(H・味スタ) 
第06節 03月15日(土)14:00 FC東京 ✕ 福 岡(A・ベススタ
第07節 03月29日(土)17:00 FC東京 ✕ 川 崎(H・味スタ
第08節 04月02日(水)19:00 FC東京 ✕ 東京V(A・味スタ
第09節 04月06日(日)13:00 FC東京 ✕ 岡 山(A・JFEス
第10節 04月11日(金)19:00 FC東京 ✕  柏 (H・国 立
第11節 04月20日(日)15:00 FC東京 ✕ C大阪(A・ヨドコウ
第12節 04月25日(金)19:30 FC東京 ✕ G大阪(H・国 立
第13節 04月29日(火)13:05 FC東京 ✕ 清 水(H・味スタ
第14節 05月03日(土)14:00 FC東京 ✕ 新 潟(A・デンカS
第15節 05月06日(火)14:00 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)※1 
第16節 05月10日(土)15:00 FC東京 ✕ 神 戸(H・味スタ
第17節 05月17日(土)16:00 FC東京 ✕ 浦 和(A・埼 玉
第18節 05月25日(日)15:00 FC東京 ✕ 広 島(H・国 立
第19節 05月31日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都(A・サンガS
第20節 06月14日(土)19:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ
第21節 06月22日(日)18:30 FC東京 ✕ G大阪(A・パナスタ
第22節 06月28日(土)19:00 FC東京 ✕ 横浜FC(H・味スタ
第23節 07月05日(土)19:00 FC東京 ✕  柏 (A・三協F柏
第24節 07月19日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(H・味スタ
第25節 08月10日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島(H・味スタ
第26節 08月16日(土)19:00 FC東京 ✕ 湘 南(A・レモンS
第27節 08月24日(日)19:00 FC東京 ✕ 京 都(H・味スタ
第28節 08月31日(日)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(A・豊田ス
第29節 09月13日(土)・14日(日)・15日(月)00:00 FC東京 ✕ 東京V(H・味スタ
第30節 09月20日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎(A・U等々力
第31節 09月23日(火)00:00 FC東京 ✕ 福 岡(H・味スタ
第32節 09月27日(土)・28日(日)00:00 FC東京 ✕ 横浜FM(H・味スタ
第33節 10月04日(土)・05日(日)00:00 FC東京 ✕ 清 水(A・アイスタ
第34節 10月18日(土)・19日(日)00:00 FC東京 ✕ 広 島(A・Eピース
第35節 10月25日(土)・26日(日)00:00 FC東京 ✕ 岡 山(H・味スタ
第36節 11月09日(日)00:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立
第37節 11月30日(日)00:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ
第38節 12月06日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟(H・味スタ

※1 横浜FMが「AFCチャンピオンズリーグエリート 2024/25」準々決勝以降進出の際、6月25日(水)19:30に開催

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