先日の記事「近況注意報 0114 音楽篇」で“昔、良く歌わされた楽曲シリーズ”としてちょっとばかり紹介したなかで、久しぶりに米倉利紀を聴いたことに感化されて、彼のミニ・アルバム『gift』(2001年11月リリース)を買ったんですよ。
どうしてこの作品を買ったのかというと、久保田利伸カヴァー集だからです。米倉がリスペクトする久保田にスポットを当て、久保田のカヴァーを5曲、米倉・作詞&久保田・作曲の楽曲を1曲収録しています。
ブックレットの裏表紙には久保田利伸も絶賛のコメントを載せていますが、曲のセレクトといい、アレンジの良さといい、R&B/ソウルを愛しているシンガーが歌うとこうなるんだよなあという作風になっています。
≪米倉利紀/gift≫
01 sole soul
02 Indigo Waltz
03 Love under the moon
04 Missing
05 雨音
06 What's The Wonder?
久保田利伸のカヴァーというと「LA・LA・LA LOVE SONG」や「Missing」などが他のアーティストにカヴァーされることが多いのですが、「Love under the moon」「What's The Wonder?」あたりを選曲するというのは、相当“解かってないと出来ない”芸当だと思うんですよ。キャッチーな路線じゃないですし。
本作『gift』でも「Missing」が収められていますが、これは本人というよりレコード会社側の意向が強かったのではないかと推測。「久保田利伸をあまり知らない人たちにも解かる曲を1曲は入れてくれ」というね。もちろん、米倉本人が歌いたい曲でもあるとは思うけれど。
「What's The Wonder?」なんてオリジナルより漆黒が濃密だし、久保田とはまた違う米倉の甘くセクシーなヴォーカルによって一層ミッドナイトに絶妙なメイクラヴァーへと落とし込んでいます。
それと、米倉・久保田の共作となった「sole soul」なんて、ディアンジェロやマックスウェルあたりを意識したネオ・ソウル作になっていて、もう“黒いのが好き”という感情がプンプンと伝わってくるんですよ。
この「sole soul」と「What's The Wonder?」「雨音」はフラニ・ハート(Fulani Hart)という2000年あたりで新鋭の、アレステッド・ディヴェロップメント作品に参加したり、2010年にアルバム『EXIT E』をリリースしたニューヨークのインディ女性R&B/ソウル・シンガー、エスナヴィ(Esnavi)の2005年の初のフル・アルバム『Uncommon Ground』をプロデュースした人なんですが、そのプロデュースが絶品なんですね。
一方、「Indigo Waltz」「Love under the moon」「Missing」の3曲は、これまでも米倉作品をサポートしていた“プリンス・チャールズ”アレクサンダー(“Prince Charles”Alexander)が手掛けていて、こちらも“黒”が浸透したシャレたアレンジが奏功。6曲で約33分の作品ですが、カヴァー・アルバムとしてはもちろん、R&B/ソウル作としても質の高いものとなっています。
こういう色合いのシンガーが一線に根付かないのが日本の音楽シーンの特色といってしまえばそれまでなんですが(R&Bなど黒が強めの楽曲で登場してきても、キャッチーが求められてポップやら近年ではクラブ・ダンス系へ重心を寄せてしまうことが多い)、こうやってしっかりと自身の音楽的ルーツに基づいた活動をしているアーティストをサポートしていく土壌がより広がっていくといいのになあと感じました。
ちょっとヘヴィローテーション(AKBのアレではない)になりそうな予感デス。
こちらはオリジナルの「What's The Wonder?」。
以上です、キャップ。