goo blog サービス終了のお知らせ 

*** june typhoon tokyo ***

加納エミリ @西永福JAM


 歌い踊る愉しさを享受しながら繰り広げた、快活なバンド・スタイルでのステージ。

 西海岸やソフトロック周辺の音を鳴らすロック・バンド“ペンクラ”ことThe Pen Friend Clubが主宰する加納エミリとのツーマン企画〈The Pen Friend Club presents 『Add Some Music To Your Day』〉が、ウィークエンドの午前中から東京・西永福JAMにて開催。当初は2020年4月に加納、The Pen Friend Clubを含む3マン公演が予定されていたが、コロナ禍もあって延期。それから1年を経て、ようやくリヴェンジ公演に漕ぎつけた形だ。午後からルヴァンカップのFC東京対湘南戦を観戦するため、残念ながらThe Pen Friend Clubのステージを泣く泣く後にしたものの、久しぶりに加納エミリのバンド・ステージを堪能した。
 開場時間の10時45分直前に到着すると、店舗前には既に行列が出来るという盛況ぶり。チケットはソールドアウトで、ツイキャスによる生配信も行なわれた。

 加納エミリのライヴは、2月に行なわれた渋谷WWWでの単独公演〈Emiri Kanou Birthday Party in 渋谷WWW〉以来となる(記事→「加納エミリ @渋谷WWW」)。同公演と同様にEMIRIバンドを従えてのバンド・スタイルで、同公演でラストとなった渡瀬賢吾に代わって、カンバス小川タカシがギターで参加。それ以外は、ベースにainKnot(アインノット)のKAZUYA、ドラムにManaka、シンセにKANNAと引き続き同じメンバーという布陣だ。

 渋谷WWWのワンマンライヴで、今後は演者からクリエイターへ重心を寄せる主旨の発言をしていたが、やはりバンドをバックにして歌うことには胸躍るのだろう。デビュー初期のようなコミカルさを強く感じるダンスではないものの、ナチュラルにユニークなフリを披露しながら、軽快に歌を紡いでいく。

 さて、彼女のライヴを全て観賞している訳ではないので、全くなかったかどうかは分からないが、加納エミリを知らしめた代表曲「ごめんね」を冒頭で披露したというのは、なかなかのトピックではないか。これまでは多くが本編ラストやアンコールにて披露されてきた印象が濃いだけに、自身の代名詞的な楽曲を前半に、しかも冒頭から繰り出していくというのは、単独公演ならまだしも(対バン相手のファンに知ってもらう、印象付けるという意味で)対バン公演では意表を突いた感もある。

 しかしながら、個人的には良い構成だと感じている。というのも、いつまでも固定された代表曲に頼りっきりというスタンスはマンネリを産み兼ねないし、彼女が持つフレキシブルな音楽性を多様なアプローチで味わえる機会を乏しくしてしまうからだ。もちろん「ごめんね」に触れ、当初の“NEO・エレポップ・ガール”のキャッチフレーズやニューウェイヴ・アイドルというスタイルに興味をそそられたファンも多いが、良い意味でファンの予想・予測を裏切り続けるのも醍醐味だろうし、長くアーティスト活動を継続する要素の一つでもあると思う(もちろん変化することでファンが離れ、活動が減退することもあるから難しい)。ただ、当の本人はそんな些細なことに囚われることなどなく、感性のままに従って曲を構成しているのかもしれないが。


 2019年よりソロ・ユニットとなったカンバスの小川タカシが加わったEMIRIバンドは、急造ではないこと以上に、メンバー同士の相性の良さが窺える。小川はユニットのほか、辻林美穂、星野みちる、天野なつ、ayUtokiOらの作品参加やサポートなどを行なってきた腕利きゆえ安定感があるが、何よりヴォーカルやその他の音を“汚さない”ギターを奏でるのがいい。寄り添うとはまた少し異なった、派手さはなくとも余韻を残す粋な音を鳴らしてくれる。
 また、個人的に以前のバンドの音から変化したと思えるのが、シンセのアレンジメントだ。面白いのは、加納本人はニューウェイヴに拘らない志向性を見せ始めているのに、KANNAはなかなかウネウネとしたカラフルなニューウェイヴ/ディスコポップなシンセを鳴らすところか。チープな音感も醸し出しながら“スカスカ”にはならない塩梅も妙。

 久しぶりのライヴだからか、「フライデーナイト」では大胆に歌い間違えりする“ご愛敬”も飛び出したものの(本人も演奏後「すごい間違っちゃった」と臆面もなく呟くところが加納エミリらしい)、終始力みのないパフォーマンスでポップネスを体感させ、ラストは以前のテイストとはやや異なる「朝になれ」でステージを“ペンクラ”へ受け渡し。ノスタルジーが覆うなかで光が差し込むような希望も感じさせる、どちらかというとUK色がチラつくメランコリックなギターポップ「朝になれ」は、小川のしっとりと泣くギターソロや過不足ないKAZUYAのボトムとManakaのドラミングも奏功し、週末の朝から昼へと移り変わるブランチタイムに相応しいパフォーマンスとなった。

 制作に重心に移している加納だが、8月14日(土)には装置メガネ主宰ライヴ〈サマーナーバス 2021〉への出演が決定しており、そこでも復帰後の“ニュー・エミリー”の成長が楽しめそうだ。また、6月末にリリースとなる、インドネシアのシティポップ・バンドのIKKUBARU(イックバル)の1stアルバム『Amusement Park』(レヴューはこちら→「ikkubaru『Amusement Park』」)とミニ・アルバム『Brighter』にレア音源等を収録した2枚組『AMUSEMENT PARK EXPANDED EDITION』に加納が「City Hunter」REMIXで参加しているとのこと。こちらも期待したい。


◇◇◇

<SET LIST>
01 ごめんね
02 Just A Feeling
03 Because Of You
04 Lucky
05 ハートブレイク
06 恋せよ乙女
07 フライデーナイト
08 朝になれ

<MEMBER>
加納エミリ(vo)

Emiri band are:
小川タカシ(g/カンバス)
KAZUYA(b/ainKnot)
Manaka(田辺真成香/ds)
KANNA(植村カンナ/syn)

◇◇◇






◇◇◇

【加納エミリに関連する記事】
・2018/11/21 それぞれのレトロ@下北沢BAR?CCO
・2019/01/24 Mia Nascimento@下北沢BAR?CCO
・2019/02/13 加納エミリ@新宿Motion
・2019/03/01 LOOKS GOOD! SOUNDS GOOD! @北参道ストロボカフェ
・2019/05/24 加納エミリ @北参道ストロボカフェ
・2019/12/14 加納エミリ @青山 月見ル君想フ
・2020/03/12 彼女のサーブ&レシーブあおぎ Birthday Live@渋谷CIRCUS Tokyo
・2021/02/17 加納エミリ @渋谷WWW
・2021/06/05 加納エミリ @西永福JAM(本記事)

◇◇◇◇◇◇



ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事