*** june typhoon tokyo ***

LAURA IZIBOR@Billboard Live

Laura_izibor

 “シャイン”はローラの輝き。

 ローラ・イジボアのビルボードライブ東京公演、2ndショウを観賞してきた。東京でのラスト公演。
会場はほぼ満員、年齢層は幅があったが、そこそこ高めか。
 デビュー作『LET THE TRUTH BE TOLD』(邦題:素顔のローラ』が4月(日本国内盤は6月)にリリースしたばかりでの来日ということもあり、その1stアルバムの楽曲と新曲数曲がセット・リストの構成だ。

 バンド・メンバーは、左からキーボードのクリス・ロブ、ベースのソロモン・ドーシー、ドラムのジョー・ブラックス、バックヴォーカルのメラニー・チャールズ、トランペットのモーリス・ブラウン。ギターレスの形だが、1人だけでもホーンを連れてくるのは嬉しいところ。
 バンド・メンバーが先に入場した後、赤、橙、朱色あたりの袖なしアウターとジーンズを組み合わせたローラがステージ・イン。笑顔を振りまいてから、「ホワット・ウッド・ユー・ドゥ」をおもむろに歌い始めた。

 曲尺がそれほど長い訳でもなく、曲が終わる度に「アリガト」と丁寧に話すので、シンプルで手際よい進行といった印象だ。日本語は“アリガト”“ダイジョブ”“ハイ”と本人いわく“A Little”覚えたそうで、特に“ハイハイハイハイ”と続けて言うことが多かった。しかもかなりハキハキとした言い方だったので、そのフレーズが気に入ったのかもしれない。

 彼女が話題に上がった時、アレサ・フランクリン、ロバータ・フラックに続くアトランティック・ソウルのニュースターという煽り文句とともに、アリシア・キーズを彷彿とさせるというのがあって、以前、このブログでもアルバムのジャケット写真からもアリシアっぽいなと思ったことがある。確かに、多くの曲をキーボードで弾き語りしている姿からは、アリシアのピアノ弾き語りスタイルを思わせるし、声質もどことなく似ている風のところも感じられる。
 ただ、個人的な印象としては、アリシアが恵まれた家系出身でノーブルで凛としたところやちょっとツンとしたところがある都会的なイメージがあるのに対して、ローラは地方都市出身の品の良く育った天真爛漫なお嬢さんといったところが、異なるところなのかと思った。それは楽曲にもあらわれていて、同じようにソウル・ミュージックから多大な影響を受けていても、その表出の仕方がアリシアは北部というかシャレた風というか洗練された感じの抽出の仕方なのに対し、ローラはゴスペルや南部の薫りが、全面的にではないにせよ、バックボーンとしてあるような感じだった。実際、ローラはダブリンのワーキング・クラスの家に生まれ、余裕のある家ではなかったと言っているから、そういう印象はあながち間違ってないかもしれない。

 特に「Mmm...」を聴いて思ったのだが、音楽に対して真摯にひねくれるところのないローラのステージは、ジョイフルというか非常にハッピーな雰囲気で充ちている。自然と肩の荷がなくなり、心地よい弛緩を施してくれるのだ。微笑ましいヴォーカル・スタイルがそうしているのだが、そこには育ちのよさ(性格という意味において)が強く影響しているのではないかと思った。1曲ずつ曲名やコメントを言ったりする姿を目にして、純朴さというか廃れていない清々しさというものを感じたのだ。

 終盤の1stシングル「シャイン」や2ndシングル「ドント・ステイ」となると、観客の反応もいっそう高くなり、ローラ自身にも気持ちよさが窺えた。メンバー紹介では、ベースのソロモンが誕生日だということで、即興でスティーヴィー・ワンダーの「ハッピー・バースデイ」を歌いながら祝福。スタッフがローソクの火を燈したホール・ケーキを持参すると火を吹き消した後でケーキを横からガブリ。さらにローソクを1本とってドレッドの髪に差すというお茶目な部分を見せてくれた。
 また、最初は黒いサングラスをかけて渋い感じのした(こちらもドレッド風の)トランペットのモーリスがいい味を出していた。中盤からサングラスを外すと(これがまた可愛い目をしていて…笑)、時に演奏しながらステージ中央に出てローラの横でビックリさせてみたり、観客をこれでもかと煽るようなプレイを披露してくれたりと、会場の熱気を高めるのに非常に貢献していた。イントロやローラがステージ・アウト後のアウトロでは、キーボードのクリスも“トーキョー、メイク・サム・ノイズ!”と煽っていた。
 
 ちょっとしたサプライズだったのが、この日の最高潮だったかもしれない「フロム・マイ・ハート・トゥ・ユアーズ」。陽気で明るい快いソウル・ナンバーだが、途中から耳慣れたフレーズへと移行するとメアリー・J.ブライジの「リアル・ラヴ」へ。まさかその曲をやるとは思っていなかったし、観客の反応の良さに気をよくしたのか、「リアル・ラヴ」のコーラス・パートを観客に歌わせるというコール&レスポンスにもチャレンジしたりと(それにしてもみんな“Real Love, I'm searching for the real love……”と歌っていた)ご機嫌だった。

 アンコールは再び「シャイン」を。だが本編とは多少アレンジを代えていたのかも。笑顔で手を突き上げながら観客を見渡す姿が、キュートで微笑ましかった。

 「また、近いうちに日本に戻ってくるからね」と言って、ステージを降りたローラ。新曲も披露してくれて、今後もいっそう期待が持てそうだ。ただ、1stアルバムは曲調としてはそれほどヴァラエティに富んだという感じでもないので、次作の2ndではどのようなアプローチをしていくのかは興味の持ちどころではある。、デビュー作はパーソナルが一番表われる形でリリースしたかったということで、ゲスト・アーティストを迎えず、独自の言葉、楽曲で作られたが、自分の立ち位置がそこそこ重きのあるポジションに置かれるようになった時、客演や新たなジャンルなどへのチャレンジといったなど、音楽的振幅がますます広がる可能性を持っていると思うと、楽しみでならない(しかも、まだ21歳!ときてる)。

 「シャイン」は彼女の苦悩を乗り越えてきて感じた人生訓でもあり、今最高に輝いている彼女を示すのに最も相応しいフレーズ、楽曲ではないか……そう想いながら、彼女の楽曲に力をもらった一夜だった。


◇◇◇

<SET LIST>

00 INTRODUCTION
01 What Would You Do
02 I Don't Want You Back
03 Look At What You Got
04 Gracefully (NEW SONG)
05 Carousel (NEW SONG)
06 Perfect World
07 The Worst Is Over
08 If Tonight Is My Last
09 Shine
10 Don't Stay
11 Can't Be Love
12 Mmm...
13 Introduce to Member~Happy Birthday (Original by Stevie Wonder)
14 From My Heart To Yours~Real Love (Original by Mary J. Blige)~From My Heart To Yours
15 Yes (I'll Be Your Baby)
≪ENCORE≫
16 Shine


<MEMBER>
Laura Izibor(Vocals/Keyboard)
Maurice Brown(Trumpet)
Chris Rob(Keyboards/Background Vocals)
Solomon Dorsey(Bass/Background Vocals)
Joe Blaxx(Drums)
Melanie Charles(Background Vocals)

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事