シャンチー(中国象棋)の日々~三千年の歴史、5億人の愛好者

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視覚障害者と晴眼者の対局に関する試行ルール

2008-02-03 | シャンチーあれこれ
日本シャンチー協会では、視覚障害者と晴眼者が一つのシャンチー盤をはさんでゲームを行う方法を提案しています。

シャンチーはスポーツ競技です。ですから、厳格なルールの下で競技が実施されることが求められています。国内のシャンチーの試合ではアジアシャンチー連合会(AXF)が制定するルールにしたがってゲームが行われます。AXFルールは、

1.相手の着手が自分で目視できること
2.自分の着手をタッチアンドムーブの原則の下に競技用の盤上で行えること
3.チェスクロックが自分で押せること

この3つを前提にして成り立っています。それでは視覚障害者はそのルールでは競技できないではないかと問われれば、現行ルールの下ではそのとおりと言わざるをえないのです。

スポーツのルールというのはもともと理不尽なもので、身体的な故障でそのルールの下で競技できない人は排除されてしまっています。いかなるスポーツも参加者がまったく同じ条件で参加することを前提にしており、一方だけが異なった条件で参加する(介助者や機器の利用)とすれば、厳密な意味では競技スポーツの範疇からは外れるものです。あるスポーツのルールが、身体障害者が参加できないルールだから理不尽だとか障害者差別だとかということができないのは、「全く同じ条件でプレーする」という競技スポーツとしての大前提があるからです。障害者の社会参加とは同一に論じることができない問題である所以です。チェスの国際試合では、視覚障害者と晴眼者の対局に関するルールが制定されているようですが、発展途上にあるシャンチーでは、まだそのような国際ルールは制定されていません。

しかし、日本シャンチー協会では、視覚障害者と晴眼者が一つの盤をはさんで対局することの意義は決して小さくないし、もし世界に先駆けてそうした試みが行われるならば、国際的なシャンチー運動にも寄与することになると考えました。そこで、協会では視覚障害者と晴眼者が、できるだけAXFルールに抵触しない範囲で対局できる方法がないか、ずいぶん知恵をしぼりました。実際に視覚障害者とも話し合いを重ねました。

いちばん簡単なのは双方が棋譜を読み上げる方法ですが、それでは対局会場の静謐な環境の維持や、晴眼者に棋譜の読み上げ、双方のコマを動かす等、過度の負担を強いることになる等の問題があります。できる限りAXFルールに抵触しない範囲で、しかも競技会場の静謐な環境を維持し、晴眼者に過度の負担とならない方法はないか…。

現代はコンピュータの時代です。文字情報を音声で読み上げるソフトも開発されているそうです。これを使わない手はありません。そこで次のような試行ルールが協会から提案されました。

「視覚障害者と晴眼者の対局に関する試行ルール」
(目的)
視覚障害者と晴眼者のシャンチーの対戦の可能性について調査研究することを目的とする。
(実施方法)
1.視覚障害者のサポーターが相手の着手を見てキーボードから入力、それをパソコン画面に表示すると同時に視覚障害者がイヤホンで聴き取り、自分の着手を入力して画面に表示、 それをサポーターが見てコマを動かしてクロックを押す。
2.持ち時間は、コンピュータへの入力時間等を考慮して適宜設定する。
3.必要な機器及びサポーターは視覚障害者が用意する。
4.対戦相手は競技主催者に対してイヤホンから棋譜以外の情報が流れていないことを確認するよう要求することができる。
5.この調査研究は当分の間、「シャンチーレイティングトーナメント」及び「支部公式戦」の会場において実施する。
6.対戦相手は開催ごとに調査研究に協力することに同意する者とする。
7.調査研究期間中の視覚障害者の上記トーナメントへの参加費は無料とする。

この方法ならタッチアンドムーブの原則にも抵触しないし、晴眼者への過度の負担もなく、競技会場の静謐な環境も維持されます。理想的なルールともいえるものです。しかし、経験のないことですから、これで直ちに本格実施可能かどうかは分かりません。試行ルールによる調査研究期間を設けているのはそうした理由からなのです。

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