肺循環
肺循環の起点は右心室から始まる。全身に栄養、ガスを送り届けた静脈血は
上下の大静脈に集められて右心房に貯留される。この貯留された血液は直ち
に右心房から右心室へと移されるが、単純に移動するわけではなく洞房結節
が発した周期的な一定のリズムの興奮伝導によって弁の開閉が律動的に行な
われ、肺循環を開始する。
更に解剖学的解説を加えると、右心室からは1本の肺動脈幹として出動する
が大動脈弓の直下でY字に分岐し1対の肺動脈となり左肺と右肺へと送くる。
※肺での順路※
①右肺動脈は大動脈弓をくぐつて右の肺門に達するが、左肺動脈は左気管支
と共に肺門に達する。左右の肺動脈はそれぞれの肺に達しガス交換を行う。
※※肺動脈幹と大動脈弓の間に動脈管索と呼ばれるヒモがある、この索とな
った遺物は胎児循環の際の胎児への栄養管(血管)の残遺である。
胎児循環での学習 「ボタロー管」
体循環 「大動脈」
体循環は左心室から始まる。肺循環を終えた動脈血は左心房から僧房弁を経
て、左心室に貯留される。
左心室から始まる大動脈は①上行大静脈、②大動脈弓、③下行大動脈で上記
の3動脈のうち③の下行大動脈は胸腔と腹腔の間の横隔膜を貫通する。貫通部
を大動脈裂孔と呼ぶ。
この貫通を境にして貫通以前の胸腔部の動脈を胸大動脈と呼び、横隔膜をを通
過したものを腹大動脈と命名される。
上行大動脈及び大動脈弓
左心室(左心室底)から始まる①上行大動脈は胸骨柄の後方で左後方に(ステッキ型)
の曲線を描きながら下方に下り、椎体の前方にそって第4腰椎の高さまで下行する。
※大動脈弓からは①第1枝の腕頭動脈が分枝し、やや右方向に進んだ地点で頸部に
向かって伸びる枝が②右総頚動脈、おなじ地点から下方に伸びる枝が③右内側内胸
動脈で胸部を養う。④その先で右椎骨動脈と右甲状頸動脈が分枝している。ここで
大きく上腕方向にカーブを描き鎖骨の直下を通過する。従って⑤鎖骨下動脈となつ
て下行し、右腋窩動脈に移行する。(※右上腕動脈以降は別記)
※大動脈弓での分枝は左方向に曲線を描きながら①左総頚動脈が分枝し、続いて②
左鎖骨下動脈が分枝する。
胸大動脈の分枝
胸大動脈からは心臓以外の胸部器官を養う臓側枝と胸壁に栄養を与える壁側枝
として出ているが、左右の肋間動脈は細い血管であるが大動脈から直接枝を分
枝している。この細い動脈は肋骨の下縁に沿うように肋間静脈と肋間神経が分
布している。
※横隔膜を養う壁側枝としては上横隔膜動脈として左右1対で横隔膜上部に分
布する。
※臓側枝としては食道動脈や気管支動脈は対を成さないため胸大動脈の前方か
ら枝を出している。
①気管支動脈は気管支にそって肺に進入し肺の栄養血管となっている。
腹大動脈の学習
腹大動脈はイ、腹部消化器系に分布する臓側枝、ロ、腹壁を栄養する壁側枝。
ハ、泌尿器系、生殖器に分布する臓側枝。
※腹部消化器系を栄養する臓側枝には①腹腔動脈、②上腸間膜動脈、③下
腸間膜動脈、この3本の枝は腹大動脈前面から直接無対で分枝している。
※この腹大動脈は横隔膜貫通後すぐに壁側枝として1対の下横隔膜動脈を
分枝した後に、そのすぐ下で4対の腰動脈を分枝している。
泌尿、生殖器に至る臓側枝
この臓側枝には①腎動脈と②性腺動脈(男性では精巣動脈・女性では卵巣動脈)
が対をなして分枝している。
総腸骨動脈へ
※心臓の※弁膜は心内膜が襞(ひだ)状に伸びて血管の「出入り口をふさぐ」
性状に発達し血液の逆流を防いでいる。※房室弁は心房と心室の間にあっ
て作動し心室と動脈の間にあるのが動脈弁である。
①左の房室弁は2尖弁(僧房弁)て゛※左心房と左心室を隔しているいる。
右の②房室弁は3枚の弁で構成され※右心房と右心室を隔てている。
※房室弁は心室側に弁が垂れ下がっていて弁の先端には※腱索が作動して弁
の開閉を行なう。乳頭筋の収縮は弁の開閉に必須的に関与している。
刺激伝導系
※①肺動脈の基部には肺動脈弁がありガス交換の血液を肺に送る。
②大動脈の基部には大動脈弁が所在し、上行大動脈へと続き全身に血液
を送る。
※心房と心室を隔てる結合組織の線維束で心房と心室を隔離させている。
※房室口と動脈口の間に強力な結合組織が形をつくる部分があり線維三角
と呼称する。
※房室束(特殊心筋線維)の線維三角は心房筋、心室筋との刺激伝導の役目
を主とする。
刺激伝導
心臓がポンプ作業を十分に発揮するには、心房から心室へと順序よく収縮し
血液を動脈に送り出すことが必要である。この収縮の為の①興奮(原動力)を
伝えるのが②刺激伝導系である。
刺激伝導系の経路となるのが通常の神経線維ではなく、「特殊心筋線維」で
あり、興奮伝導が主な作業である。※プルキンエ線維
①特殊心筋線維は他の心筋線維よりも太く、細胞質に富むが筋原線維は少な
く、心筋の収縮を興奮として伝導する性質に富んでいるとされる。
洞房結節
①特殊心筋線維の網状の集合体で、洞房結節は上大静脈の開口部にある。
②拍動のリズムは周期的な興奮(心拍)が拍動性に発生し、心臓の拍動が起点
となる。
③心臓の拍動によるこの「興奮リズム」が心房全体に伝導し心房の収縮を促
進して、つぎの房室結節から房室束をへて心室に伝わる。プルキンエ線維
④洞房結節には頸部交感神経幹(心臓神経)と副交感神経が分布し、歩調とり
を調整する。(ペースメーカー)
房室結節
※右心房の下部心臓壁際にあって特殊心筋線維の塊であり、洞房結節で発生し
た興奮が右心臓壁を伝導して、ここ(房室結節)で中継され、さらに房室束を
経て心室につたわる。(プルキンエ線維)
房室束(ヒス束)
心房と心室を連絡する特殊心筋線維(興奮伝導)の束である。線維三角を貫通し
て心室中隔に達し「右脚」と「左脚」に分枝する。
プルキンエ線維
プルキンエ線維は右脚、左脚を伝導してきた興奮を心筋に与える端末の線維で
広く心筋に分布し、更に乳頭筋や腱索体にも細かく分布している。
また心内膜の下層にも細かく分布し、心筋全体に興奮波動を伝えている。
附記 心筋全体の興奮伝導
※伝導系全体では洞房結節で発生したリズムに反応して律動的に作動が連鎖的
な活動を示すが、この一定のリズム以外に必要としない興奮伝導が生じるがあ
る。これを「期外収縮」と呼ぶ。
※また房室束などが何らかの理由で虚血状態となり、心房と心室との同調収縮
が不能となる。これを房室ブロックと呼ぶ。
心臓の栄養血管
心臓に栄養を送る血管は、体循環と全く関与は無く、主に大静脈の基部から幹
を出す左右の冠状動脈からの分枝によって心臓は栄養の配布をうける。
①右冠状動脈は大動脈基部の前面から出て、右心耳と右心室の間を抜け冠状溝
を右に湾曲し心臓の後面に達する。ここで後室間枝なって心尖に向かう。
②左冠状動脈は大動脈基部の左から幹を出し、肺動脈と左心耳のあいだを抜け
て冠状溝に達し、前室間枝となって心尖に到達する。
※※心臓の静脈
③心臓の静脈にイ、大心臓静脈・ロ、中心臓静脈、ハ、冠状静脈洞がある。
④回旋枝は後室間枝とわずかながら吻合が見られる。
心臓の位置「胸郭内の位置と形状」
1 位置---胸腔内で左右の肺の中間で縦隔の中くらいの位置あって心嚢と
呼ばれる袋状の中の心膜腔に収まる。心嚢を作る膜を「心膜」という。
※※心尖部は左の第5肋間の下と鎖骨中線の交差する点になる。
2 心臓の全体像は円錐を逆さまにした形で上部の大血管の出入り口がある
部分を心底とよぶ。下部は徐除に細くなり、心尖と呼ばれる。
3 心膜
線維性心膜とは縦隔にある臓器間を埋める線維性結合組織の一部が心嚢の
一部を覆ったものである。
※※漿膜性心膜には①壁側板と②臓側板の2種があり、両者の間隙の部位が
心膜腔である。
心臓の壁の構造(縦割りにして観察)
ほぼ縦半分にした心臓を標本にして膜の部分を見ると内側から
①心内膜、② 心筋層が(部厚い) ③心外膜の3部からなる。
①は心臓の内膜を覆っていて単層扁平上皮と併せて薄い結合組織層の膜
によるもので、そのまま出入りする血管の内膜に接続移行する。
②は心筋層そのもので心臓主体の筋板を形成する。※心房では筋層が薄
く、心室の心筋線維は心臓内腔を輪状(ラセン)に走行し構造では横紋
を有し逞しい作りをしている。
③心外膜
心臓の表面をぴったりと、覆う漿膜と、これを補佐するで結合組織から
なり臓側板としての役割を担う。
心房と心室
心臓は上後方部の心房部分と下前方部の心室部分とに大きく分けられる。
心房は静脈血の流入する部分の壁は薄い構造になっている。これは①動
脈血はポンプ圧で血流を加増させるのに比べ静脈弁の僅かな血流圧しか
持ち合わせていない為である。
※※冠状溝---心室と心房の境界※※
※
イ、①静脈の流入する右心系と②動脈血の流入する左心系とに大別し、
更二分別すると2心房(右心房と左心房)と2心室(右心室と左心室)
になる。
ロ、右心房には①上大静脈と②下大静脈か注ぎ、更に③心臓自身の静脈も
開口している。
ハ、右心室からは肺循環の肺動脈が
循環器の学習 「血管系」
「体循環のあらまし」(別名--大循環)
①心臓の拍動によって送り出される血液を動脈血と呼ぶ、色調は鮮紅色を呈しさらに大動
脈を先に進み各器官に至り毛細血管で細胞に物資[酸素と栄養]を届ける。ここまでが動
脈系と呼ばれる。
②栄養分を与え終えた血液は色調は紫色とどす黒さを帯びたものになり、同じく毛細血管
を起点に静脈系(細静脈)へと変わり、心臓に向かって下行、あるいは上行し栄養と酸素
を受けるために上大静脈、下大静脈を経て右心房に注ぐ。①と②の行程を体循環と呼ぶ。
体循環を終了した静脈血は a.肺循環へと進む。(小循環)
※体循環を終えた静脈血は下大静脈と上大静脈の2本に集められ双方とも右心房に流入する。
※帰還した静脈血は直ちに肺循環に入り、①肺動脈を経て肺に至ってガス交換をうけたのち
②肺静脈を経て左心房に送られる。③体循環のため右心室に入る。
※肺動脈には身体中を駆け巡ってきた静脈血が流れ。
※肺静脈にはガス交換を終えた動脈血が流れる。
※左心室は大動脈に血液を循環させる(大循環)させるポンプとして機能を果たす。
血管の成り立ち(構造) 3層で成り立っている。
※動脈の血管
①内層---単層扁平上皮、②中層---輪層の弾性繊維で、③外層は線維性結合組織になっている。
血管は静脈管、動脈管ともに外、中、外の3層構造であるが静脈管は中層の平滑筋と弾性線維
が特徴である。
※静脈の血管の特徴
※静脈の血管は動脈と比較すると---
①中膜が特に薄い形状で、柔軟性に優れているが、血液を流す力主に求心性にに乏しく、また
貯留し易く内膜が襞状になり、その部分に血液が貯留しやすくかつ逆流も起こりやすいが、
この逆流を防止する機能もあることから静脈弁と呼ばれている。
洞様毛細血管とは
※※通常の毛細血管よりも太い形状をしていて径も太、不規則な壁は内皮細胞で透過性に優れ
ていて組織液を補給する。
※毛細血管
毛細血管の壁は①単層扁平上皮の内皮細胞で作られていて、内皮細胞を基底膜が膜状に張り、
弾性線維や平滑筋は決除している。
②毛細血管を流れる血液と周辺の組織の間で内皮細胞を介してガス交換と、栄養の供給を受
け、毛細血管を浸透して組織液となって周辺を栄養する。
※吻合 「血管同士が相互に連絡し合う関係」
吻合は正常な血管が何らかの事由が発生しその先の組織に血流が阻止された事態の際に当該
の部分に他の(同系列同志)血管が血流を確保する状態をいう。
この代償関係を確保したのが側副循環路と呼ぶ。
門脈
①体循環では動脈、毛細血管、
静脈という通常の循環をたどるものと、②毛細血管を出てから再び毛細血管網を形成したのち
(a)静脈に注ぐ流れが存在する。これを門脈と呼ぶ。
※※腎糸球体の循環
腎動脈の循環でイ動脈---毛細血管---静脈①毛細血管---静脈という例外的な循環がある。