日経の「企業不祥事に備える」という連載記事で監査法人を取り上げています。
「東芝の不適切会計問題は、企業の財務諸表にお墨付きを与える監査法人の信頼も揺るがした。会計監査を長年担当する間に企業となれ合い、不正を見抜けなくなっているとの指摘がある。金融庁は一定期間ごとに監査法人を代える交代制の導入も検討している。」
「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言で監査法人のガバナンスコード策定を求めている点にふれています。
「金融庁は3月、有識者で構成する「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言書をまとめ、「不正リスクに着眼した監査の実施」を柱の一つにした。大企業の監査は100人以上を動員するケースも珍しくない。青山学院大学の浜田康特任教授は「会計士個人の力量に加えて、発見した不審点を上司に迅速に報告し、チームで検証する組織力を磨く必要がある」と話す。
提言書が求めるのは監査法人版ガバナンス・コード(統治指針)の策定だ。監査の質を確保する仕組みが十分に機能していないとの判断から、企業統治指針のように、監査法人が守るべき規範を示す必要があるとした。各会計士が不正がないと決めてかからずに業務に当たるような組織運営の工夫が問われる。」
「監査の質を確保する仕組み」「監査法人が守るべき規範」としては、金融庁から10年くらい前に「監査品質管理基準」というのが出ています。協会からもそれに対応する「監査事務所における品質管理」という報告書が出ています。
例えば、人材開発については「監査事務所は、監査実施者の採用、教育・訓練、評価及び選任に関する方針及び手続を定め、監査業務を実施するために必要な能力、経験及び求められる職業倫理を備えた監査実施者を確保しなければならない」と書いてあります(「監査品質管理基準」より)。
これ以上必要ないと思うのですが、金融庁も担当者が変わるたびに何か成果を出さないといけないのでしょう。
監査人の交代制については...。
「欧州が実施を決めた交代制の導入も検討課題とした。一定期間で監査法人を強制的に交代させ、独立性を確保する狙い。しかし監査法人側の反対論は根強い。短期間では対象企業に関する知識や経験を十分に蓄積できず、「大企業では監査法人が交代するたびにコンペとなり、監査報酬が下がる」(大手監査法人)ため、かえって質の低下を招きかねないと主張する。」
監査の質を顧みず、安い値段で契約するだろうというのは、まさに監査法人のガバナンスに問題があるからだといわれてしまうかもしれません。大手監査法人がそういうことをいうのも情けない話です。
もっとも、欧州で監査人の強制的交代制を導入するのは、監査業界が寡占状態で、競争が働いていないということもあるようですから、報酬が下がるのは想定内なのでしょう。
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