米国公認会計士協会から昨年10月に公表されたSSARS21号という新基準の解説。レビュー業務、調製業務、財務諸表作成業務の基準を見直したものですが、特に「調製(compilations)」と「作成」を明確化したようです。
Statement on Standards for Accounting and Review Services (SSARS) No. 21, Statements on Standards for Accounting and Review Services: Clarification and Recodification, is the result of efforts by the AICPA Accounting and Review Services Committee (ARSC) to clarify and revise the standards for reviews, compilations, and engagements to prepare financial statements.
米国基準の話なので、詳しくは読んでいませんが、「調製」と「作成」の同じ点と異なる点をまとめた表が参考になりそうです。
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会計士の報告書がつくかどうかが、最も大きな差異のようです。会計士の報告書がつくのが調製であり、作成では、報告書は添付されませんが、会計士が何らの保証も付与していないという注意喚起の文言を財務諸表の各ページまたはまとめて記載することになっています。
また、調製においては、独立性に関して検討する必要があるのに対して、作成ではその必要はありません。
調製や作成の対象となった財務諸表の外部利用が可能という点や注記の省略が容認されるという点では、どちらも同じです。一般に公正妥当と認められた会計基準以外の財務報告の枠組みに準拠した財務諸表も認められます。
表の項目には入っていませんが、保証をあたえない業務であるといっても、会計基準からの逸脱を故意に見逃してよいということではありません。そのような逸脱に気付いた場合には、財務諸表を訂正するか、会社と協議のうえ、差異を開示することが求められます。
If the accountant becomes aware that the financial statements include a departure or departures from the applicable financial reporting framework, he or she is required to either correct the departure or, after discussions with management, disclose the material misstatement or misstatements in the financial statements. The disclosure of the material misstatement or misstatements may be made on the face of the financial statements or in a note to the financial statements.(注:作成に関する説明です。)
なお、この解説によると、この「作成」の基準は、単なる作成の補助業務や税務目的などのためだけの作成業務には、適用されないようです。「作成」未満の業務もあるということになります。
日本の実務では、「調製」や「作成」に関して特に明確な基準もなく、「作成」はともかく、会計士の報告書を添付するような「調製」業務はあまり行われていないと思われます。また、「レビュー」に関しては、「四半期レビュー」の基準はあるものの、年度の財務諸表を対象としたレビューの指針はまだありません。(その昔、口の悪い会計士は、日本の監査は「レビュー」のレベルだから、「レビュー」の基準がないのだといっていましたが、最近では監査基準も整備されているので、そんなことはないでしょう。)
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