会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

さが美、ソフトバンググループの個人株主はなぜ怒らないのか(DOLより)

さが美、ソフトバンググループの個人株主はなぜ怒らないのか

「昨今個人投資家の利益を損なうような経営の意思決定がなされている例が散見される」として、「さが美ホールディングス」と「ソフトバンクグループ」を取り上げた記事。

後者のソフトバンクグループの例は、ソフトバンクとの「親子上場」やソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の連結を取り上げています。

親子上場について。

「親子上場の場合、大株主である親会社と少数株主の間の利益が相反する恐れが高いことは周知の事実であろう。」

「上場後のソフトバンクの少数株主にしてみれば、親会社との取引よりも有利な取引機会があれば、ソフトバンクの取締役会はそれを選択すべきということになるが、それは可能だろうか。むしろ、親会社を助けるために親会社に有利な取引条件に応諾してしまう恐れはないだろうか。

さらに、SBGはいまだに多額の有利子負債を抱えており、大きな利益を生んでいるソフトバンクからの資金還流に頼らざるを得ないはずだ。しかし、上場後のソフトバンクの少数株主からすれば、携帯事業で生まれた資金を貸付金や配当の形で親会社に吸い上げられることが株主利益にかなっていると言えるだろうか。」

東証は、原則通り、親子上場を認めるべきではないでしょう。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)について。

「さらに悪いことに、SVFには、それよりもさらに深刻な利益相反の可能性がある。このファンドの運営者は実質SBGである。そうすると、SBGは、サウジアラビアなど他の出資者に対して、その利益を極大化するという受託者責任(忠実義務・善管注意義務)を負っている。その一方で、SBGの取締役は、自社の株主に対してその利益を極大化する善管注意義務を負っている。

ある投資案件があった場合、SBG本体で投資するのか、SVFで投資するのかはSBGの裁量に任されているのだが、優良な案件には本体で投資し、不確実な案件にはSVFで投資することにならないのか。」

「また投資案件のEXIT(売却等)は、SBGにとってどんなに不都合であっても、ちゃんと投資家にとって最も有利な先に売却することを許容するのか。ファンドの投資家をないがしろにすれば善管注意義務違反で訴訟の対象となり、自社の株主をないがしろにすれば株主代表訴訟の対象になる。典型的な利益相反構造である。

SVFはSBGによる実質支配なので、今期からSBGに連結するという意思決定自体は妥当なのだが、そうすると、ファンド運営を株主利益のためにしなければならなくなり、投資家の利益には沿わない可能性がある。」

ソフトバンクグループの連結財務諸表について。

「SBGの財務諸表には、SVFの多彩な投資先1社1社の財務内容が連結されることになる。

SBGの財務リスクは、SVFの存在によって、もはや複雑すぎて誰にもわからなくなっているのではないか。2018年3月期のSBGの営業利益は前年比で約2780億円増加した。しかし、その内訳を見ると、SVFの株式評価益が3460億円も計上されている。

 もっとも、これはあくまでも表面上の「評価益」であって、実現益ではない。さらに、SVFは、ファンドである以上、その評価損益は日々変動するものだ。前期には評価益だけを計上しているが、当然損失も発生し得る。仮に10兆7000億円のファンドがすべて投資されたとすると、SVFの損益変動がSBGの財務諸表に与える影響は極めて巨額になる。」

会計的には、実質支配している会社でファンド事業をやっている以上、わけのわからない数字になろうと、連結せざるを得ません。

著しい利益相反のリスクがあるわけですから、本来は、会社分割か何かでソフトバンクグループから完全に切り離すべきなのでしょう。今からでもそうすべきです。

(前半のさが美のケースは、さが美の個人株主というより、さが美の前の親会社(ユニー)の株主が安値の売却を強いられて、損を被ったようにも読めます。)
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