会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

儲けるほど税負担軽く 法人税下げに伴う改革で(産経より)

儲けるほど税負担軽く 法人税下げに伴う改革で

政府が、平成27年度の税制改正で、「外形標準課税」の強化、欠損金の繰越控除見直しなどを検討するという記事。法人税率引き下げの代替財源ということになります。29日の日経1面でも大きく取り上げていたので、そういう方向なのでしょう。

「すでに2つの候補が有力となっている。一つは、決算の赤字を翌年度以降の黒字から差し引く「欠損金の繰り越し控除制度」の改革だ。欠損金の繰り越し控除は現行では最大9年にわたって赤字を繰り越すことができ、大企業では各年度の黒字額の80%までを差し引ける。同制度に伴う法人税の減収分は24年度で2・3兆円。政府内では、限度額を60%や50%に下げるなどして、赤字企業のメリットを小さくする案が検討されている。」

「地方税の法人事業税の一部として導入される外形標準課税の強化も柱となる。政府内では、所得に応じて黒字企業に課税している法人事業税の「所得割」(26年度の税収で2・2兆円)を減税する一方、赤字企業も対象で、従業員の賃金を中心に課税される外形標準課税の中の「付加価値割」(同0・4兆円)を増税する案が有力。黒字だと税負担が減り、赤字だと負担増になるため、収益力強化に向けた改革につながる効果が見込まれるという。」

欠損金の方は、ある年度の中で損金にできる金額がより制限されるということですから、複数年度をならせば、大きな増税ではないのかもしれません(制度変更時にはすぐに利きますが)。しかし、外形標準課税の方は、取られっぱなしなので、影響が大きそうです。

法人税や事業税の所得割のような所得に対する課税は、利益に応じて課税されるため、企業業績の変動を緩和する方に働きますが、外形標準課税だと、固定資産税や法定福利費(社会保険料など)のように利益にかかわらず徴収されるわけですから、それが強化されると、業績変動が激しい企業にとっては、相対的に不利になります。税引前の損益分岐点が高くなるともいえます。

外形標準課税強化という方向は、本当にそれでいいのでしょうか。

産経の記事でもふれていますが、設備投資減税の方は縮小の方向のようです。

経産省、異例の増税要望 法人減税財源確保狙い(朝日)

「経済産業省は、設備投資を増やした企業の税金を減らす設備投資減税の一部廃止を、来年度の税制改正要望に盛り込む方針だ。実現すると約1060億円分の増税となるが、ふだんは減税措置の継続を求める経産省が、自ら増税を要望するのは異例。」

財政学の重鎮は、法人税率引き下げにやや冷淡です。

一橋大学名誉教授・石弘光 法人税率引き下げの課題(sankeibiz)

「・・・議論の過程でいつものように首相周辺や財界筋から「成長すれば税収増が生じるのでこれを財源に充当すればよい」とする上げ潮派の見解も出ている。バブル崩壊後の世界に冠たる日本の財政赤字累増は、まさに恒久的な措置をとらずこの実現も不確実な財源先取り発想によるものであったことを忘れるべきでない。」

「税率引き下げで、狙い通りに国内投資が刺激されるか。企業は300兆円ともいわれる巨額な社内留保を抱え資金的にさしたる問題もない上に、すでに昨秋に即時償却という投資減税が実行されており、当面それで十分であろう。税率引き下げは屋上屋の感がする。更にこの法人税率引き下げが、海外企業の投資誘因となるのかも疑問が多い。政府税調の資料によれば、日本における投資阻害要因(外資系企業の声)の中で「法人税負担」は8番目に過ぎない。「日本市場の特殊性」や「用地の取得・賃金コスト」などの方が、重要であることは明らかである。」

「先般の「日本再興戦略」「骨太の方針」を見る限り、規制緩和を主体とする成長戦略で全体としての即効性が乏しい。この法人税率引き下げのみが市場にアピールする手段である。」
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