会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東電賠償支援機構法が成立、「利害関係者」の協力内容は今後の課題(ブルームバーグより)

東電賠償支援機構法が成立、「利害関係者」の協力内容は今後の課題

東京電力の原子力発電所事故に伴う損害賠償を迅速に行うための原子力損害賠償支援機構法が参議院で可決、成立したという記事。

「同法は、政府と東電以外の原発を持つ電力会社も含めた原子力事業者が出資して支援機構を設立し、東電による被災者への賠償金支払いを支援する内容。6月中旬に閣議決定したが、衆院段階で民主、自民、公明3党の実務者協議で修正され、国の責任を明確化する規定を盛り込むとともに、東電が支援を申し込む場合には「株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない」と明記した。」

この法律については賛否両論あるようですが、ここでは、支援機構からの支援に関する東京電力の会計処理に絞って考えてみます。

原子力損害賠償支援機構法案(PDFファイル)(参議院)

この支援機構は、原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律における賠償措置額を超える賠償責任が生じるもの)が発生した原子力事業者(現時点では東京電力)が損害を賠償するために必要な資金の交付その他の業務を行うとされています(第1条)。

資金の交付その他の具体的な内容は以下のとおりです(第40条・41条)。

1.資金交付(要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金を交付すること)
2.株式の引受け
3.資金の貸付け
4.社債又は主務省令で定める約束手形の取得
5.資金の借入れに係る債務の保証

東京電力はこうした支援の実施を機構に申し込むことができ、機構は運営委員会の議決を経て、支援の内容や金額を決定します。

支援のうち、上記2~5については、実際に株式の引き受けや融資などが行われたときに、通常の増資や借入・社債発行などと同様の処理を行うことになるのでしょう。

1の資金交付については、機構が交付を決定した時点で利益(または賠償費用のマイナス)として処理することになります。決定されるまでは、偶発利益ですから、計上できません。また、交付金額は、要賠償額から賠償措置額を控除した額が限度なので、要賠償額から賠償措置額を控除した額を(実際に支払ったか引当計上して)損失計上していることが前提となります。

一方、支援を受けた東京電力は、他の電力会社と異なり、特別負担金を機構に支払わなければなりません。

「特別負担金額は、認定事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、認定事業者に対し、できるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。」(第50条)

これは、支援を受けたことの見返りとして支払うものですから、資金の交付を利益計上するのと同時に、将来支払う特別負担金を負債として計上する必要があります。もちろんその時点では、確定した金額ではありませんが、「できるだけ高額の負担」と法律に書いてあるわけですから、「事業の円滑な運営の確保に支障」が生じそうになるまでは、交付された金額全額を将来の特別負担金として引当て計上するのが健全な処理だと考えます。

東日本大震災:原賠機構法成立 仮払い対象50万人にも 膨らむ東電負担(毎日)

↓少し前の記事ですが、これによると、東電支援の原案は、金融庁が三井住友銀行に作らせたのだそうです。金融庁は、東電の会計処理・開示に関して、公正な監督ができるのでしょうか。

経産や財務、東電負担上限で攻防 難産の「政府原案」(日経)

東電決算監査は「適正」か?(日経ビジネス)

原子力賠償関連法成立の裏でまたも先送りされた責任問題(ダイヤモンドオンライン)
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