中国での贈賄疑惑に端を発した異例の訴訟
(すでに報じられている内容と重なっている部分もありますが)中国深圳工場を舞台とする不正疑惑に関連して、オリンパス本社法務部に所属する30歳の社員弁護士が会社らに対する損害賠償請求訴訟を起こした件に関する比較的詳しい記事。
問題の不正疑惑は...
「OSZ(オリンパス中国深圳工場)は当時、税務当局の監査で指摘された通関帳簿上の在庫数をめぐる矛盾を理由として、多額の罰金制裁を科せられる可能性があった。そこでOSZは2013年、制裁を回避・軽減するため、安遠控股集団(安遠)なる現地の企業グループに協力を仰いだ。
安遠はいわくつきの会社だ。同社を経営する陳族遠氏は、2007年の雲南省交通庁贈収賄事件をはじめ、昆明市の城市建設投資公司、さらには2014年に発覚した広州市トップの汚職事件でも贈賄側として関与が報じられた。
2011年にOSZと消防局との間でトラブルがあった際、安遠が仲介役となり問題を解決。見返りに安遠は傘下の安平泰を通じ、OSZから食堂運営や清掃、警備業務を次々受託した。
OSZは税関との問題についても、安遠グループに協力を要請。制裁を回避・軽減できた暁には安平泰に報酬を支払い、社員寮2棟も譲渡する内容のコンサルティング契約を結んだ。そして2014年夏、深圳税関は「罰金なし」の判断を下し、OSZは約4億円もの報酬を安平泰に支払った。」
社内調査委員会が発足して、西村あさひ法律事務所などが調査報告書を作成しましたが、その結論に納得しない法務担当幹部(訴訟を起こした弁護士とは別)がいて、別の弁護士事務所に調べさせたそうです。
「これに納得しない社内関係者がいた。その一人が、アジア統括会社の法務担当幹部だったB氏だ。B氏の指揮の下、同法務部はOSZ案件の法令違反リスクを再検証するため、2017年に三つの外資系法律事務所から意見書を得た。」
「B氏はこの意見書を本社の監査役に提出し、第三者による徹底的な再調査を要求。11月には、ある社外取締役と接触して問題の深刻さを説いた。」
その後、このB氏は会社から異動を通告されました。それに反発した若い弁護士が、報復人事の可能性が高いといって、社外役員全員と複数部署の社員数百人にメールを送り、そのことで会社から処分を受け、提訴に至ったそうです。
これは過去の不正ではなく、現地では裁判も起こされて、まだ進行中のようです。
「一方、中国では蜜月だったはずのOSZと安平泰との関係に変化が生じている。食堂、清掃業務などの取引は続いているが、約束されていた寮の譲渡が凍結されたことに安平泰が憤慨、OSZに牙をむき始めたのだ。安平泰は早期の引き渡しまたは賠償金を求めてOSZを提訴。すでに寮を実効支配しており、こうした状況にオリンパスは頭を抱えている。」
粉飾事件のときに明らかになった隠蔽体質はあまり変わっていないのでしょう。また、記事によれば、オリンパスには立派な経歴の社外取締役が大勢いますが、どうも影が薄いようです。
会計監査人(新日本)も、地方の中堅スーパーには厳しく、オリンパスのような大企業には甘いというのではつりあいがとれないでしょうから、会社に対して毅然たる態度をとり、きちんと調べさせるべきです。海外贈収賄対策の専門家もグループで抱えているでしょうから、自分で調べたり、判断したりする能力もあるでしょう。会社ぐるみで隠蔽しているのであれば、内部統制の統制環境(全社的なもの)にも関連しています。
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