前会長への巨額不正融資事件が発生した大王製紙で、創業家と経営陣の対立が激しくなっているという記事。
「創業家一族の井川意高(もとたか)前会長による巨額借り入れ事件が起きた大王製紙で、創業家と経営陣の対立が先鋭化している。創業家が過半数の株式を保有する関連会社、エリエールペーパーテック(栃木県さくら市)は12日、臨時株主総会を開き、大王製紙から出向していた全取締役3人を解任、創業家側が提案した5人の選任を決議した。大王製紙が創業家の影響力を抑える目的で創業家から関連会社の株式買い取りを進めていることに反発したためで、事件の再発防止どころか内紛が泥沼化している。」
「高雄氏は他の関連会社12社についても、同様に臨時総会を開くよう要求。大王製紙との取引関係は維持する考えを示しているが、取引条件の変更などには「株主の利益を害する」と反発を強めており、今後も株式保有を通じて影響力を行使する意向とみられる。」
大王製紙の四半期ごとの連結決算では、重要性がない場合を除いて、関連会社に持分法を適用しなければなりません。関連会社からすれば、四半期ごとに大王製紙に会計データを提供することは、会社法で義務付けられているわけではないので、もし、創業家がそのように指示すれば、会計データの提供や、大王製紙監査人による監査受け入れを拒絶することもありえます。
そうなれば、大王製紙は持分法を適用することができず、会計基準に準拠した連結財務諸表の作成ができなくなります(その関連会社に重要性がある場合)。大王製紙監査人の監査意見も限定付意見になってしまうでしょう。
もちろん、創業家側も、大人げない対応で大王製紙の株価が下がってしまっては、自分たちの財産が目減りするので、そうした最悪の事態は避けられるかもしれませんが、いずれにしても、大王製紙の一般株主のためには早く解決すべき問題です。
監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」(PDFファイル)
会計士協会の監査基準委員会報告書では、持分法適用会社の情報が入手できない例が文例として取り上げられています。
「限定付適正意見の根拠
○○株式会社は、当連結会計年度中にXYZ社の株式を取得し、在外関連会社として当該会社の投資に対し持分法を適用している。XYZ社に対する投資は、平成X1年12月31日現在の連結貸借対照表上XXXで計上され、XYZ社の当期純利益のうち○○株式会社の持分相当額であるXXXが、同日に終了した連結会計年度の○○株式会社の当期純利益に含まれている。
当監査法人は、XYZ社の財務情報を入手することができず、また、XYZ社の経営者及び監査人のコミュニケーションが認められなかったため、XYZ社に対する平成X1年12月31日現在の○○株式会社の持分法による投資簿価および同日に終了した連結会計年度の当期純利益のうち関連する持分法投資利益について、十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。
したがって、当監査法人は、これらの金額に修正が必要となるかどうかについて判断することができなかった。」
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