少子化対策として、日銀が保有しているETFを現物給付する(つまりバラマキ)という案があるそうですが、そのために、日銀からETFを簿価で買い取ることについて、財務大臣が国会で答弁したそうです。
「鈴木俊一財務相は7日の衆院財務金融委員会で、日銀が保有する上場投資信託(ETF)の処分に関連し、少子化対策の観点も含めてETFを若年層に現物給付する活用案について「政府が財源確保目的で簿価で買い取るといったことが許容されるのかどうかという点を含め、考えていかなければならない」と述べ、課題があるとの認識を示した。階猛委員(立憲)の質問に答えた。」
例えば、簿価での取引を認めるとなると、簿価1000億円、時価2000億円だとして、実際には2000億円をばらまくのに、1000億円しか予算を使っていないように見えてしまいます。これは一種の粉飾でしょう。政府が粉飾をやってはいけません。
しかも、含み益のある資産が政府に簿価で召し上げられるとなると、含み損のある日本国債などだけが残ることになります。日銀の財務は大丈夫なのでしょうか。
日銀財務、ETF配当ないと収益下がり全体の姿厳しめに-植田氏(ブルームバーグ)
同じ国会審議で、日銀総裁は、時価がベースだといっているそうです。
「日銀法の実施要綱では、保有ETFを処分する際には市場等の情勢を勘案し、適正な対価によるものと定めていると総裁は説明。その上で「処分価格については時価をベースにすることになる」との考えを改めて示した。階氏が、法令上は簿価で売却することも許容されているのかとただしたのに対しては、「現在の法令上は特に規定がない」と答弁した。」
「(日銀のETF)保有残高は3月末の時価で約53兆円、含み益は約16兆円に達している。2022年度のETFの分配金などによる運用益は約1.1兆円に上った。」
この含み益が狙われているようです。しかし、日銀がETFを買っていなければ、この含み益は、他の投資家が享受していたかもしれません。国民が得られていたはずの利益を、政府機関が吸い上げていると考えると、一種の税金でしょう。しかも膨大な金額です。毎年の運用益も同様です。
少し古い記事ですが、似たようなアイデアがあったようです。
日銀の出口戦略に関する考察-ETFの含み益で個人の資産形成を(2018年)(ニッセイ基礎研究所)
「図3に示したように、日銀が保有するETFは20%程度の含み益がある。この含み益を活用してETFを処分する方法が考えられる。具体的には、日銀が保有するETFを時価ではなく割引価格で売却する方法だ。この場合もETF買入れ要綱の改正が必要となるが、含み益の範囲内であれば値引きしても実質的に日銀は損失を被らない。
譲渡先は購入を希望する個人に限定し、機関投資家や外国人は対象外とすべきだろう。個人に限定する狙いは2つある。ひとつは将来に備えるための資産形成を促すこと、もうひとつは低金利政策への“お礼”だ。
仮に20%オフで購入できるとなれば希望者が殺到する可能性もある。不公平をできるだけ無くすために抽選ではなく希望者全員を対象とすること、購入者の年齢に応じて購入可能口数に差をつける(若い世代ほど多くする)こと、つみたてNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)が利用可能な人はその枠組みで購入してもらう等の工夫が考えられる。」