財団法人・日本漢字能力検定協会が、関連当事者取引の記載を削除した決算書を理事会や文科省に提出していたという記事。
「内部資料などによると、協会は公益法人会計基準が改正され、関連当事者との取引内容を財務諸表に注記することが規定された18年度に、公認会計士と監査契約を締結。会計士は、同年度だけで計約24億4000万円が支出された4社との取引を個別に決算報告書に記載した。
ところが、協会が19年6月に開かれた理事会・評議員会に提示した正規の決算報告書には、4社との取引は記載されておらず、理事会・評議会は取引の認識がないままこれを承認。文科省にも提出された。」(注:4社とは理事長らが代表を務めるファミリー企業)
監査人である公認会計士が決算報告書に注記を記載したというのはちょっとおかしい(監査人は法人が作った決算書をチェックするのが役割であり自ら作成するのは職業倫理違反)と思いますが、法人に注記を記載するよう指導して、その注記付きの計算書類を対象に監査報告書を発行したということでしょう。
監査人の責任は、監査報告書を提出するまでであり、監査対象とした決算書と異なるものを理事会や文科省に提出しても、それは経営者(公益法人や学校法人の場合は理事者)の責任です。しかし、こういう経営者だと、監査人までトラブルに巻き込まれる可能性はかなり高いといえます。
「協会側は、4社との取引について「結果的に合理性があった」と反論する一方、会計士の記載を削除したことについて「法令などに対する認識不足に起因するもので強く反省すべき」としているが、調査委は「法制度を熟知していなかったからといって免責されるものではなく、知らなかったこと自体が重大な任務違背」と厳しく批判している。」
もっとも、関連当事者取引の注記を求めている公益法人会計基準は必ずしも強制力を持たないようです。法令違反とまでいえるかどうかはよくわかりません。
関連当事者との取引の内容について
漢検、前理事長側から本部ビル購入計画 取得価格の2倍
「ファミリー企業への資産流出が指摘されている財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)が、15日付で辞任した大久保昇・前理事長が代表を務める出版会社所有の協会本部ビルを、20億円で購入する計画を立てていることが分かった。同社の取得価格の約2倍にあたる。」
公正な取引かどうかは、譲渡人の取得価額と比べるのではなく、時価と比べて判断すべきです。しかし、96年に約10億5千万円で購入したビルということですから、その後の10数年で時価が倍になるということは(もちろん場所にもよりますが)考えにくく、たしかにあやしい取引なのかもしれません。ただし、年間約1億6千万円の賃料が適正だとすれば、単純利回り8%ですから、20億円でも高くはないのかもしれません。
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