オリンパスが、損失隠しのための経理操作に関係する資料をそのつど廃棄していたという記事。
「関係者によりますと、オリンパス社内で損失隠しを知っていたのは菊川剛前社長のほか、財務担当の役員や社員数人だけだったということです。損失を海外のファンドに移し替えて隠す「飛ばし」という手口など、損失隠しのための経理操作は証券会社の元社員が指示していたということで、その際に作成された資料の多くはそのつど廃棄されていたことが分かりました。」
資料が廃棄されているのに、過年度決算の訂正ができるのでしょうか。また、監査人は、監査や四半期レビューが適切に実施できるのでしょうか。
オリンパス:上場期限の12月14日までに報告書-過年度決算も訂正(ブルームバーグ)
一方で、会社は12月14日までには、第2四半期の四半期報告書を提出するといっているようです。
「オリンパスは17日夕、同社株式の上場維持の前提条件である四半期報告書の金融当局提出を、期限である12 月14日までに実施する予定だと発表した。また、報告書提出には過去に発表した有価証券報告書の訂正が必要になったと説明。過年度決算の訂正を行う方針を示したが、その期間や具体的な内容は未定としている。」
今回の粉飾事件は、監査も問題になっています。第2四半期以降の監査(レビュー)や、訂正のための再監査(レビュー)がいい加減だと、恥の上塗りですから、会社や当局からどんな圧力があろうとも、しっかりやってほしいものです。
第2四半期は、監査ではなく、分析や質問などの限られた手続だけでよいレビューだといっても、今回のケースでは、比較分析の対象となる過年度の数値があてにならず、また、質問をするにしても、粉飾スキームの責任者は、10年以上うそをついていたわけですから、そんな人物に質問しても証拠にはなりません(ほかの証拠で裏付けを取らなければならない)。それ以外の粉飾にかかわっていない人たちは、粉飾スキームの実態を知らないわけですから、質問しても、知らないと回答されるだけでしょう。
(日本公認会計士協会の「四半期レビューに関する実務指針」31項では、質問は「質問事項について十分な知識を有し、責任をもって回答できる適切な経営者又は役職者に対して実施する」とされています。)
「またジャイラスののれん残高は3月末に1353億円。再監査発表資料で、適切な決算期に当該損失を計上するように訂正すると、優先株取得時にFA費用の支払自体がなくなり、のれん(3月末時点で4億1800万ドル、日本円換算で334億円)もなくなる可能性があると説明している。」
会社のプレスリリース(PDFファイル)
のれんの修正については、プレスリリースに添付されている金融機関向け資料の26ページの下の方に豆粒のような字で注書されているだけです。過去の損失は「全て処理」というのは、大きな字で書かれています(5ページ)。
隠蔽体質は直っていないのでしょう。
(会社資料より)
「1990年代ころからの有価証券投資等による損失は、 Gyrus社の優先株を買い取る前にすでに発生しており、当該損失が過年度の損益計算書の適切な期間に計上されていなかった可能性がある。 適切な決算期に当該損失を計上するように訂正すると、結果として優先株の買取り及び最終的な株式取得に係るFA費用の支払自体がなくなり、のれん(2011 年3期現在で418百万ドル(334億円))もなくなる可能性がある。」
オリンパス損失隠し:英社の資産価値334億円過大計上か(毎日)
オリンパス 損失「飛ばし」組織ぐるみで行っていたとの指摘(NEWSポスト・セブン)
「この幹部(注:オリンパス幹部)によれば、「飛ばし」の管理は、オリンパス社内に設置された「事業投資審査委員会」が一手に引き受けていたという。
「その委員会のメンバーは、経営企画部、経理部、総務・財務部に籍を置く一部社員によって構成され、委員長は菊川剛前会長が長く務めていた」(オリンパス幹部)
こうした状況から判断しても、一連の「飛ばし」が組織ぐるみで行なわれていたと見て間違いないだろう。
「証取委もこれまでの内偵調査でそうした状況を既に把握していると考えてもらっていい」(証取委幹部)」
最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事