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手形45億円決済不能、架空取引か 広島ガス子会社社員

asahi.com(朝日新聞社):手形45億円決済不能、架空取引か 広島ガス子会社社員 - 社会

広島ガス(東証2部上場)の子会社「広島ガス開発」が手形を利用した架空循環取引を行っていた疑いがあるという記事。

「取引先企業の関係者によると、広島ガス開発の社員が、手形での支払いを条件に、マンション建築の資材を複数の企業に発注。取引先は同開発振り出しの手形を受け取った後、手数料を差し引いた額の手形を別の会社に振り出すよう指示された。複数の取引先間で同様の取引が繰り返された後、最終的に同開発が取引先から手形を受け取る仕組みだったという。同開発が受け取った手形は同社の売り上げに計上されていた疑いがある。」

この取引で少なくとも計45億円分の手形が決済不能になっているそうです。

広島ガスグループ 巨額の架空取引が判明

こちらの記事では、不正の動機についてふれています。

「広島ガス開発の担当者は、内部調査に対しノルマの達成が循環取引の目的だったと説明し、「取引額が大きすぎて資金回収が難しくなるのが恐く、会社に報告できなかった」と話しているということです。

 「売上高のノルマ達成。バブル崩壊後の落ち込みをカバーしたいとの思いが強かったのだと認識」(広島ガス)」

また、この記事によると別の子会社も取引に関与していたようです。

不正の手口についてもふれています。

「広島ガスによりますと、循環取引は実在するマンション工事で内装などの仕事を請け負っているように装って行われました。

 工事が終わる時期が近づくと、不正が発覚するのを避けるためマンションの物件名を変更し、取引先との間で架空の売買を繰り返したということです。・・・」

たとえば、(1)A工事の完工高を1億円、工事原価を8000万円水増しする、(2)水増しした8000万円の原価を一旦取引先に支払ったうえで、(単純化のため取引先の利益はゼロとして)請負金の入金として全額還流させる(実際には取引先の利益分だけ目減りする)、(3)不足分の2000万円は(完成時期がA工事より後の)B工事の原価として支払い(2)と同様にA工事の請負金の入金として還流させる、(4)B工事についても同様の取引を行う、といったことを繰り返していたのでしょうか。

広島ガス開発側からすると、仕入が架空である以上、支払をストップするということになりますが、取引先の方は、別の取引先からの架空仕入に対して手形を発行していた場合には、手形上の支払義務は残ります。

「循環取り引きが発覚したことで、この業者は広島ガス開発から今月に入って取引中止を通告されました。支払いが止まると、いくつもの会社が窮地に立たされると訴えます。

 「これは中間業者としては、広島ガスさんの指示書のもとで、すでに各社は支払手形を切ってる。それがストップするということは、広島ガスさんからの入金が入らないということですね。これは大変なことですよね、手形は切ってますから、みなさん」(取引業者)」

当社子会社における不適切な取引について(PDFファイル)

プレスリリースによれば、1999年(平成11年)から今年の2月まで不正な取引が行われていたとされています。約10年間も循環取引を破綻させずに続けてこれた秘訣を知りたいところです。

朝日の記事によれば、少なくとも45億円が焦げ付いているとのことですが、今後、過去10年間の取引内容を精査して、45億円の損失を取引参加者のうちの誰にどれだけ負担させるか決めなければなりません。正当な取引に紛れ込んだりしていた場合には、たいへんな作業となりそうです。
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