税務当局が兵庫県芦屋市の高級住宅街に住む富裕層を集中的に調査して多額の脱税を摘発したことを取り上げた記事。
もともと、昨年11月の朝日新聞記事で明らかになったニュースでした。
「「総額30億円」という金額の大きさもさることながら、それ以上に驚きをもって受け止められたのが、申告漏れを指摘された人数の多さだ。
「『少なくとも50人以上』ということは、問題にならなかった世帯を含めれば、数百人をしらみ潰しに調べたということでしょう。ものすごい手間と時間がかかっている。
ひとつの地域を対象に、これだけの規模の調査を行うのは極めて異例のことです」(全国紙経済部記者)
最新の2015年の国勢調査によれば、六麓荘町の人口は650人。単純に計算すれば人口の10%近くが申告漏れを指摘されたというのだから、住人たちの心中は穏やかではないだろう。」
「今回、住民たちが指摘された内容は、ほとんどが為替差益や相続財産の申告漏れといったケースだ。」
「重点管理富裕層プロジェクトチーム」が活躍したのだそうです。
「元東京国税局職員で、税理士の高木重利氏が言う。
「7~8年前からでしょうか。国税庁は富裕層への課税強化のための調査研究を一気に進めています。
たとえば、名古屋国税局管内の昭和税務署では、対富裕層のスペシャリストである『国際担当統括国税調査官』を配置し、富裕層の資産運用の実態を調査する手法を蓄積してきました。
そのノウハウをどんどん広げるかたちで、東京や大阪にも、次々と『調査チーム』ができています。
また、総資産3億円以上等の条件にあてはまる人に提出が義務付けられる『財産債務調書制度』や、やはり5000万円超の国外資産の保有で義務付けられる『国外財産調書制度』など、富裕層の課税逃れに目を光らせるためのシステムが次々と整備されてきています。
今までよりも、かなり緻密に資産状況を把握できる土壌が生まれているのです」
六麓荘町で行われた調査も、まさに高木氏の言う「調査チーム」によるものだった。
このチーム、正式名称を「重点管理富裕層プロジェクトチーム」という。
「基準は一切公開されていませんが、ある一定以上の資産を持つ富裕層を網羅的にピックアップし、国際課税に精通する実査官を中心に、複数の部署の担当者らが協力して『逃税』行為に眼を光らせています」(前出・全国紙経済部記者)
国税局に設置されたチームの成績が相当良かったのだろう。'17年には全国の国税局・国税事務所すべてにプロジェクトチームが拡大され、さらには、関東、近畿の富裕層が住む地域の税務署にも置かれることになった。その中に、芦屋税務署が含まれていたのだ。」
富裕層が密集している地域を「集中調査」すると、同じ手口の脱税策を芋づる式に摘発できるなど、効率的なのだそうです。
「今回のような大規模調査が、今後は全国の高級住宅地で行われる可能性が高い。
「結局、あちこちに高級住宅街が分散している東京に比べ、関西エリアは芦屋近辺に富裕層が密集しているから調査がしやすく、早く結果が出たのでしょう。
様々な制度が整い、各国の税務当局との情報共有も簡単になっていますから、今後は海外財産までガラス張りになる。全国各地で、富裕層の摘発が増えていくと思います」(元仙台国税局長で元明治大学教授の川田剛氏)」
国税vs新富裕層「新たな闘い」~新制度もすり抜ける海外資産(現代ビジネス)
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