ベンチャー企業が会計監査を受けやすい環境を整備する施策を金融庁が打ち出すという記事。金融庁の新しい有識者会議の前宣伝記事のようです。
「金融庁は中小監査法人の育成などベンチャー企業が会計監査を受けやすい環境を整備する。新規株式公開(IPO)を目指す企業は増えているが、上場直後の不祥事発覚が相次ぎ、監査が厳格化。大手監査法人の人手不足もあって上場に必要な会計監査が受けられない企業が増えている。IT(情報技術)による業務効率化も促し、市場を活性化するIPOの増加につなげる。
金融庁は17日に監査法人やベンチャー企業、投資家、証券会社などを集めた初の対策会議を開く。上場監査の受け皿整備などの課題を整理し、2019年度中に対策案をまとめる方針だ。」
記事前半では、大手監査法人が受注を絞り込んでいる一方で、企業や証券会社の側では大手監査法人を好む傾向があり、ミスマッチが生じている現状を指摘しています。
具体的な策としては...
「上場監査の担い手の確保に向けて、大手監査法人から独立した会計士のうち上場監査の経験がある人材を活用できる仕組みを作る。...
準大手や中小の監査法人がIPO監査をできるように、大手OBの人材データベースを構築して派遣する。独立して間もない会計士は仕事の受注に苦労するケースが少なくないため、金融庁は両者にとって利点が大きいとみている。」
「大手には地方の拠点整備を求める。現在、監査法人の拠点は東京や大阪など都市部に集中している。地方の有望企業がIPOに向けた助言を求めたくても難しいというケースが出ている。」
「日本公認会計士協会にも相談窓口を設け、IPOをめざす企業に対して財務資料や内部体制の整え方などを支援する。」
「監査へのIT活用も促す。財務を含めた膨大な企業データをAI(人工知能)で分析するといった仕組みなどで、不正を発見しやすくする。」
大手監査法人OBの活用という点では、今でも、準大手や中小が大手OBも含めて積極的に採用活動をしているようですし、金融庁がデータベースをつくらなくても、希望者はすでに民間のリクルート会社に登録しているのでは。独立した大手OB会計士を、非常勤で雇うことを支援するということだと、公認会計士・監査審査会などが、非常勤の割合を下げるよう中小監査法人を指導してきたのと矛盾します。
大手監査法人の地方拠点については、最近はむしろ閉鎖・統合傾向なのではないでしょうか。それは、地方事務所とはいえ、ある程度の規模がないと、品質管理の水準が確保できないという判断があるのだと思います。公認会計士・監査審査会も、大手監査法人の地方事務所の品質管理レベルの低さを指摘しており、監査法人側もそれに対応せざるを得なかったのでしょう。
また、会計士協会が、企業にサービス提供するわけにはいかないので、できることには限度があるでしょう(一般的な情報提供などに限られるのでは)。中小監査法人への支援は今でも相当やっていると思います(監査ツール提供など)。
IPOを支援するということに限定せず、監査人材の裾野を広げるための策を考えてみると、ほかにも、例えば、監査法人を社員1人(あるいは2人)でも設立できるようにすることが挙げられます。地方では、現行規定の5人を集めるのはなかなか難しいでしょうし、個人でやっている監査を組織化する意味もあります。
また、監査法人社員の競業禁止規定の廃止も考えられます。現行規定では、監査業務を本格的にやろうとして、監査法人に社員として加入すると、それまで他監査事務所の非常勤としてやってきた仕事を完全に止めることになります(棚卸立会を1日手伝うのすら認められない)。それは、監査人材の活用にとってはマイナスです。監査法人の業務に専念させるという趣旨であれば、監査だけでなく、税務やコンサルの仕事もやめさせるべきですが、そうはなっておらず、監査だけが禁止されています。所属している監査法人が承認すれば、外部での監査業務従事を認めるようなルールにすべきでしょう。
いずれも、法令の改正が必要なので、実現はしないでしょうが、一応、ここで提案しておきます。
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