会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(東洋インキSCホールディングス)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

東証1部上場の東洋インキSCホールディングスのプレスリリース。

フィリピン子会社における不適切な会計処理に関する特別調査委員会の報告書を受領したとのことです。

「当社は、本特別調査委員会の調査結果を踏まえ、TICCにおける不適切な会計処理が実施されていた、たな卸資産、買掛金、借入金等について、過年度の訂正を行うとともに、TICCの固定資産の減損処理等も考慮いたします。その結果、本件における当社連結財務諸表の最終利益に与えた過年度の累積的影響額は、2,656百万円の損失となる見込みです。また、TICCの訂正後の財政状態を勘案し、過年度の当社個別財務諸表において、関係会社投資損失引当金を訂正計上いたします。」

調 査 報 告 書(開 示 版) (PDFファイル)(70ページ近くあります。)

まず、社内調査の段階で以下のことが判明したそうです。

「東洋インキ HD 及び TL は、2019 年 8 月 27 日から 9 月 11 日にかけて社内調査を実施した。その過程で、財務・経理関連資料を収集したところ、以下の事実が判明した。

まず、東洋インキ HD グループ財務部の C 氏及び TL 国際経営部の D 氏が、MUFG、MIZUHO、BPI、RCBC 及び BDO の各銀行から収集した残高証明書と、TICC から東洋インキ HDに提出された連結パッケージを比較したところ、2019 年 8 月時点において、これらの銀行に対して、合計約 13.3 百万米ドルの簿外借入金が存在することが判明した。

また、C 氏及び D 氏が、TICC の買掛金台帳と、TICC から東洋インキ HD に提出された連結パッケージの買掛金の金額を比較したところ、約 2 百万米ドルの簿外買掛金が存在することも判明した。

さらに、C 氏及び D 氏が、L 氏の作成した 2018 年末の実地棚卸の結果が記載された表と、TICC から東洋インキ HD に提出された連結パッケージの棚卸資産の評価額を比較したところ、L 氏が作成した表には約 7.6 百万米ドル相当の棚卸資産しか計上されていなかったのに対し、TICC から東洋インキ HD に提出された連結パッケージには約 14.3 百万米ドル相当の棚卸資産が計上されており、約 6.7 百万米ドルの棚卸資産の過大計上が判明した。」

A氏(所属・肩書きは、この子会社のFinance & Accounting /Sr. Manager)という人物が、不正の中心だったことになっています。同氏は調査への協力を拒否しており、同氏への調査は実施されていないようです。

簿外借入について、その手口は解明できなかったそうですが、A氏が残高確認書を偽造した可能性があるそうです。

「当委員会が、BPI に対してヒアリングをしたところ、BPI の担当者は、上記更新版の残高証明書及びお詫び状は、BPI が発行したものではないと述べている。以上より、A 氏は、連結パッケージと残高証明書の内容の齟齬により本件不正が発覚することを回避するために、上記フォーマットを用いて、残高証明書を偽造していた可能性がある。」

簿外借入に関し、2019年3月におかしな決算整理仕訳が行われたことは、明らかになったそうです。

「上記(ア)記載の借入金は、BR に、「(借方)預金 1.6 百万米ドル / (貸方)借入金 1.6 百万米ドル」と適切に計上されている。

しかし、その後、2019 年 3 月 31 日に、決算修正仕訳を行う段階で、以下の調整仕訳が行われており、これによって、棚卸資産が増加、借入金が減少、買掛金が増加、売上原価が減少するとともに、1,434,746.20 米ドルの借入が簿外化されている。」



「こうした借方の勘定科目が借入金となっている調整仕訳は、2019 年 3 月の決算修正仕訳のほかに、異なる時期の決算修正仕訳においても散見される。2019 年 3 月の決算修正仕訳時における調整仕訳のように必ずしも内訳が判明しているわけではないが、これらの調整仕訳も、借入金を一部簿外化することを意図して行われた会計処理であると推認される。」

(明らかに異常な仕訳なので、監査人が仕訳テストをやっていれば、発見できそうな気もします。)

他の科目も含めて、不正全体の手口は...

「A 氏による本件不正のうち、①簿外借入の手口は、決算修正仕訳を行う段階で、借方の勘定科目を借入金とする調整仕訳を行うという会計処理である可能性が高く、②買掛金の過少計上の手口は、決算修正仕訳を行う段階で、借方の勘定科目を買掛金とする調整仕訳を行うという会計処理である可能性が高く、③棚卸資産の過大計上の手口は、決算修正仕訳を行う段階で、借方の勘定科目を棚卸資産とする調整仕訳を行う会計処理である可能性ないし GPR 上のデータ改ざんによる売上原価の過少計上である可能性がある。」

不正の手口は、詰め切れていないようですが、どうやら、決算の担当者が決算修正仕訳で不正な仕訳を入れていたのではないかということのようです。

なお、この子会社は、現地通貨ベースの会計システムを使用していますが、機能通貨の関係で、それを換算し米ドルに直して財務諸表や連結パッケージを作成するという、少し複雑な仕組みになっていたようです。

「TICC には、「ERIC」と呼ばれる会計システムが導入されており、財務・経理担当者は、当該システムを利用して、仕訳の作成・集計等を行っている。

ERIC は、比ペソを基軸としたシステムであり、入力されたデータは全て比ペソに換算されて保存される。また、仕訳伝票をはじめ、集計した結果は全て比ペソで表示・出力される。他方、現在、TICC は、米ドルを機能通貨としており、財務諸表や連結パッケージを全て米ドル建てで作成している。そのため、TICC の担当者は、ERIC を使用して仕訳を作成・集計した後、当該集計結果を米ドルに換算して、財務諸表や連結パッケージを作成している。」
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