会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

当社子会社に関する一部報道等について(ナガホリ)

当社子会社に関する一部報道等について(PDFファイル)

ナガホリ(東証スタンダード)のプレスリリース(10月13日付)。

子会社である仲庭時計店に対する貸付けや、同社における過去の不正事案に関する報道等に、憶測や推測が含まれ、事実とは異なる記載があるとのことです。

今回の開示では、本件に関する会社の認識を説明しています。

まず、「仲庭時計店の株式取得及び完全子会社化の経緯並びに過去の経営状態について」。

ナガホリは、2014年に仲庭時計店(「関西を中心に時計及びジュエリー小売業を営む老舗企業」)を完全子会社化しました。

「仲庭時計店は、特定の大手百貨店と強い取引関係があり、当社としては、外商を中心とした関西地区における当該百貨店の顧客への販路拡大を企図していたところです。しかしながら、当該百貨店が関西地区の複数の店舗を閉店したこと、加えて残りの一部の店舗を他の百貨店に譲渡し、譲り受けた百貨店が、従来の外商中心の営業から店舗誘致型の営業に転換したこと等の予期せぬ外部要因によって、仲庭時計店の売上高が減少するに至り、同社は、固定費の圧縮に努めたものの、赤字は拡大することとなりました。さらに、2017 年 10 月頃、当社は、グループ内の経営資源の効率的利用及び国内の中小規模のジュエリー業者に対する M&A を通じて同事業を全国的に展開するための一気通貫の体制構築のために、仲庭時計店が営むジュエリー事業を譲り受け、同社は時計の小売業に注力することになりましたが、同社の大口取引先であった高級ブランド時計会社との契約が終了したこともあり、同社の赤字はさらに拡大することとなりました。このように、仲庭時計店の赤字については当社グループ内における事業再編を要因とする側面もありましたので、当社としては、同社に対して資金支援や貸付けを行うこととし、上記の要因に基づき仲庭時計店が債務超過に陥ったため、当該債務超過相当額を貸倒引当金として計上しております。これらについては、当社を担当する監査法人にも詳細を説明の上、単体及び連結の会計処理上、適切に処理し、公表しております。当社担当の監査法人はこれらを踏まえた上で、当社の連結・単体の財務諸表に無限定適正意見を出しております。」

ナガホリの連結では、子会社の赤字は自動的に反映されているはずですから、特に問題はないのでしょう(ただし、子会社において正しく会計処理がなされていることが前提)。しかし、単体決算は、子会社株式や子会社への貸付金・債務保証について、評価減や貸倒引当金計上などを行うかどうかは、判断が必要な問題であり、あとから、損失処理が遅かったと批判される場合もあるでしょう。今回の開示では、監査法人が連結・単体とも無限定適正を出していることをもって、正しい決算だったといっているようです。

リリースの後半では「仲庭時計店の従業員による不正事案について」述べていますが、こちらは、主に棚卸資産の関連で、実際に不正な行為が行われていたようです。ただし、社長らには責任はなかったと主張しています。

「上記の一部報道等において、当社代表取締役社長長堀慶太及び常務取締役吾郷雅文については処分がなされなかった旨が指摘されておりますが、これは、両者の当社(代表)取締役としての業務執行において処分の対象とすべき非違行為・関与が無かったことが理由です。」

どのような調査・検討を行った結果、そのような結論になったのかについては、示されていません。

プレスリリースでは、従業員による不正事案が、説明されています。4つありますが,どれもけっこうずさんあるいは悪質です。(年月は会社が認識した時期)

① 仲庭時計店従業員 X1 による横領及び棚卸不正事案(2017 年 11 月)

「顧客から大幅値引きを要請されたが、会社ルールの上限を超過していたため、担当者であった X1 が、会社に無断で別の商品を無償で交付することで顧客の要求に応じることを繰り返し、当該無償交付の事実の発覚を防ぐために、棚卸の際他の商品に手持ちの値札バーコードを付けて、定期棚卸のすり抜けを行っていた。」

「2018 年 3 月期に、無償交付した商品(点数 42 点)の商品原価の損害賠償債権に対応する 42,801 千円に貸倒引当金計上

② 仲庭時計店従業員 X2 による商品先渡し隠蔽・棚卸不正事案(2017 年 11 月)

「特定の顧客に対して、現品の到着時に、その都度、現金の支払いを受けて商品を引き渡す商売をしていたところ、2016 年頃から商品の先渡し取引になって、入金が徐々に遅れはじめていた。このような状況下においても、担当者であった X2 は、商品を継続的に渡し続けていた。そして、事案の発覚を防ぐために、上記①を行っていた X1 と同様の手口で、定期棚卸のすり抜けを行っていた。」

「2018 年 3 月期に損害額(代金未回収の商品の商品原価相当額)の約 2 分の 1を貸倒引当金計上2019 年 3 月期に損害額の約 2 分の 1 を貸倒引当金計上※上記事案内容のとおり、本件は、顧客からの代金が未収であるため、回収努力を続ける中で、回収見込みに応じて貸倒引当金を計上
合計の貸倒引当金額:54,190 千円(商品点数 41 点の原価相当額)」

③ 仲庭時計店従業員 X2 による取引先保有商品の長期預かり未返却事案(2018 年 12 月)

「2018 年 3 月、X2 は顧客(A 氏)から高級腕時計(以下「被害品」という。)を無償メンテナンスの依頼を受けて預かったが、その後、被害品のガラス面にキズがあったことから無償メンテナンスでなく、有償のガラスの修理が必要であることが判明した。しかしながら、X2 は、預り時にガラスにキズがあることを確認していなかったため、修理代の請求は出来ないと判断し、正規メーカーへ送らずに、X2 知人の B 氏(X2 の顧客)に修理依頼名下に被害品を交付した。B 氏は、C 氏(B 氏の知人、X2 は面識がない。)に被害品を渡したとのことであったが、その後、C 氏とは連絡が取れなくなった。
2019 年 1 月、仲庭時計店は、顧客(A 氏)に対して被害品の購入代金 12 百万円を支払った。」

「2019 年 2 月に損害金の未返済額 2,000 千円を未収入金に計上し、2022 年 8月までに分割で全額を回収し、本件での被害品による損失は計上されなかった。」

④ X2、X3、X4、X5 による大量窃盗・質屋質入れ事案(2019 年 9 月 )(これがいちばんひどい)

棚卸日前日に、X4 が、データ上、店舗間で大量に商品が移動していることを本部が探知し、X4 を追及したところ X3 の指示によるものであるとの供述を経て、更に調査したところ不正が発覚」

「・X5 は、X2 が商品 2 点を領得したことに気付き返却を求めたが、ごまかされ続けていた。さらに、X2 は、X5 に対して別の商品との交換を要求し、X5 は先輩である X2 からの依頼を断り切れず仕方なく応じた。

・X5 は X2 に渡した商品が返却されないため、先輩である X3 に相談したところ、却って、X3 は、顧客から預かっている商品を X2 に渡す等して、棚卸の際に商品点数の辻褄を合わせる手助をした。

・さらに、X2 から未返却状態が続く中、逆に X2 から代替商品が必要だと言われた X3 は、勝手に商品を持ち出し X2 に手渡し、これにより、不正に持ち出された商品点数が増加した。

X2 は商品を B 氏に手交し、B 氏は当該商品を質屋に持ち込み、現金を取得した。

・X4 は X3 指示のもと、PC 操作で、商品在庫の移動データをごまかし、事案の発覚を妨げようとした。」

「2020 年 3 月期に 31,927 千円の貸倒引当金を計上

※本事案に関する弁護士費用や質札が無い等の理由で回収が不能な現物分を貸倒引当金に計上

2021 年 3 月期に 54,311 千円の貸倒引当金を計上

※上記対応のとおり、当初は、質屋からの現品の取り戻しを図っていたものの、その後、和解による解決をすることとなったため、その状況に応じて貸倒引当金を計上」

高額商品で在庫管理が甘く、ルール違反を見逃しているとこうなるという例でしょう。また、2017年時点で、在庫管理がガタガタだったことが明らかだったのに、それを放置したため、被害が増えてしまったというように読めます。

このプレスリリースで問題としている報道ではありませんが、こういう記事もあります。最初の方で出てくるオリンピックの話は直接の関係はありません。

”五輪小判”を作った老舗宝飾企業で起きていた「巨額着服事件」(FRIDAY)

「仲庭時計店の元社員が語る。

「仲庭は高級時計を扱っていましたが、管理の杜撰さは以前から指摘されていました。在庫の棚卸をする時に本来なら3ヵ月に一度は、書類と現品との付け合わせをしてチェックをするのですが、別の店舗に貸し出している時計があっても細かく追及せず、トータルの数だけ合っていれば、それで済ませたりしていました」

17年11月の棚卸では、仲庭時計店の社員A氏が売上実績を伸ばすために不正を行なっていた事実が発覚。08年頃から顧客による大幅な値引き要請に応じた上に、無料でもう一点の時計を添付し、その穴埋めのために別の商品を転売して換金する行為を繰り返していた。換金した金の一部を自らの飲食代などにも充てており、損失額は約4300万円にものぼっていたという。

さらに不正の連鎖は続き、勤続10年を超える社員B氏は権限がないにもかかわらず、16年4月から17年5月にかけて、自らの大口顧客に高級時計41点を販売。約5400万円の代金が未払いとなっただけでなく、大口取引先である百貨店「そごう西武」の20年来の顧客から定期無料メンテナンスのために預かった1200万円相当の超高級時計「リシャール・ミル」の限定モデルを巡っても深刻な事態を引き起こした。預かった時計のガラスに傷があることがのちに判明し、対応の不手際を隠すため、紹介者を通じ、格安で修理を請け負う指定外の修理業者に依頼。正規ルートではないため、時計の修理に手間取り、回収不能の事態に陥ったのだ。

当然ながら「そごう西武」側は烈火のごとく怒り、仲庭時計店は親会社のナガホリと連名で文書を差し入れて、解決金として1200万円を支払うことになった。

問題のB氏は18年6月に退職。しかしその後、B氏が後輩の現役社員に「あるお客様が時計を見たがっている。何とか数点用意して欲しい。時計を預けても短期間ですぐに返却されるので大丈夫」などと持ち掛けて、「ブレゲ」の時計2点を持ち出させたことが、新たなトラブルを誘発していく。

「B氏は、この現役社員が何度催促しても返却しようとせず、『別の時計を持ってくれば交換する』などと説明し、一向に埒が明かない。そこで対応に困った現役社員が、先輩格の社員C氏に相談。C氏は別の顧客から預かっていた700万円相当のオメガを渡し、B氏に渡した時計を回収するよう指示したのですが、今度はオメガが回収できない。そのうちにB氏からの要求に応じる形で、C氏は約半年の間に次々と時計を持ち出し、19年9月の棚卸の時点で、この不正が発覚。結果的にはC氏が105点、2億円相当の時計を持ち出していたことが分かったのです」(同前)」

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