1月21日に開催された第10回公認会計士制度に関する懇談会(公認会計士試験・資格制度の見直し案の概要が説明された回)の議事録が金融庁のサイトで公開されました。
まず、金融庁の担当者から、見直しの目的とそのための対策の概要が説明されています。
「・・・今回の見直しの問題意識としては大きく2つ、1つは足元の待機合格者の問題をいかに解決するかという問題意識、いま一つは、企業の会計レベルをどのように向上させていくのか、それをひいては日本の市場の公正性・透明性の向上にどういうふうにつなげていくのかという問題意識でございます。・・・
まず、1番目の待機合格者への対策でございますが、後ほどご説明いたしますけれども、主として短答式試験の合格及び論文式試験の科目合格の有効期間の見直しというもので対応したいと考えております。これによって、受験を始めてから短期間での合格、あるいは短期間で合格できなかった方の早期の就職を促進する効果が期待できると考えております。他方、この対策のもう少し進んだ効果として、監査法人ではない一般企業のほうで勤められている社会人の試験合格を促し、これらの方が企業等の開示書類の作成等で活躍することを通じて、開示内容の質の向上が期待できるのではないかといったことも期待されるところでございます。
次に、2番目の問題意識である企業の開示内容の質の向上といったものへの主たる対応が、新たな会計専門資格である企業財務会計士の創設でございます。名前も含めて後で詳しくご説明をいたします。今回の見直しにおいて、企業内実務等の担い手として監査証明業務は行わない会計の専門家資格を設けるとともに、これも後でご説明しますけれども、金融商品取引法に会計専門家の活用の促進及びこれに関する開示規定を設けることで、企業等においてこのような会計専門家の活用の促進を図ることとしてございます。これを進めることによって、副次的な効果として試験合格者の一般企業等への就職が進むことも期待され、待機合格者問題にも一定の効果が期待できるのではないかと考えているところでございます。」
待機合格者というのは、論文式まで合格したが実務要件を満たせないために資格を取得できない人ですから、合格できなかった人に(早くあきらめてもらって?)早期就職してもらうというのは対策にならないのでは・・・。それとも、早くあきらめる人が増える→受験者が減る→待機合格者が減る、というルートを想定しているのでしょうか。
企業開示の質の向上のために新しい資格を設けるというのも、相当無理があります。会計士試験と同じ試験を課すわけですから、開示の質向上のために企業財務会計士資格が必要だということで企業に勤務する人が大勢受験すれば、合格者も増えて、待機合格者も増えてしまうかもしれません。かといって、合格者を絞ると、企業財務会計士も増えず、開示の質の向上という目的は達成できません。
2つの目的を両立させるためには、会計士試験の受験者や合格者は増やすが、合格者中の公認会計士を目指す人数は減らし、その分、企業財務会計士資格取得へ誘導することが必要となります。そんな手品みたいなことが可能なのでしょうか。
一般企業への就職促進という副次的な効果も、実務経験を課しているため、期待できません。
また、新聞でも報道されましたが、以下、座長である東副大臣のコメントからの抜粋です。
「・・・私は、物すごく自己自立型の人間でありますから、一番初めに持った印象を皆さんに述べさせていただきたいと思うんですけれども、高度な試験を目指す人がその試験に合格して実務経験がない、その結果として待機資格者があふれてしまっていると、東さん、何とかしてくださいと、こういう話なんです。
僕は、素朴に、これは何か違うんじゃないのかというふうに率直に感じました。・・・
僕の理解の仕方としては、資格試験を求める人間というのは、その資格を取って、そして自動的にその資格が生かされるということは、多分基本的にどの世界を見たとしても僕はないんだろうと思っていたんです。・・・
・・・僕は、政治家になる前、20年前になっているんですが、その前、世界じゅうで仕事をしていますから、だからそういう角度から見ても日本って本当に優しいなと。どこまで国としていろいろなことをやってあげなくちゃいけないのかなと。もっともっと自前で、リスクを持って公認会計士試験を目指してやられるんだろうと僕は推察するんでありますが、その試験さえ合格すれば何とかしてくれるというここに、ある意味で、何とかしなくちゃいけないんですが、日本の特徴的な部分があるんだろうと。
他方、グローバル化が進んでいると。本当にそこで戦えるんですかという問題の一つでもあるんだろうと思います。・・・
・・・大学の諸先生もいらっしゃいますから、公認会計士を目指す方々に、ぜひ先生の立場からも、これは厳しいよと、なかなか試験に合格したからといってうまくいかないよと、ちゃんと入れるところに入れないよという形で、ちゃんとオリエンテーションしていただきたいと思いますし、・・・」
要するに、自己責任なのだから、受験を決断する前に、自分でリスク評価しなさい、また、関係者は本人がリスク評価できるように正しい情報を提供しなさいということなのでしょう。たしかに、それが一番の対策かもしれません。
東 祥三(副大臣名簿より)
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