「和牛オーナー」制度の「安愚楽牧場」が、民事再生法の適用を申請し、財産保全命令を受けたという記事。
「東京商工リサーチ宇都宮支店によると、同社は全国40カ所の自社牧場と338カ所の預託牧場を持ち、黒毛和牛の牧場としては国内最大規模。「和牛オーナー」となる個人会員から出資を募って繁殖牛を購入、生まれた子牛の売却益を配当金とする方式で資金調達し、今年3月期の売上高は1027億円を計上していた。」
記事に書かれているように、繁殖牛を購入してから、生まれた子牛を育てて売却するまでの間の資金調達を、個人の「和牛オーナー」から行うという金融取引の一種なのでしょう。しかし、形式上は繁殖牛の取引のようですから、モノ(この場合は生き物ですが)の取引ともいえます。
負債が6百億円以上あるようですが、和牛オーナーとの取引の会計処理は、どのようなものだったのでしょうか。
肉牛飼育、和牛預託オーナー制度の運営
放射能汚染による風評被害で牛肉価格が下落
株式会社安愚楽牧場
民事再生法の適用を申請
負債619億8700万円(帝国データバンク)
「和牛預託制度を採用する企業としては唯一の成功事例」だそうですから、まともなビジネスではあったのでしょう。
2009年4月まで有限会社だったというのは、若干あやしい感じはしますが・・・。
株式会社安愚楽牧場
民事再生に関する会社のQ&Aで、和牛オーナーの権利の扱いにふれています。
「オーナー様の出資金(正確には,中途解約の場合は「清算金」,期間満了の場合は「再売買代金」です。)の返還請求権は,民事再生手続上の再生債権となり,和牛の所有権はその再生債権を担保する財産として取り扱われる見込みです。そのため,オーナー様へのご返済は,まず和牛を順次売却して得られた資金をもって行い,不足する部分は再生計画に基づいて弁済されることになります。」
会計処理や決算に関する記述もあります。
「Q 安愚楽牧場の平成23年3月末の決算は黒字だったはずですが,あれは粉飾だったのですか?
A いいえ。税理士のチェックを経た適法な決算です。
安愚楽牧場の決算では,和牛の飼養期間が満了したり解約がされたりしない限り出資金を返還する必要がないという取扱いになっていた関係で,オーナー様への返還義務が負債として計上されない仕組みになっていました。そのような処理は,税法上適法とされております。破綻直前に解約が急増し,また,再生手続上,未解約のオーナー様に対する出資金返還債務も負債としてカウントしました。その結果,今回,平成23年3月末決算よりも大幅に負債が増加することになったものです。」
オフバランス処理だったようです。また、税理士の関与のみで、会計士が関与していないとすれば(会計士業界にとって)不幸中の幸いでしょう。
安愚楽牧場:「出資金全額返せぬ」HPで説明…再生法申請(毎日)
安愚楽牧場に出資者激怒!「詐欺だ」(夕刊フジ)
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