日本公認会計士協会は、会員宛て文書「監査人の交代理由等の開示の充実に係る日本公認会計士協会の取組について」を、2017年6月30日に公表しました。
会計監査の在り方に関する懇談会の提言で、監査人の交代時における開示の充実が求められていることを踏まえ、協会が実行すべき施策について検討して得られた結論です。
協会として新しい制度を設けたりはしないが、監査人の交代時における開示に関する既存の制度(金融商品取引法に基づく臨時報告書による開示及び証券取引所の有価証券上場規程に基づく適時開示)の運用改善をはかることにしたとのことです。
具体的には、まず、監査人の交代時における開示に関し、協会会員に以下の点に留意するよう求めています。
- 無限定適正意見を表明した後に交代する場合であっても、被監査会社が開示する交代理由等に対する監査人の意見がある場合には意見を表明すべきこと
- 被監査会社が開示する交代の理由等に対して監査人が意見を表明しない場合には、被監査会社はその旨及びその理由を開示することが求められていること
また、協会としては以下の施策を行います。
- 具体的な交代理由の適時な把握
- 交代に関する質問等の実施
- 品質管理レビューにおける交代理由に関する情報の活用
- 交代理由の概要についての定期的な公表
平成 26 年4月から平成 28 年3月に臨時報告書が提出された監査人交代(のべ216社)について、67 監査法人又は会計事務所を対象にアンケートを実施しています。
臨時報告書における監査人の意見付記は1社のみでしたが、アンケートによればそれぞれの交代の背景には表に出ない理由があるそうです。
「会社からの契約解除申入れ」か「監査人からの辞任申出」の区別では、実際は前任監査人からの申出であるのに、後任監査人は会社からの契約解除であるかのように理解しているケースが10件程度あるというのは、興味深い点です。後任に対する会社からの説明や、引き継ぎ時の前任監査人からの説明が、不正確な(うそである)場合があるということでしょう。