英国でビッグ4の分離論が高まり、非監査部門の売却などが行われているという記事。
「3月上旬、KPMGは英国の企業再生事業を米投資ファンドに売却すると発表。約550人の幹部職員や従業員が新会社に移る。同事業は最近では経営破綻した英老舗旅行会社、トーマス・クック・グループの清算を手がけたことで知られる。独立系の企業再生コンサルティングとして英最大級の会社が誕生する見通しだ。2月にはビッグ4のひとつ、デロイトも英企業再生部門の売却を決めた。
背景にあるのは英国で高まるビッグ4の分離論だ。監査法人を所管する英財務報告評議会(FRC)は20年7月、4大監査法人グループに対し、監査とそれ以外の運営分離を求める指針を出した。英競争当局の18年の調査ではビッグ4の売上高に占める監査報酬は2割程度にとどまり、大半を非監査事業で稼ぐ。コンサル部門に収益を頼る構造が監査事業の質に悪影響を及ぼしていると問題視されたのだ。
さらに英政府は3月18日、「監査と企業統治の信頼回復」と題する監査市場の改革案を公表した。」
日本のビッグ4については...
「国内では非監査事業の分離については慎重論が目立つ。「そもそも日本では監査法人が可能な非監査業務は限られている」(金融庁)。監査先企業に非監査業務を提供することは、独立性の観点から限定されている。
監査先以外に顧客がほぼ限定される日本でも、大手法人による非監査の収益比率はじわりと高まっている。大手4社のうち10年前まで遡れる、PwCあらた監査法人を除く3法人の非監査業務の収入の割合は前期は23%。10年前の16%より大きい。」
増加傾向にあるとはいえ、監査法人における非監査業務の割合は小さいから、大きな問題はないという認識は間違っています。たしかに、ビッグ4の監査法人自体がやっている非監査業務の割合は小さいかもしれませんが、ビッグ4のブランドにぶら下がっている会社・法人を合算すれば、非監査業務の割合はかなり高いはずです。たとえば、デロイトトーマツが受注した持続化給付金の事業だけでも数百億円の規模ですから、非監査の方が監査部門の売上を超えているビッグ4事務所もあるのではないでしょうか。コンサル会社や税理士法人、弁護士法人などは、監査法人と違って金融庁の監督外なので、そういう誤った認識になってしまうのでしょう。
もちろん、監査法人は別法人にはなっているので、形式的には「運営分離」です。しかし、実態としては一体化が進んでいるのではないでしょうか。例えば、各ビッグ4事務所のウェブサイトをみれば、監査法人が、たくさんあるサービスラインのひとつにすぎないということがわかります。
先日朝日が取り上げていた中小監査法人の報酬依存度の問題にもふれています。
「顧客企業とのなれ合いを排し、監査法人の独立性をどう保つかという課題は中小監査法人にも重くのしかかる。
「長年にわたって数社の上場会社を主な被監査会社としており、報酬依存度が高くなっている」。2月下旬、公認会計士・監査審査会は金融庁に対し、中堅の監査法人原会計事務所の行政処分などを講じるように勧告した。倫理規則に違反する「特別監査報酬」の受領や「贈答」をしていることなども不適切と判断した。」
監査市場の寡占化については...
「英国では主要上場350社の監査の97%を4社が占め、日本でもビッグ4の監査業務シェアは日経平均株価を構成する225社の96%を占める。米国のS&P500種株価指数を構成する企業では99%に達する。」
東芝巨額粉飾事件後、「「ビッグ4に次ぐ規模の監査法人を育てる『ビッグ4プラス2』機運が金融庁で高まった」(業界関係者)」とのことですが、準大手と大手の差はまだまだ大きいようです。
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