東芝が、ウエスチングハウス(WH)による原子力サービス会社の買収を巡り、訴訟を提起されたという記事。(CB&Iは米エンジニアリング大手)
「WHはCB&Iから、原子力サービスを手掛けているCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W、ノースカロライナ州)を買収。昨年末に買収手続きを完了している。その後、WHはCB&IとS&Wの資本や負債、のれんなどの金額確定手続きを進めていた。
WHは同買収によって米国での原発プロジェクトを一元的に管理・実行する体制を構築するほか、S&Wが持つ廃炉サービスなどのノウハウを取り込む狙いだった。今回の訴訟は買収後に資産などの算定額を決める手続きの無効を求めるもので、買収自体の効力を争うものではないという。」
東芝のプレスリリース。買収は昨年でしたが、買収価格がまだ確定していなかったようです。
ウェスチングハウス社のCB&Iストーン&ウェブスター社買収完了プロセスに関するCB&I社からの訴訟提起について
「株式購入契約では、買収完了後のプロセスとして、価格調整を行う手続を規定しています。これに従いWECは、新会社の運転資本に関する算定結果を含む書面をCB&I社に提出していました。
一方、2016年7月21日にCB&Iは株式購入契約において合意していた法的手続きを無効にする申し立てをデラウエア州公衡平法裁判所に行いました。」
財務内容を詳しく調べてみたら、問題が見つかり、その分の価格調整をやろうとして、相手の会社から逆襲されたというようなことでしょうか。
東芝のプレスリリースには、WH社の発表文へのリンクがついていますが、それをみてもあまり詳しくは書いていません。
WESTINGHOUSE GENERAL COUNSEL ISSUES STATEMENT ON CB&I LEGAL PROCEEDING
On July 21, 2016, CB&I initiated a legal proceeding against Westinghouse in Delaware Chancery Court with respect to the post-closing reconciliation process.
東芝---大幅続落、米国での提訴を引き続き警戒視か/日本株(ロイター)
「UBS証券では、どちらの主張が正しいかは不透明であるが、仮に、東芝決算がこの問題となっている20億ドルの取得を前提に公表されており、敗訴となった場合は、減損処理が新たに必要となるため、3月末の株主資本3289億円は心許ないと指摘。」
財務内容に問題があるのに当初予定どおりの金額を支払わなければならないとすれば、損失が発生することになるのでしょう。
東芝の2016年3月期有報の連結財務諸表注記28では、暫定的な金額で決めた部分があることを述べています(以下、注記の一部抜粋)。それまで工事を一緒にやってきた会社なので、それまでの取引による債権債務の処理がややこしいのかもしれません。
「当社は、ASC 805に基づき、取得金額の配分を実施していますが、当有価証券報告書提出日現在では完了していません。なお、上記株式取得契約において、米国で建設中の上記プロジェクトに対するCB&I社からWECへの継続的な機器供給等に関して、完工時及び一定のマイルストーン達成時等にWECからCB&I社への支払が予定されていますが、これらのうち繰延払い対価の現在価値である約145百万米ドルを取得金額としています。また、この金額のうち、WECとS&W社の間にあったクレームの解消に係る暫定的な公正価値の約30百万ドルを差し引いた結果、当有価証券報告書提出日現在において暫定的に見積っている取得金額を約115百万米ドルとしています。契約に基づくこれらの取得金額は精査中であるため、今後も変動する可能性があります。」
のれんの注記でもふれています。取得価額が変われば、のれんの減損金額も変わることになります。
「注記28.にて開示のとおり、当連結会計年度においてCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社の取得価額の配分を実施しているため、当減損損失に係る会計処理は当有価証券報告書提出日現在における最善の見積りに基づき行っています。」
東芝、米原発で電力会社と訴訟合戦の泥仕合
新事実が米国の裁判記録で明らかに(東洋経済)
この東洋経済の記事によれば、東芝は他にも米国で訴訟を抱えているようですが、有報を見ても、具体的な開示はなされていないようです(見落としているかもしれませんが)。
「東芝の子会社で原子力発電所を手がける米ウエスチングハウス(WH)が、米国の電力会社と原発の建設を巡り、訴訟合戦をしている――。今回、米国の裁判記録を基に、新たな事実が東洋経済の取材で明らかになった。」
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