老舗化学メーカーのトクヤマが、マレーシアの大型投資で巨額損失を計上した件を取り上げた記事。ファンドの支援を受けるところまで、追い込まれているそうです。
「半導体向け多結晶シリコンにおける世界三大メーカーの一社であるトクヤマ。創業98年、老舗優良化学メーカーだったはずの同社が6月27日、大手銀行系の企業再生ファンドから200億円を調達した。
2度の巨額な特別損失の計上が響き、2013年度まで2296億円あった自己資本が、15年度に514億円まで激減したからだ。
かつて連結、単体共に50%以上あった自己資本比率も、15年度には連結で12.8%、単体で8.7%まで急落。過小資本を解消するべくファンドに支援を仰いだ。この応急措置と利益の積み上げで、連結の自己資本比率は16年度に22%まで回復する見込みだ...。」
基本的には、市況の悪化を予想しきれなかった投資判断のミスということになりますが、海外企業の過当競争に巻き込まれてしまった面もあるようです(そういう分野に過大投資してしまったこと自体が判断ミスなのですが)。
「売上高3000億円規模にして投資額は第1期、第2期合わせ実に約2000億円。959億円の手元キャッシュ(09年度)に後押しされた、まさに社運を懸けた一大プロジェクトといえた。」
「韓国、中国勢が設備を増強したため、2期の建設を決定した11年5月に、価格は当初想定した50~60ドル程度まで下落した。ただトクヤマは競合の規模や設備の稼働状況から、30ドル台半ばに市場は収斂すると踏んでいた。2期建設も、その辺りまで価格が落ちても、大規模生産すれば自身の設備は採算ラインを上回るとみて決定したのだ。中止となれば違約金の支払いを含め数百億円の損失が生じる状況だったとはいえ、トクヤマは自身の読みと能力を信じた。
現実は甘くなかった。数の多い中国メーカーは中国の地方政府の肝いりで多結晶シリコン事業を展開している。たとえ不採算でも撤退することはなく、供給過剰で価格は30ドル台半ばをあっさり割り込んでいった...。」
ファンドからの出資に関するプレスリリース。
第三者割当による種類株式の発行、定款の一部変更、資本金、資本準備金及び利益準備金の額の減少、剰余金の処分ならびに株式の発行と同時の資本金及び資本準備金の額の減少に関するお知らせ(2016年5月)(PDFファイル)
「当社は、平成 24 年5月に『成長を加速する進化』をキーワードとした3ヶ年計画を策定し、成長を加速する仕組みの構築、課題に取り組んでまいりました。その中で戦略的成長事業の強化として、トクヤママレーシアでの多結晶シリコン事業の拡大を掲げ推進してまいりましたが、半導体向けグレードでは、品質・生産安定性が確保出来なかったことにより、また太陽電池向けグレードでは、多結晶シリコン市況の下落による事業環境の悪化に伴い、投資回収性を検討した結果それぞれ多額の減損損失を計上致しました。その結果、平成 27 年3月期、平成 28 年3月期の連結業績において 884億円、1,257 億円の特別損失を計上致しました。これにより、連結純資産は 2,364 億円(平成 26 年3月期)から 602 億円(平成 28 年3月期)まで大幅に減少し、当社の連結自己資本比率は、平成 27 年3月期 29.3%、平成 28 年3月期 12.8%まで低下致しました。当社と長く親密にお取引頂いている取引先等ステークホルダーから早期に信頼の回復を獲得するためには、毀損した自己資本を増強し、財務基盤を強化することが急務であると考えております。」
監査人も交代しています。地元中小監査法人から準大手への変更です。前任監査人も、巨額の減損処理をやらせたわけですから、監査人として役割を果たしたのだと思われますが、海外事業まで十分監査するためには、大きな事務所の方がよいのでしょう。
会計監査人の異動に関するお知らせ(2016年5月)(PDFファイル)
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