会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

中小監査人シェア、2割超に上昇 大手寡占が転機(日経より)

中小監査人シェア、2割超に上昇 大手寡占が転機
監査の質、確保に課題も
(記事冒頭のみ)

上場企業の会計監査において、中小監査法人のシェアが上昇しているという記事。

金融庁の公認会計士・監査審査会の「令和3年版モニタリングレポート」(7月公表)の情報に、その後の監査人交代の開示なども加えて、書いているようです。

「金融庁の公認会計士・監査審査会によると、上場企業の監査人交代は3年連続で増えた。内訳は大手から中小への変更が87件、大手から準大手への変更が42件と続く。この2つで全体の6割を占めた。」

上場企業監査のシェアは、20年度(20年4月~21年3月)開示資料ベースで大手が前年同期比2ポイント減の67.5%。一方、準大手は0.3ポイント増の13.6%、中小は1.7ポイント増の18.9%だった。同シェアは3月期企業であれば20年6月提出の有価証券報告書が対象で、19年6月総会までの交代が反映されている。未反映である足元の交代も踏まえると、21年6月末段階で中小シェアは初めて2割を超えたとみられる。」

「大手4法人の寡占が崩れつつある」といっていますが、監査報酬や監査先の時価総額などで比較すれば、寡占状況は揺らいでいないと思います。

具体的な交代例としては、ライトアップと、一蔵を挙げています。いずれも報酬が理由です。

「企業からは「大手監査法人から報酬の2割増額の提案があった」などの声も聞かれる。」

「日本の監査報酬は世界的に低いとされ、日本法人に対し提携する海外大手会計事務所からの採算改善圧力も増している。」

中小事務所の監査の質に関するコメントも...

「中小の存在感が高まる中、大手から中小に移行した際に、監査の質が維持できるかが課題となる。日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「企業実態に適した監査人の異動は企業、監査法人の双方にとって良いことだ」としたうえで、「小規模監査法人は人的資源に限界があり、無理に契約しすぎず引受数を管理する必要がある」と話す。

青山学院大学の八田進二名誉教授は「中小法人は上位10~20法人とそれ以外とでリソースの差が大きい」と指摘する。上場企業監査には会計士協会への登録が必要で一定の監査品質が求められるが、八田教授は「制度の運用を厳格にすべきだ」と語る。」

ということで、会計士協会会長は、中小への交代は一応プラス評価のようです。

また、たしかに、中小といっても、常勤メンバーが数十人いる(パートナーも十数人いる)事務所もあれば、パートナーが最低の5人+αしかおらず、しかも非常勤の割合が多いという事務所まであるので、一概に質の善し悪しはいえないのでしょう。

リソースに見合ったクライアントしか契約しない、ましてや金融庁や協会ににらまれる可能性が高い期中交代やわけあり会社の契約は避けるとなると、企業からすれば、いざというときの駆け込み寺がなくなるわけですが、それは仕方がないのでしょう。

中小監査法人といえば、現在、報酬依存度規制強化への対応が課題になっていますが、残念ながら、この日経記事では全くふれていません。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「会計監査・保証業務」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事