会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日本IBMグループ、4千億円申告漏れ 節税争う構え

日本IBMグループ、4千億円申告漏れ 節税争う構え

「日本アイ・ビー・エム」の企業グループが東京国税局の税務調査を受け、4千億円超の申告漏れを指摘されていたという記事。

「複数のIBMや業界関係者らによると、日本IBMの親会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(同区、APH)は02年、米IBMから資金を受け取り、同社が所有していた日本IBMの非上場の全株式(約2兆円相当)を購入。その後、日本IBMに取得株の一部を複数回にわたり売却した。この一連の自社株取引では、親会社APHが、子会社日本IBM株を取得した時より安値で売ったことになり、その差額は税務申告でAPHの赤字に区分されるという。この結果、APHは08年12月期までの5年間で計4千億円以上の赤字を抱えたとみなされることになった。さらに、APHと日本IBMなど企業グループが08年ごろから連結納税制度を導入したため、同年は日本IBMの黒字がAPHの赤字と相殺されたという。」

なぜこのようなスキームで節税(脱税?)できるのか、よく理解はできていないのですが、関係しそうなポイントを思いつくままに挙げてみます。

・最終的な親会社であるアメリカのIBMからみると、日本IBMに対する持分はずっと100%のままであり、グループの外部に日本IBMに対する持分は全く移っていない(グループ内で取引が完結しており、米国IBMの財務会計上は全く影響がない?)。

・連結納税制度では、子会社の欠損金は使えないのに対し、親会社の繰越欠損金は使える。

・日本IBM株式の売買取引は、「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」にとっては損益の発生する取引だが、日本IBMからすると、資本取引なので、安く取得したとしても、それによる利益は永久に実現しない(したがって課税もされない?)。

・「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」で損失が出るからくりがよくわからない。日本IBM株式を米国IBMから時価で取得し、時価で日本IBMに売却したとすれば、必ず損失が出るとは限らないはず。米国IBMから時価よりも高く買い、日本IBMに時価よりも低い金額で売却すれば、単なる寄付金課税の問題になりますが、寄付金で指摘されているわけではないということは、取引価格自体は適正であったのか。

いずれにしても、「自己株式取引」や「連結納税」の税務上の取り扱いに何らかの抜け道があり、それをうまく使ったのでしょう。

ちなみに、3月19日の日刊ゲンダイによれば、このスキームに使われた「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」は、「大手監査法人の傘下で99年に設立されたペーパー法人」とのことです。大手監査法人の関係会社やネットワークファームで、危ない節税スキームにかかわるようなところはないとは思いますが・・・。

当サイトの関連記事
その2

(補足)
このスキームに関してコメントをいただきました。
http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/3837.html#comment15415

コメントの中で紹介のあった22年度税制改正について調べてみましたが、以下の解説がありました。
http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/tax/201002_2/02.html
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