(まったく進捗がないという話なのでニュースといえるのかどうかわかりませんが)東芝の監査はPwCあらた監査法人との協議が難航しているという記事。(中国新聞の記事とほぼ同じなので通信社配信のものなのでしょう。)
「東芝が来月10日に提出期限を延期した有価証券報告書の2017年3月期決算をめぐり、PwCあらた監査法人との協議が引き続き難航している。決算が適正という「お墨付き」がない異例の状態で提出する可能性も出てきた。
16年4~12月期は「意見不表明」だった。意見をなかなか出さないPwCあらたには「結論を表明するのが本来果たすべき役割だ」(日本公認会計士協会の関根愛子会長)といった指摘が相次ぎ、包囲網が狭まっている。」
「PwCあらたはWHの巨額損失が16年末に突然発表されたことに着目し、東芝が早くから損失を知っていたのではないかと疑っている。資産や負債の分野は、WHが破綻で東芝の連結決算の対象から切り離されたため問題ないが、損失認識時期によって変わってくる損益の分野をどう評価するかが焦点となっている。
東芝は「隠蔽(いんぺい)などの疑念を晴らすのに必要な材料は出した」(幹部)とするが、あらたの提携先の米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は慎重姿勢を崩さず、現時点で適正意見を得られるめどは立っていない。」
いくら協会やそのバックにいると思われる金融庁があらたを包囲しても、カギを握っているのはWHを監査している米PwCでしょうから、あまり意味はなさそうです。(東芝が知っていたかどうかは、さしあたり関係ありません。WHが各年度で正しい決算を行っていたのかが問題です。)
米PwCとしても、WHのチャプター11申請(それに伴い会社幹部も交代)と、監査人交代(EY→PwC)という2つの壁の向こう側にさかのぼって調べなければならないわけですから、慎重になるのも当然でしょう。さらには、途中にS&W社(問題となっている建設会社)の買収による工事体制の大きな変更があり、単純に工事原価や発注者からの請負金に関する過年度からの見積りの推移をたどってチェックしていけばすむということではないので、なおさら簡単ではありません。
記事によれば、会社は「疑念を晴らすのに必要な材料は出した」といっているようですが、それは、実際の決算数値に関する材料の話なのでしょうか、それとも内部統制に関する材料の話なのでしょうか。
実際の決算数値(監査人からすれば実証手続の問題)に関しては、最終的には各年度の取引やさまざまな見積りとそれらに基づく会計処理の根拠をたしかめられれば意見を表明できるはずです。それができないということは、やはり突然の巨額損失の発生に関して、不明瞭な点があるのかもしれません。
他方、内部統制(主に東芝本体というよりWHにおける内部統制)に関しては、重要な不備のある内部統制を経由して出てきた情報だから信用できない(実証手続はやってもムダ、やったとしても監査証拠として不十分)とPwCが判断しているのだとしたら、水掛け論に陥っているおそれもあり、解決は難しいかもしれません。
いずれにしても、あと1週間ほどで結論が出るのでしょう。
先日は東芝の新旧監査人が対立しているという報道もありました。
↓
当サイトの関連記事
最近の「会計監査・保証業務」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事