日本公認会計士協会は、プレスリリース「十分な期末監査期間の確保について」と会長声明「十分な期末監査期間の確保について」を、2017年12月8日に公表しました。
2つの文書の関係が非常に紛らわしいのですが、まず、プレスリリースの方は、十分な期末監査期間の確保に関する会長声明と、平成29年3月期決算会社を対象にした期末監査期間に関するアンケート調査の概要等を公表したということとそれらのポイントを伝える趣旨のもののようです。
肝心の会長声明の方は、結論として、会計士に対して以下のような要請を行っています。
「当協会は、 監査業務を実施する公認会計士に対して、 十分な期末監査期間の確保に関し、 これまでの要請を踏まえて必要な対応を被監査会社に求めることを改めて要請します。」
またアンケート調査についてもふれています。
「当協会の調査 (平成29年3月期) によれば、監査意見を形成するに足る基礎は得られているものの、 将来的に監査品質に影響を及ぼしかねない時間的な制約を受けている状況にあると考えられます。」
アンケートについては「期末監査期間に関するアンケート調査結果の概要等の公表について」という資料で、概要がわかります。
「3月決算会社の期末監査の日程は非常に過密となっており、それが監査従事者の過重労働を招き、ひいては監査品質の維持が難しくなっているのではないかと強く懸念されます。このような認識に基づき、当協会は、期末監査等の現場の実態を把握するために、11 の監査法人の協力のもとに、上場会社 200 社の監査業務についてアンケートを実施いたしました。その結果、2017 年3月決算上場会社の期末監査に関して、回答者の 90%以上が期末監査の過密スケジュールが原因で監査従事者の負担が重いと感じるとともに、監査品質を維持する観点から期末日後の監査期間の延長を望んでいることが読み取れます。また本調査では、監査現場において、このような期末監査期間の逼迫状況を監査役等へ十分に伝えられている割合は全体の 19%に過ぎないという現状が明らかになっています。 」
アンケートの詳細は、「期末監査期間に関するアンケート調査結果の概要等(中間取りまとめ)」というパワポ資料に記載されています。
なぜ今頃、こういう会長声明を出したかというと、来年上半期の監査日程が今の時期に決まるということもあるのでしょうが、おそらく、11日に開催予定のこちらの会議をターゲットにしたのでしょう。
↓
金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回)の開催について(金融庁)
(補足)
日経新聞に小さな記事が出ました。
関根会計協会長、監査期間の延長「企業に要請」(日経)
「日本公認会計士協会の関根愛子会長は8日開いた記者会見で、決算期末の監査期間の延長を企業に求める考えを示した。期末の監査期間は平均2週間前後で「監査にかける時間が少ない」と主張。」
「監査期間の延長を企業に求める」とありますが、会長声明を見る限りでは、協会が直接企業に要請しているのではありません。あくまで、会計士に対して、必要な対応を被監査会社に求めるよう要請しています。
そんなに遠慮しないで、協会から直接企業に呼びかける形の方が、よりアピールするのでは。
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