船井電機、不透明な手数料支出か 脱毛サロン売却、医療法人買収で―前社長「正当な助言料」
倒産した船井電機が、あやしい手数料を支払っていた疑惑があるという記事。支払い自体は、前社長も認めています。
「10月に破産開始決定を受けた家電メーカー「船井電機」(大阪府大東市)が、2021年5月に前社長の上田智一氏が代表を務める出版会社に買収されて以降、脱毛サロンの売却や医療法人買収を巡って、それぞれ数億円の不透明な手数料支出をしていた疑いがあることが20日、分かった。」
大手脱毛サロン運営会社「ミュゼプラチナム」を買収後、多額の資金が流出し、資金繰り難に陥ったそうです。
「資金繰りが悪化したため、24年3月にミュゼ社株を保有する合同会社を100万円で広告代理店に売却。この際、船井側からアドバイザリー料として群馬県の会社に約2億円を支出したという。上田氏はこの2億円が300億円の一部と認めた上で、「船井電機から船井HDに貸し付けて支払った」と説明した。船井電機の投融資委員会の承認の有無については「必要か分からない」とし、「稟議(りんぎ)は経ている」と主張した。」
前社長は、ある医療法人の経営権を取得していますが、その際にも、多額の支出があったそうです。ただし、前社長は関連を否定しているようです。
「上田氏は医療脱毛を手掛ける目的で、東京都荒川区の医療法人の経営権も取得。23年11月に上田氏の妻が理事長に就任し、上田氏も理事となった。
同氏によると、この際も船井電機から船井HDに3億円以上を貸し付け、東京都中央区の医療法人にアドバイザリー料として、同額を支出した。上田氏は「(荒川区の医療法人には)一銭も渡っておらず、問題の無い支出だ」と説明している。」
船井電機だけでなく、持株会社である船井電機HDもいっしょに調べないと、資金の流れはつかめないのでしょう。
船井電機の経営権を「1円譲渡」 破産直前、社員には知らされず(朝日)(記事の一部のみ)
「9月27日、上田氏は船井電機や親会社の株式を集約した特別目的会社の全株式を「EFI株式ファンド」(東京都)に売却して社長を辞任した。朝日新聞が入手した契約資料や関係者の話によると、この取引でファンド側が支払った対価は1円だった。
上田氏は朝日新聞の取材に対し、1円での売却について「テレビ事業売却のめどがついたタイミングで総合的に判断した。自分を利するために結んだ契約ではない」と説明した。
ファンドとの契約にはこのほか、上田氏や上田氏が所有する別会社が船井側から借りた約11.7億円を返済しなくていいことや、上田氏の役員在任中の責任を追及しないことも含まれていた。また、条件次第で上田氏が1円で全株式を買い戻せることも盛り込まれていた。」
この契約により、前社長は船井からの借金を踏み倒すことができるということになります。1円で買収できるファンドの方はそれでよいのかもしれませんが、船井電機からすれば、大損害です。
前社長は、いろいろなマスコミに出まくっているようです。その一例。
【独自】船井電機前社長「私の口から説明を」不自然1円譲渡の理由 単独インタビュー(テレビ朝日)
「上田氏によると、子会社の金を元役員が不正に使い込んでいる痕跡を発見し、警察に刑事告訴して実態解明に動いていた矢先だったといいます。」
「上田前社長の代理人・加藤博太郎弁護士は次のように述べます。
加藤弁護士
「(金を使い込んだ)他の役員の責任追及、刑事責任の追及を行った時に、(創業者一族の)解任された取締役が会社を破産させてしまったというところで、不正の追及をさせないために破産させたのではないかということが、強く疑われているというところであります」」
破産になれば、裁判所が関与するわけであり、不正の追及をさせないために、破産させたというのは、ちょっと無理があるように思えますが...。
「では、会社を1円で売却した理由については…。
上田氏
「(Q.1円譲渡は不自然では?)今回、私が船井電機の代表だった間に、約68億円の個人保証をしています。ちゃんと68億円の保証も(買い主に)引き受けてもらうと。であるがゆえに、1円ですということをお伝えしたかったなと思います」
「(Q.実質1円ではない?)おっしゃる通りです。怪しいということは当てはまらない」
上田氏によると、船井電機の借金や上田氏が個人で保証していた債務も引き継ぐ約束をしたうえでの売却だったと話しました。ただ、その契約もまだ履行されていない段階だと主張します。
上田氏
「今の段階では、1円で会社を買い手(ファンド)が持って行っただけと。個人保証が外れていないという状況になっています」
加藤弁護士
「社長は全くもうかってなくて、1円で会社を取られちゃったという話」」
これも朝日の記事と矛盾します。朝日記事によれば、前社長の債務を免除するのは、買い手ではなく、船井電機です。
前社長の話のとおりだとしても、契約どおりにことが進めば、前社長は、約68億円の個人保証がなくなるわけですから、自分だけ巨額の利益を得て逃げようとしたという点はたしかです(「1円で会社を取られちゃったという話」にはならないはずだった)。
「船井電機」倒産の暗部/いわく付き医療法人「成守会」に溶けた巨額マネー(FACTA)(記事冒頭のみ)
会計士も登場します。
「今から1年余り前の2023年11月13日、東京・東日暮里の医療法人「成守会」で突然の理事長交代劇があった。外部からやって来た新理事長の名は上田佳恵氏――。船井電機が破産に至る原因を作った張本人、上田智一前社長の妻である。上田氏本人も常務理事に就任。同時に理事へと名を連ねた公認会計士の中村肇氏も、船井電機や、その経営混迷の元凶となった脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の買収に深く関与した1人だ。」