取材で足を踏み入れたことのある宿もありましたが
建築・意匠をテーマに見て回ったことはなく、なかなか興味深い経験でした。
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正直、資料があれば取材に行かずとも“それなりに”原稿を書くことはできますが、
やはり現場に行くのと資料だけでは、受ける印象も原稿もかなり違ってくるはずです。
私が取材で最も大切に考えていることは、「感じ方」や「印象」。
実際にその空間に足を運んで、佇んでみて、説明やうんちくをおさえながら
自分が何をどう感じたかをプラスすることで、その文章を読んだ人が
そこに行ってみたくなるような、何かを盛り込めればと思っています。
ちなみに昨日回った3軒で自分なりにまとめたキーワードは
・同じ宿は二度と再び造れない全てがアンティークの宿
・オーナーの遊び心が形になった“サプライズ”が随所に散りばめられた宿
・角(カド)のない柔らかなフォルムとリズミカルな色遣いで別世界に誘う宿
これらは原稿作成する際のキーワードでもあります。
ちなみに上の画像は、明治初期に完成した3階建て擬洋風建築の貴賓室天井に描かれた絵画。
1人2枚ずつ24人が48枚の絵を描いたそうで、絵の主題や色遣いなど実にさまざまで圧巻の一語。
流麗な三条実美の書「紅塵飛不到」も掛けられています。
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こちらは柱と襖のカタチにご注目。
ヤマザクラの一本柱と襖が隙間なく閉まるように、襖を柱のカーブに合わせて削って造られているのです。
大工仕事の緻密さとでもいいましょうか、ここまでするのねと感心するばかりです。
ちなみに柱の左側は、真っすくな角材が組まれており襖も直線でした。
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こちらは「外国人専用宿」として発展した宿の一室。
仕切り壁のアーチやシャンデリアなど洋風な雰囲気の中に、
欄間やお寺でよくみられるような「火灯(花頭)窓」が取り入れられた斬新?
というかユニークというか、なんとも不思議なお部屋です。
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こちらは、オーナーの遊び心=ゲストへのサプライズで造られた彫り物。
猿と蛇のにらみ合いが彫られています。猿の後ろに実は食べ物があるそうで、
それで取り合いになっているとか。
近寄って見るとわかりますが、猿の毛並みや蛇の鱗が実に細かく表現されているのが驚きです。
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これは何を意図して撮ったの?と思われるかもしれませんが、
見ての通りガラスです。昔はガラスも手作りの時代。
ガラスの厚みや表面の凸凹などが、ガラス越しの景色を見ることでとてもよくわかります。
向かいの建物の窓や屋根など、直線が歪んでいるのを見ると、このガラスの質感が感じられます。
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こちらは30年以上前に建てられた、あるホテルの階段です。階段一段・一段、手すりの形とライン、
階段全体の形などなど、角張ったところが全くないんです。
手すりの片側の板のデザインもおしゃれです。
これだけで芸術作品のような、どこか海外の美術館の一部のようにも感じました。
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こちらは上記と同じホテルのレストラン内部。
ブルーの椅子に良く合う、波のようなおしゃれな絨毯のデザインがこれまた素敵です。
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そのレストランの吹き抜けの天井には、どこかヨーロッパでしょうか、
3人の貴婦人のような女性の顔をモチーフにデザインされたシャンデリアが。
羽飾りも凝ってます。ちょっとラリック風にも見えなくもない?
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もともとボールルーム(ダンスホール)として造られたホールの朱色の絨毯。
模様はレストランの絨毯と同じデザイナーのものでしょう(同じではないけれど一目でわかる)。
絨毯からいきなり白い壁になるのではなく、ポルトガルを思わせるような
青と白の波打つタイルを何段も。なんか凝ってますよねー。
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ラス1。これは建築ではないのですけど、
撮影で入らせてもらったお部屋のテーブルの上にコレ置かれているのに気付き、
思わず撮りたくなってしまったテルテル坊主。
雨が降りそうなときはスタッフ手作りのテルテル坊主をメッセージとともに
こうして置いておくのだそうです。
最近めっきり見ないので、妙に新鮮&懐かしい気持ちを思い出させてくれました。
そんなこんなで1日3軒回りPart1は終了。
もう少し軽い感じで取材でできるテーマのときは、1日5か所、7か所こなすこともありますが、
今回は比較的深いテーマで&1つの宿で10か所近く取材するので、
あまり多く見過ぎると集中力が低下してくるんですよね・・・。
そういう意味で今回は1日3軒までが限界かも(汗)
そんなこんなで来週、Part2の宿3軒+美術館1軒を取材して参ります。
雨降らないといいけど!