「くりぼう」です。松の内もとうに明けて、センター試験、小寒大寒まで過ぎてしまい、すでに新年の祝詞を申し上げるタイミングを逸しておりますが、改めまして、本年も本ブログをどうぞ宜しくお願い申し上げます。また、今月のように忙しさにかまけて投稿がなおざりにならないよう、投稿者には十分周知してまいります。
さて、冒頭に触れましたように、先日、大学入試センター試験が行われましたが、私も大学の教官(・・・という自覚はあまりないのですが・・・)として、試験監督者の重責を果たしてまいりました。私の担当は、県内の現役高校生が集まる試験場でした。割と高めに設計された教壇から張り詰めた教室を見渡せば、緊張感に包まれた40数名の初々しい高校生が、静かに試験開始の時を待っています。
「多分合格するだろうけど、力を出し切れなかったら不合格」という観測のもとで臨んだ、今から17年前の私の大学入試。そのプレッシャーたるや、いまだに年に数回は「勉強不足で答案が全く書けなくて絶望する(特に数学と物理)」という悪夢に苛まれる日々です。ですから、試験監督当日、教室に入るやいなや自分の高校時代の記憶が鮮やかに蘇ってきた、ということも、皆様が想像されるに難くないところでしょう。
若人たちの苦しみを痛いくらいに知る者として、彼らのためにしてあげられることはただ一つ。それは、公正・公平な試験環境を提供することをおいて他にはありません。
例えば、窓際だけにある暖房は試験中オフにして、教室の環境を均一にします。当然ですが、監督者は全員、朝のミーティングで時報に合わせて時計を秒単位で調整します。あと、何百もある机のガタツキは全て厚紙で補正済み。これらはほんの一例です。世間は入学試験での色々なトラブルをこれみよがしに叩きますが、実際に試験を運営する側の努力と心労は想像以上です。
受験という、すぐには努力が報われないかもしれない困難に立ち向かう高校生に、かつての自分の姿を投影していました。試験2日目、「サクラサク」の願いを込めてピンク色を帯びたネクタイを締めて監督業務にあたりましたが、誰もそんなことは気に留めていなかったでしょう。実は腕時計もピンク色だったのですが、これは、自分自身は秒針の付いた時計を持っておらず、娘の時計を借りたためです。問題冊子や解答用紙を配る際に、どう見ても似合っていない趣味の悪いピンクの時計がチラチラと覗いていたはずですが、これで少しはリラックスさせてあげられたかな。
試験中の鼻血が2名ほどありましたが、当然想定内。マニュアル通りに対応し、大過なく全日程を終えました。
やや難化した科目もちらほらあり、自己採点で表情を曇らせている受験生も多そうな気がしますが、苦しみを知った人間は優しくなれますし、必ず成長します。
しかし、光あれば影あり。我々も、苦しみの先に確かにあった喜びの裏で、その瞬間自らもまた、誰かを苦しめ、泣かせてきたという競争社会の真理を思い知らされます。医者稼業が生半可な気持ちで臨む仕事ではないことを、まだスタートラインに立ったばかり、自分の半分くらいしか生きていない彼らに諭されたような気がしたのでした。
ところで、今週末は医局恒例のスキー旅行です。受験生の話題の直後に、滑る、転ぶのスキーの話などもってのほかと思われるかもしれませんが、あいにく私は大雪時の雪かき用にスキーウェアを持っているだけで、実際はスキーもスノボもいたしません。宴会要員です。滑りも転びもしませんのでご安心ください。
今回に限り、大したオチも付けずに稿を終えたいと思います。