ラントレーニングは3回/週かな?/廃糖蜜はダイエットに効くか?

2013年12月11日 | Competitor Running
昨日はちゃんと走ったので、今日はついつい朝稽古をお休みしました。
考えてみるに、大阪城公園×3周を含むコース≒22kmを3回/週走っても、一ヶ月の走行距離は264kmになります。
仮に4回(火、木、土、日)/週走ったら352km/月走ることになります。

充分ですわ、という考えも頭をよぎりましたし…。

明日は走るつもりです。

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廃糖蜜(モラセス)を摂ると、代謝が促進されて痩せられるという"Competitor Running"誌の記事です。

マウスレベルの実験なのでまだまだ眉唾ものですが、無視するほどインチキでもなさそうです。

吾輩の記憶では、廃糖蜜は成城石井かウチの近所の激安(≒輸入食材が多い)スーパーで売っていたかと…。
気になる方、早めの買い占めはいかがでしょうか?。

廃糖蜜はダイエットに効くかも?
By Wendy Wilson, Dc. 06, 2013


 砂糖を製造する際に生じる副産物=廃糖蜜を摂ってみてはいかが?

 廃糖蜜(molasses extract)は甘いシロップ状の食品である。「ダイエットに効く食品」を考えた時、廃糖蜜が頭に浮かぶ人は殆どいない。しかし最近の研究で、どこの家の食品棚にも常備されている廃糖蜜がカロリーの吸収を阻害することが明らかとなった。これは、特に高脂肪食と一緒に摂取した時に顕著である。

 廃糖蜜とは、砂糖を製造する際に糖蜜から全ての糖質(とカロリー)を抽出した残余物である。廃糖蜜は低カロリーであり、糖質以外の栄養成分を豊富に含有する。特に、抗酸化物質の一種であるポリフェノールを多く含む。

 La Trobe大学(オーストラリア・メルボルン)のRichard Weisinger准教授(博士)らの研究グループは、マウスを材料に、高脂肪食と廃糖蜜の関係を調べた。実験では、以下の水準を設定した。
・対照群  :高脂肪食のみ投与
・グループ(a):(高脂肪食+廃糖蜜2%)を投与
・グループ(b):(高脂肪食+廃糖蜜4%)を投与
マウスが摂取する食事のエネルギー量は均一とし、実験は12週間継続して実施した。
実験結果は、体重/体脂肪量の減少量及び血中のレプチン(leptin、脂肪細胞が産生する内分泌物質)濃度について、グループ(b)>グループ(a)>対照群であった。

 この実験結果について、研究グループは以下のように考察している。つまり、廃糖蜜を摂取することにより、肝臓/脂肪細胞におけるエネルギー代謝が亢進しているというのである。これについては、遺伝子の発現量の増大によって裏付けられている。

 Weisinger准教授は「高脂肪食に廃糖蜜をプラスすることにより、カロリーの吸着量の低減→体重/体脂肪量の減少という現象が発生することが明らかとなった」と語る。研究グループでは、2014年にも人を対象とした臨床試験を行う予定である。


今日は朝稽古お休み/ダイエットに成功する秘訣

2013年12月09日 | Competitor Running
月曜日は恒例の朝稽古お休み日です。
明日は店休日なので、時間を気にせず走り込みたいものです。

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"Competitor Running"誌の記事です。

アメリカには珍しい、精神論でした。
自分に効く方法を見出す迄、諦めずに継続することが大切ってことでしょうね。

減量は、まずは心構えから
by Matt Fitzgerald, Dec. 05, 2013


 減量が成功するかしないかは、心掛け次第である

 減量について語る場合、大抵は何をどれ位食べれば良いのかが話題の中心になる。その次に取り上げられるのは、どのような運動をどれ位やれば良いのか、である。それらを話題にするのは間違いではない。

 かといって、問題の核心を突いてはいない。現実には、減量に成功した人が食べた物もやった運動は、それこそ千差万別である。減量に真剣に取り組んだ人が必ず行ったことの一つは、「心構えを変える」である。正確に言えば、減量に「真面目に取り組んだ」のである。なので、真剣に減量したいのであれば、まずは「正しい食べ方」だとか「やるべき運動」を探そうとしない方が良い。というのも、そのようなものは存在しないからである。その代わりに、真剣に減量に取り組むことを決心しよう。

 ではここで、アメリカで13.5kg以上を減量し、そしてその状態を一年以上維持することに成功した人達の記録を見てみよう。彼らが実践したことは有効な筈である。それは理屈ではなく、実績である。

 彼らの食事記録を見てみると、はっきり言ってバラバラである。低脂肪食を実践した人もいれば、低糖質ダイエットに取り組んだ人もいる。更には菜食主義者もいる、といった具合である。一方、彼らの大半に見られる特徴として、成功する迄に数回は減量に失敗した、ということが挙げられる。このような特徴、つまり食生活が多様であることと数回は減量に失敗したということ、を鑑みると、「減量方法には王道は無い」という事実が浮かび上がる。逆に言えば、各人の必要性/好み/性格/生活スタイルに適した減量方法に辿り着くには、ある程度の試行錯誤は必須である。

 このように食生活が決め手では無いならば、他に決め手は無いのだろうか?。実は、減量→体重維持の成功に最も有効だったのは「自己観察」、具体的には摂取した食事内容/カロリーを記録することであった。これは、それほど厳密に行う必要は無い。例えば「一日に野菜と果物を必ず食べた」とか「お菓子を一人前/日に制限した」という程度でも構わない。しかし、継続して実践することにより、食事の内容/量に注意を払うようになる。これと合わせて、1回/日は体重を測定するとなお良い。

 この「自己観察」について興味深いのは、それが単なる「観察」に過ぎない、という点である。事故の状態を観察すること自体には何も減量効果は無い。しかし、食事内容をどうこうするよりか、この自己観察の方が減量の成功に結びついているのは事実である。何故か?。この自己観察というのは、減量に真剣に取り組んでいることの象徴だからである。というのも、減量に真剣に取り組もうと考えなければ、自分の摂取したカロリー量や体重を毎日測定しようなんて思わない。逆に言えば、減量に真剣に取り組もうと思えば、食事内容や運動内容は自ずと適正化される。

 次のような場面を想像してもらいたい。あなたが旧友にばったりと会った時、どういう態度をとるだろうか?。答は2つに1つである。あなたと旧友が共に交友関係を深めたいと思っているのであれば、少なくともその場でお昼御飯を共にする約束を纏めるだろう。お店を決め、会う日を約束するだろう。逆に交友関係なんてどうでもよければ、口先だけで「今度会おうぜ!。電話してくれ!」と言って終えようとするだろう。勿論、電話なんかかかってこないに違いない。これは勿論、あなたが旧友と食事したくないことを示すのではない。ただ単に、普段の生活習慣を変えるほど旧友の存在が重要ではないことを示しただけである。

 減量も同じようなことである。減量したいかどうかが問題なのでは無い。減量する必要がある人は誰しも減量したいのである。問題は、どれだけ減量を真剣に考えているか、なのである。真剣である程、減量に成功するだろう。それだけ単純な話である。有効な減量方法を見出す迄には試行錯誤はつきものであるが、それを見出した後は、実践すれば良いだけである。「人間は食べた物で出来ている」は真理である。
 
 


今日はお休み/走られなくっても、出来る事はある

2013年12月06日 | Competitor Running
火~木と3日間連続ランだったので、今日はお休みしました。
明日から再開(予)です。

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故障中で走られない時にでも出来るトレーニングの紹介です。
もちろん?、"Competitor Running"誌の記事です。

Alter-Gは日本ではなかなかお目にかかれませんが(代理店のHPを見る限り、3施設にしか導入されてない)、水中ウォーキングなら近くの公営プールでも出来ますし(但し、ちょっとかっこ悪いか?)、スピニングはステーショナリーバイクで代用可能です。

なお、いずれのトレーニングも痛みを覚えたら中止して下さいね。

走られなくっても、出来る事はある
by Mario Fraioli, Aug. 20, 2013


 これらのトレーニング方法、故障中のランナーにも、そうでないランナーにも有効である

 故障中という理由でトレーニング出来ないこと程、気分が塞ぐことはない。それが特に医師から「故障が完治するまでランニング禁止」と言い渡された場合は、である。しかしながら、リハビリ中に何もしないのは最悪である。仮に走られない間でも、回復スピードを増す/体調を落とさない為には、何もしないのではなく、出来る限り早期に身体を動かす方が良い。

 リハビリ中でも身体能力を維持する/今後故障することを予防する為には、以下に述べる3つの最も効果的なトレーニング方法を検討してもらいたい。

(1)Alter-G反重力トレッドミル(リンクはこちら
 Alter-G反重力トレッドミルを利用すると、体重によって下半身に掛かる負荷を減らしながらラントレーニングを再現出来る。勿論、これを利用出来る機会は余り無い。しかし利用出来るのであれば、1~2回/週これを利用してトレーニングを行うことで、それまで気付いてきた身体能力を維持することは可能であり、またラントレーニングを可能な限り早期に再開出来る。

 筆者は2年前に恥骨結合を疲労骨折したが、その際の経験からすると、診断を受けた直後からAlter-G反重力トレッドミルを用いて2回/週トレーニングを再開した。最初は負荷が体重の65%となるレベルから開始し、10週間で負荷を体重の90%迄増やした。自転車トレーニング/体幹トレーニングと組み合わせながら、ランニングについてはインターバルトレーニング/テンポ走をAlter-G反重力トレッドミルを用いて行った結果、通常の症例に比べ4週間早く通常のラントレーニングを再開出来た。

 Alter-G反重力トレッドミルはリハビリ専用という訳ではない。Andrew Middleton(全米オリンピックマラソン予選出場)は、回復ランの際にAlter-Gを利用している。

 Middletonは「40km走やテンポ走(24km)の翌日は、身体がひどく疲れているのを感じる。過去の経験から、そのような場合はきつい練習をしない方が良いと理解している。なので、下肢に掛かる負荷が体重の90~93%となるように設定して Alter-G反重力トレッドミルを使う。そうすることで、有酸素運動能力を維持しつつ身体を休息に回復させている。ランニングに関して私が信じている大事な考えの一つは『身体を上手に回復させる程、その後でより良いランニングが出来る』である」と語る。

(2)水中ウォーキング

 一般に考えられるのとは少し違うが、プールはスイマー/ウォーターエアロビクスを楽しむ御老人の為だけのものではない。故障したランナーにも役立つ施設である。特に、地面から下肢に受ける衝撃が原因で故障したランナーにとっては、最も安全なクロストレーニング施設となり得る。

 過去にプールを5分間以上歩いた経験のあるランナーにとって、水中ウォーキングは優れた有酸素運動である一方で、とても退屈な運動であることは既にご存知なことであろう。水中ウォーキングの利点は身体に殆ど衝撃がかからないことであることから、故障中のランナーにとっては故障を悪化させる事を心配せずに、陸上での場合と同じ位強度の高いランニングをほぼ毎日実践することが可能となる。リハビリ中でも高強度のインターバルトレーニングが行えることで身体能力が維持出来るだけでなく、トレーニングを継続できるという点で心理的にも好影響を及ぼし得る。

 水中ウォーキングにおいては、(30秒~3分間歩行+歩行時間の半分の休息)を繰り返すという短時間インターバルが有効である。水自体が抵抗となることから、脚の切り返しは必然的に緩慢になるが、心拍数を上げるには膝を動かすことを意識すれば良い。ただそれでも、陸上を走る場合と比較して心拍数は上がり難いので、トレーニングのキツさは主観的感覚を優先した方が適切である。ビギナーは”Aqua Jogging Belt”(訳者注:負荷ベルトみたいなものです)を装着すれば良いだろう。ただ、そのようなものを装着しなくとも、水中ウォーキングは優れた全身運動である。

 水中ウォーキング以外でも、プールは利用出来る。筆者はプールの浅い部分で、ランニングフォームのチェックを行う。具体的には、ハイ・ニー/バット・キック/スキップ等を数セット行う。プールで行うと下肢に掛かる負荷が少なくて済む。水中ではどうしてもスピードが落ちるので、それぞれのメニューは15m程行えば十分である。但し、運動強度を維持すること、そしてフォームが崩れないように注意することは大切である。

(3)スピニング
 屋外でのサイクリングは楽しいが、ランニングに必要な身体能力とは余り関係が無い。故障中にも関わらずAlter-Gやプールを利用出来ない場合は、手持ちの自転車を固定ローラー台に取り付けて利用したり、フィットネスクラブのスピニング・レッスンに参加するのも有酸素運動能力を維持するには有効である。固定ローラー台を1時間以上回し続けるのは退屈だろうが、屋外でのサイクリングのように絶えずストップ&ゴーを強いられるよりかはずっと有益である。

 スピニングをラントレーニングの代わりとするには、ラントレーニングの1.5倍の時間が必要である。つまり、60分間の回復ラン≒90分間のスピニング(主観的強度は同じ程度とする)、となる。また、心拍数で評価すると(ランニングでの心拍数ースピニングでの心拍数≒15拍/分程度)である。この関係は、インターバルトレーニング/テンポ走といった高強度でのトレーニングでも通用する。例えば、3分間のインターバルトレーニングは4分30秒のスピニング(心拍数は共通)に相当するし、30分間のテンポ走は45分間のスピニング(やはり心拍数は共通)に相当する。
 
 筆者としては、固定ローラー台よりかはスピニングを推奨する。その理由は、スピニングの方が負荷を自由に設定/変更出来るからである。ランナーがスピニングを用いてトレーニングする際には、負荷を低~中強度とし、比較的高ケイデンス(90~100rpm)で実践するのが適切だろう。

 スピニングでは下肢に衝撃がかかり難いので故障箇所の回復が促進される。また、身体能力が維持されるので、ランニングを再開する際には故障前より強度の高いトレーニングが可能となる。筆者の例を挙げると、筆者は2008年のボストンマラソンの6週間前に後脛骨筋腱炎を発症し、リハビリを余儀なくされた。その際、身体能力の維持を目的として、スピニングを用いたインターバルトレーニング/テンポ走と同強度のトレーニングをそれぞれ1日おきに合計3週間実行した(その間はランニング無し)。その結果、ボストンマラソンを自己最高記録の約2分間増しで完走した。そのことから、スピニングは有益だと確信している。
 

ランニングを継続するコツ

2013年12月05日 | Competitor Running
…という、"Competitor Running"誌の記事です。

これをもっと早く知ってたらなぁ~、と痛感してます。
今日来られたYさまにも教えてあげたいです。
Yさま、見てられたら参考にして下さい。これは正しいです。

ランニングを継続するコツ
by Matt Fitzgerald, Dec. 02, 2013


 ランニングを楽しむコツは、ランニングという活動の楽しみ方を学習することである

 ランニングは恐らく、世界で最も優れたスポーツである。ランニングで身体能力は向上し、健康は増進し、そして体重は健康的なものとなる。それより何より、何時でも何処でも出来るのだ。ランナーに言わせると、ランニングはとても楽しいものである。しかし、多くのビギナーにとって、ランニングの最初の印象はそんなに良くない。というのも、彼らの大半はランニングに要する努力を経験し、それを不快と認識しがちだからである。事実、Running USA(訳者注:業界団体みたいです)が行った2011年の調査によると、ランニングをしていない人にとってランニングを始める際の最大の障害は、ランニングは「努力を要する」という認識だった。

 これは矛盾した状況である。ランニングを習慣にするにはランニングが楽しくなければならないが、ランニングが楽しくなければ習慣にならない。ランニング・ビギナーがその楽しさと利点を享受出来るようになるには、この矛盾した状況を何とかして解決しなければならない。以下にその解決方法を幾つか提案したい。

(1)自分のペースで走る

 専門家の多くは、一定の運動強度でトレーニングすることを推奨している。これは、ある目的を実現するには適切な運動強度でトレーニングすることが最も効果的だからである。しかしこのアプローチの欠点は、ビギナーの多くは他人に強制される運動強度でトレーニングすることを不快と思い、その結果トレーニングを継続しなくなる、ということである。

 ある調査によると、ビギナーは自分の好きな強度/ペースでトレーニングすれば、トレーニングをずっと楽しく感じるのだ。勿論、その際の強度/ペースは低く、身体能力を向上させるには時間がかかる。しかしトレーニングを続けるか止めるかという問題に比べれば、時間がかかるくらい大した問題では無い。

 他の調査によるとビギナーは、最初の運動体験が比較的楽しければ、そうでなかった(=最初の運動体験が悲惨だった)人に比べ、6ヶ月後でもその運動を継続する傾向がある。なので、何としてでも最初の運動体験を楽しいものにしてあげねばならない。ランニングに関して言えば、最初は自分の好きなペースで走るのが大切となる。決して、義務感とか他人に強制される考えに従って、自分の好きなペースより速く走ってはならないのだ。

(2)身体を馴らす

 ビギナーがランニングを止めてしまう理由は、ランニング自体がしんどいことだけではない。ランニング後に経験する痛みも理由の一つになる。いわゆる遅発痛は、それ迄慣れていない強度の運動をすることによって筋肉が損傷して発症する。これもまた矛盾した状況である。ある程度の強度に身体が馴れれば、遅発痛は発症し難くなる。しかしその強度に身体を馴らす過程で、遅発痛が発症するのは致し方ないのである。

 ということで、遅発痛はビギナーにとって避けては通れない関門である。ただ、その痛みを最小限にすることは可能である。つまり、ランニングを始めた初期に、筋肉をある程度の強度に「上手に馴らす」と良いのだ。最初に上手に馴らしておくと、筋肉は負荷/強度に対する耐性を獲得する。従って、最初のラントレーニングの際に、遅発痛が発生するだけの負荷をかけるのが重要となる。なお、必要以上に負荷をかけても痛みが増強するだけで、筋肉は耐性を獲得しないので注意が必要である。

 問題はどうやって「必要最低限の負荷をかける」かである。筆者は、最初はトレーニング時間を10分間とすることを推奨する。しかも、10分間連続して走るのでなく、走ったり休んだりすることを勧める。まず15~30秒間程ちょっと速めに走り、その後ゆっくり歩く。身体の調子が元に戻ったら、また15~30秒間程走り、その後ゆっくり歩く。これを10分間繰り返し、終了する。もうちょっと続けたいな、と思っても終えること。その時は体調が良くても、恐らく翌日には遅発痛に見舞われる筈である。で、最も重要なのは、その後のラントレーニングがより痛みを感じずに出来る事を自覚することである。

(3)1ヶ月は継続する

 着実に/分別よくランニングを継続したとしても、ランニングが気持ち良いと明確に感じられるようになるには1ヶ月を要する。この事実を認識し、ランニングを始める際に1ヶ月は続けようと決心することが大切となる。例えば「1週間で身体能力を向上させよう!」なんていう非現実的な目標を立てたところで、結果に落胆して止めてしまうのは自明の理である。逆に、1ヶ月もランニングを続けられれば様々な難局も乗り切れる筈と思い定め、最初はのんびりと構えて取り組もう。

 少々矛盾するかもしれないが、ランニングを始めた最初の一ヶ月は「言い訳をしない」と決意しよう。どんな理由があっても、いくら不安や恐怖を覚えるといっても、最初に決めた計画は遂行すること。そうすることが、最も早く成長する最適な手法である。また、1か月後にはランニングが楽しく思えるようになるし、それ以降は自分自身に鞭を入れる必要もなくなるだろう。

(4)レースに出る

 ランニングを継続する最高の仕掛けは、ゴールラインを越えるという魅惑の経験を味わうことである。なので、ランニングを継続したいという人は、まずはレースに出てみよう。これは直感に反するように思われるかもしれない。レースの参加申し込みをするというのは野心的である一方、ビギナーにとっては怖気づいてしまうことでもある。しかし、「レースに出る」というのはランニングを継続する理由付けとして本当に有効である。レースに申し込むところから野心が膨らみ、そして初めてゴールラインを越える時にその特別な思いは最高潮に達する。この感覚をもう一度経験したいと思い、ランニングに「嵌る」のだ。

 なお、「レースに出る」と言っても、いきなりフルマラソンに出る必要は無い。5,000m程度のレースで充分である。それだと、それ程敷居は高くない。






 

減量≒体脂肪減少に有効なのは、高強度の運動かそれとも低強度の運動か?

2013年12月05日 | Competitor Running
…という"Competitor Running"誌の記事です。

日本ってやたら二元論(東京vs大阪、阪神vs巨人とか)が好きなのですが、話はそう単純ではありませんでした。

結局、あれこれ色々するのが良いみたいですね。

脂肪を燃焼するには、低強度/高強度どちらの運動が効果的なのか?
By Matt Fitzgerald


 ある研究では、低強度の運動の方が効果的とされているが、細部までよく読んでみよう。

 2010年に発表された研究結果では、減量に関しては低強度の運動の方が高強度の運動に比べ効果的であるとされた。しかし、この研究の被験者は一般人ではなく、過度の肥満と判定された未成年者であった。だから、この結果を直ちにランナーに当て嵌めるのは無理である。また、ランナーが体脂肪を減らしたいのであれば、運動強度はどう設定すべきなのだろうか?。

 上記の研究は、Udine大学(イタリア)の研究者達が実施した。肥満体の若者20名を被験者とし、3週間にわたって食事/トレーニングを管理した。被験者の半分(試験群)には低強度(最大酸素摂取量の40%に相当)の運動をさせる一方、残りの半分の被験者(対照群)には高強度(最大酸素摂取量の70%に相当)の運動をさせた。3週間後に体重/体脂肪量の変化量を測定し、比較した。

 結果は
・試験群の体重減少量は、対照群のそれを37%上回った
・試験群の体脂肪減少量は、対照群の2倍であった
というものであった。この結果について研究グループは、脂肪の燃焼については低強度の運動の方が効果的である(高強度の運動では主に炭水化物がエネルギー源として利用されるから)、と結論づけた。

 ここから、「脂肪を燃焼するには、低強度の運動の方が効果的である」という説が生まれた。

 しかし、話はそう単純ではない。以前の研究では、肥満者と健常者では脂肪燃焼のメカニズムが異なる事が示されている。また、有酸素運動能力が高い/健康的な体重の人では、脂肪燃焼メカニズムが極めて効率良く作用していることも明らかにされている。その結果、ランナーは高強度の運動でも脂肪を燃焼することが可能である。第一、この研究で「低強度の運動」とされた、最大酸素摂取量の40%に相当する運動というのは、ランナーにとってはいわばちょっとした早歩き位程度である。ランナーが脂肪の燃焼量を最大とするには、もう少し強度の高い運動(最大酸素摂取量の55~60%に相当、通常は一定ペースのジョギング)を実践する必要がある。

 更に突っ込めば、この研究で「高強度の運動」とされた、最大酸素摂取量の70%に相当する運動だって、ランナーにとっては特に強度が高い運動ではない。この程度の強度(もしくはそれ以上)でフルマラソンを完走するランナーは普通にいる。別の研究結果によると、正常体重で身体能力の高い人は、低強度/中強度の運動後に比べ、真に高強度の運動(最大酸素摂取量の100%でのインターバルトレーニング等)の後でより多くの脂肪を燃焼することが明らかになっている。

 事実、ある研究によると、極めて高強度のインターバルトレーニングをした人と、中強度のトレーニングをより長い時間実践した人を比較すると(エネルギー消費量は共通)、前者の方が体脂肪の減少量が大きかった。改めてUdine大学の研究グループが行った実験を見ると、試験群と対照群の間では、運動後の脂肪燃焼率に有意差は見られなかったことから、最大酸素摂取量の70%に相当する運動は決して「高強度の運動」とは言えない。

 一方、Udine大学の研究グループが行った実験では、高強度の運動をした対照群で最大酸素摂取量の増大が認められた(低強度の運動をした試験群では増大しなかった)。言い換えると、高強度の運動をした人は身体能力が向上する一方、低強度の運動をした人は体重が減ったにも関わらず身体能力が向上しなかったと言える。これは重要な事実である。というのも、身体能力は減量に大きな影響を及ぼし得るからである。つまり、身体能力が向上すれば、一定の強度の運動においてより速く走られるようになり、より速く走られるようになれば、一定の強度で運動した場合の時間当りの脂肪燃焼率(kcal/分)は増大する。

 例えば、最大酸素摂取量の70%という強度でランニングをするとしよう。最初の内はスピードが6分15秒/kmだったとする。数週間後には身体能力が向上し、スピードが恐らく5分56秒/kmにアップしているはずである。更に数週間後には、スピードは5分37秒/kmになっているだろう。ここでトレーニング時間を一定とすれば、トレーニングでのエネルギー消費量は明らかに増大している。

 従って、例えば、Udine大学の研究グループが行った実験を3週間でなく12週間行い、その間、身体能力の向上を考慮してランニングペースを随時変更していれば、結果は逆になっていたに違いない。つまり、高強度の運動をした対照群の方が体重減少量が大きかった筈である。

 では、「高強度の運動の方が脂肪の燃焼により有効である」と言えるのだろうか?。

 やはり話はそう簡単ではない。脂肪の燃焼に最も有効な運動方法は、高強度/低強度の運動を組み合わせることである。その理由は、高強度/低強度の運動に於ける脂肪の燃焼方法は異なり、それぞれがお互いを補完する関係にあるからである。確かに、高強度の運動の方が単位時間当たりの脂肪燃焼量は大きいが、低強度の運動は長時間実践することが可能なので、体重減少量の総量を大きくすることが可能である。

 つまり、全てを高強度の運動とすると、5時間/週トレーニングするのがせいぜいだろう。しかし全てを低強度の運動とすると、15時間/週トレーニングすることは可能である。そして後者の方がより体重減少量が大きくなるのは間違いない。

 例えれば、高強度の運動と低強度の運動は、ベーグルとクリームチーズの関係にあると言える。それぞれ単独よりか、組み合わせた方がより良いのだ。


休暇期間中の食べ方

2013年12月02日 | Competitor Running
"Competitor Running"誌の記事です。

アメリカではそろそろ年末商戦だとかクリスマス休暇だとかという言葉が飛び交うみたいです。

日本だと忘年会&新年会対策、でしょうか。
ここ大阪市福島区野田では、中央卸売市場を控えている為か、忘年会シーズンのピークは11月だそうです。

休暇期間中の食べ方
by Kelly O'Mara, Nov. 26, 2013


ランナーがこの季節に太って良い訳は無い


 アメリカでは11月下旬(感謝祭)~12月下旬(クリスマス)にかけて、人々がベルトを緩める時期に入る。

 しかし、ランナーがこの季節に太って良い訳は無い

 この休暇期間を「30日間の暴飲暴食祭り」と揶揄するのはKrista Austin(運動生理学/運動栄養学博士、Performance and Nutrition Coaching主宰)である。

 最初に自問自答してもらいたいのは「次のレースは何時か?」である。それが差し迫っているのであれば、暴飲暴食したくはないだろう。しかし春(殆どのランナーにとって、トレーニングシーズンを再開する季節)まで何も無ければ、ちょっとは羽目を外したいと思うかもしれない。

 Austinは「ちょっとぐらい楽しむのも悪くはないけどね」と語る。要は「スマート=賢く」食べるのが大切である。

(1)戦略的に食べる

 普段はラントレーニング後にエナジーバーを食べるAustinも、この季節は母親譲りの「コーンフレークのマシュマロ添え」を食べる。このように、食べる物を「入れ替える」のがコツである。

 これについてNancy Clark(「Nancy Clarkのスポーツ栄養ガイド」”Nancy Clark's Sports Nutrition Guide”の著者)は、この時期特有の食べ物を、普段の食事にプラスする形で摂るのは良くないと指摘する。

 Nancyは「一日4食」を提唱する。つまり、朝食/昼食/3時のおやつ/夕食とし、各々を約500kcalに設定するのである。そして、職場でクッキーを食べたならば、3時のおやつをカットするのだ。このように、この時期特有のご馳走を普段の食事と入れ替えるようにする。追加で食べてはならない。

 このやり方は、パーティーに呼ばれた時にも応用できる。

 Clarkは「クラッカーにチーズを載せたオードブルを食べると、それだけ他のご馳走が食べられなくなるわよ」と警告する。

(2)考えて食べる

 この時期に「敵」となるのは、家庭での食事だけではない。パーティーはあちこちで開催されるし、職場にはお菓子がドカンと並ぶのも珍しくない。

 このような「甘いお菓子の大氾濫」と闘うには、きちんと考えることが大切だとClarkは指摘する。

 パーティーに参加する前には、自分が体重を減らしたいのか、それとも増やしたいのか、はたまた現状維持が目的なのかを確認しよう。勿論、パーティーでナッツ類に手を伸ばす事自体は悪くないのだが、問題はそれが考えた上の行動であるか、それとも行き当たりばったりの行動なのか、ということである。Clarkは「偶然うまく行くこともあるだろうが、いつもそうそう上手くは行かない」と言う。

 またClarkは、パーティーへ行く前でも普段通りの食事を摂ることを推奨している。多くの人は、パーティーで食べる事を考慮してその前の食事を控えがちにするが、結局はお腹を空かせてパーティーへ参加することになり、そこで食べ過ぎてしまうのがオチである。

 それとClarkは、パーティーではまず社交に勤しみ、間違ってもビュッフェのテーブルに張り付いてはならない、ともアドバイスする。

 パーティー会場では、美味しそうなご馳走をちょびっと、ゆっくりと食べるようにしたい。

(3)食べ物の中身を理解する
 自分が何を食べているのかは理解すべきである。例えば、おばあちゃんが作る「チョコレートパイのホイップクリーム添え」は伝統的なおやつだが、問題はおばあちゃんが低脂肪(もしくはトランス脂肪酸不含有)タイプのホイップクリームを使っているかどうか、だ。

 Austinに言わせると、食材をより健康に良い物に代えるのは難しいことではない。家族と一緒にキッチンに立てば良いのだ。

 勿論、普段からネット等で低脂肪の代替品を探しておくのは必須である。

 同じことは、アルコール飲料についても言える。普段から低脂肪タイプのビールだとか低カロリー酒類飲料を探しておこう。アルコールはいわば「隠れカロリー」の巣窟でもある。

(4)やっぱり、トレーニング
 当たり前ではあるが、休暇期間中でもトレーニングを継続することは、食生活に大きな影響を及ぼす。休暇期間中ともなるとソファに寝そべる毎日、という人も多いが、そうなると食事内容も悪化しかねない。

 Paul Williams(ローレンス・バークレー国立研究所の生活科学部門主任調査官)は、「米国ランナーの健康調査」に参加した1万人以上のデータを基に、走行距離が長い人ほど痩せているという事実を突き止めた。肝心なのは、これが、摂取した以上のエネルギーを消費したから、というだけではないということだ。

 Williamsによると「ランナーが消費した以上のエネルギーを摂取することはそれほど難しくはない。例えば、Oreo一箱を食べれば、フルマラソンを完走するのに要する以上のエネルギーが摂れる。フルマラソンを完走するよりかは、Oreo一箱を食べる方が楽しいに決まっている」と言う。

 この謎を解く鍵となるのは、ランナーは無意識の内にエネルギーを過剰に摂取した場合、やはり無意識/自動的に他の食事を減らして摂取エネルギーを調整している、ということである。つまり、ランニングでの走行距離が増えるに連れて身体が研ぎ澄まされ、その結果として食事内容が適正化されるというのだ。

 Williamsによると、ランナーは「感謝祭の食べ物に関心が余り無いみたい」なのだそうだ。



 



正しい「テンポ走」のやり方

2013年12月02日 | Competitor Running
"Competitor Running"誌の記事です。

テンポ走は乳酸閾値(LT値)直近でのランニングなので、かなりきつい練習です。
達成感は充分得られますが。

正しい「テンポ走」のやり方
by Mario Fraioli


 テンポ走は最も誤解されているトレーニングである。正しい知識を得よう。

 「テンポ走」について多くのランナーがあれこれ語っているが、実際のところ、その方法(いつ/どうやるのか)をきちんと理解出来ている人はごく僅かである。イージーペースより速く走るトレーニングを全て「テンポ走」と言う人もいれば、レースペースで走るのを「テンポ走」と言う人もいる。これらは、如何にテンポ走が誤解されているかのいい例である。

 勿論、上記の例は何れも誤りである。実は、テンポ走は極めて簡単に表現出来る。つまり、気持ちが良いというレベルの高強度のランニングを一定時間(=決められたペースで決められた距離を走ることで定まる)行うトレーニングである。もしくは、事前に決められた時間を一定の主観的強度で走るトレーニングと言っても良い。

 (長距離走としては)比較的短距離を走る競技のスペシャリストも、マラソンおたくも、テンポ走をトレーニング計画に組み込むことで良い効果が得られる。その距離/強度/頻度は、目標とするレースによって様々であるが、レースペースで20~90分間走ることで有酸素運動能力は向上し、ランニング効率も改善し、一定時間速いペースで走られるという自信も付く。

 ではこれから、様々なタイプのテンポ走の例を紹介し、それらをどのようにトレーニング計画に組み込めばいいのか考えてみたい。

(1)普遍的なアドバイス

 筆者は5,000m走~マラソンまでを対象とする、様々なアスリートを指導しているが、彼らに共通して実践させているテンポ走のやり方がある。それは、目標とするレースの12週間前~8週間前の4週間に於いて、6.4~9.6kmを(10,000mのレースペース+9~13秒/km)というペース(≒ハーフマラソンでのレースペース)で走る方法である。もし、GPS機能付きの時計とかを持っておらず、走るスピードが測定出来ないのであれば、ハーフマラソンのレースペースで20~60分間走るというのでも代用出来る。

 仮に専門種目が5,000~10,000mであって、ハーフマラソンを走った経験が無いという人であっても、この「キツ過ぎない」ペースでのランニングを行うことにより、持久力能/ランニング効率が劇的に改善することが見込まれ、レースでのリズムも体得出来、より強度の高いレースペースを模したトレーニング(これはトレーニング期間の終盤で実践すること)へも容易に移行出来るようになる。勿論、ハーフ/フルマラソンを目標とするアスリートも同様の効果が得られるし、レースに対する自信も付く。筆者は、このようなテンポ走の後に丘陵地を使ったヒルスプリント(最大能力の90%のダッシュ15~20秒×6本、合間に完全回復)を行うことを薦めている。これにより速筋が活性化され、筋骨格系が満遍なく鍛えられる。これはあくまでもオプションであるが、いわば一石二鳥が見込める。

(2)5,000~10,000m走に特化したテンポ走
 目標とするレースの8週間前になれば、スピード/距離を変えたテンポ走を行う。どう変えるかは、目標とするレースに拠る。5,000~10,000m走が目標というアスリートであれば、(10,000mのレースペースで4.8km走)という練習メニューをレースの8~4週間前に行う。筆者は、このテンポ走の後に(5,000mのレースペースで200mダッシュ×4~8本)という練習メニューをこなすことを推奨している。200mダッシュの代用として30~60秒ダッシュでも構わない。なお、ダッシュの間には身体をきちんと回復させること。これはレースの最後で要求されるラストスパートを想定したものである。

 レース直前の4週間では、(5,000m走のレースペースで2.4kmもしくは7~20分間走)×2本(合間に5分間の休憩)という練習メニューを行う。このテンポ走は、週単位ではインターバル練の間に行う。これによりレースへの準備が整う。

(3)ハーフ/フルマラソンに特化したテンポ走
 この場合でも、レース8週間前からはそれまでと少し異なる方法で行う。筆者が勧めるのは、強度を少し落として走行距離を延ばすテンポ走である。強度については、可能な限りレースペースに近付ける(超える必要は無い)。

 ハーフマラソンを目標とする場合、レースの2~3週間前迄はテンポ走の走行距離(週次)を13km迄徐々に伸ばす(もしくは走行時間を75分間迄伸ばす)。この時、ペースはレースペースとする。マラソンを目標とする場合は、テンポ走の走行距離をレースの3週間前で21~26km(もしくは2~2.5時間)(ペースはレースペース)とする。

 ハーフ/フルマラソンを目標とする場合、ペースを厳格に守るのが極めて重要となる。但し、身体にこれまでと異なる刺激を入れたい場合/包括的なランニング効率を向上させたい場合は、各々のトレーニングメニューを入れ替えるのも有効である。つまり、ハーフマラソンを目標とするランナーには、テンポ走の代わりとしてフルマラソンのペースで16~20kmを走らせる。逆にフルマラソンを目標とするランナーには、ハーフマラソンのレースペースで13km程度を走らせる。


マラソンにおける栄養摂取の新ルール

2013年11月28日 | Competitor Running
"Competitor Running"誌の記事です。
なお、筆者は"Racing weight"シリーズの著者です。

カーボローディングの前に脂肪ローディングするっていうのは、カーボローディングの前に一旦筋グリコーゲンを枯渇させる→その後に炭水化物を摂取するとリバウンドで筋グリコーゲン量が増大する、という効果を狙ったものとも解釈できます。

あと、日本ではビートジュースは何処で入手できるのかな…?ってとこですね。

マラソンと栄養摂取の新ルール
by Matt Fitzgerald, Nov. 22, 2013


 マラソンにおける「壁」を超える為に、以下の6つの新ルールに従ってみよう

 Meb KeflezighiとRyan Hallが2012年の全米オリンピックマラソン予選で37km地点にトップで到達した時、そのままのペースで走れば予想ゴールタイムは2時間08分34秒だった。しかし結果は
・Meb Keflezighi…2時間09分08秒
・Ryan Hall   …2時間09分30秒
だった。つまり、彼らは残りの5km余りでいわゆる「壁」にぶつかったのだ。

 また、37km地点に3番手で到着したAbdi Abdirahmanも壁にぶつかり、ペースが落ちてしまった。残りの5kmをそれまでと同じペースで走り切ったのはRicky Flynn(12位)だけだった。

 このように、プロランナーにもいわゆる「壁」が存在する。これは一般ランナーにも当て嵌まる。おおまかに言えば、マラソン大会の参加者の75%は、
・折り返し点以後のタイム≧折り返し点までのタイム+2分間
なのである。多くのランナーは32km地点を超えるとペースがガタンと落ちる。それがいわゆる「30kmの壁」の根拠である。対照的なのは、ハーフマラソンでレース中にペースが落ちる人の割合は10%以下であり、壁なるものの存在は滅多に見られない。

 フルマラソンで「30kmの壁」が現れる理由は、筋グリコーゲンの枯渇である。グリコーゲンは食事で摂取した炭水化物由来の物質であるが、比較的少量が筋肉/肝臓に貯蔵され、運動時にはグルコースに転換され、血流に乗って筋肉に届けられる。通常、人体にはハーフマラソンを適切なペースで走るのに必要十分なグリコーゲンが蓄積されている。しかしフルマラソンでは、基本的には代謝過程に負担がかかる。仮にフルマラソンの前半を約1%速く走れば、筋グリコーゲンが枯渇する危険が生じる。フルマラソンを「30kmの壁」にぶつからずに完走するには、30km迄にグリコーゲンが枯渇しないようにする為に、
・充分な量の筋グリコーゲンを貯蔵しておくこと
・30km迄は筋グリコーゲンを節約すること
が必要となる。しかしこれを実践するのは容易ではない。

 鍵はペースである。一定ペースを維持するように走れば、ペースが不安定な場合に比べ貴重なグリコーゲンの消費がより緩慢になる。また、普段のトレーニングも重要である。正しくトレーニングすれば、
・筋グリコーゲンの貯蔵能力が増大する
・ランニング効率/脂肪燃焼能力が向上する
等の効果が得られ、その結果、グリコーゲンの消費速度は低下する。

 ただ、ペースを安定化させる/トレーニングを改善するだけでは不十分である。栄養摂取も適正化し、それを継続する必要がある。マラソン(フル/ハーフ共)の為の栄養摂取に対する考え方は、この数年で変化した。以下の6つのルールに従い、トレーニングの効果を最大化すると共に、「30kmの壁」を乗り越えよう。

(1)体重管理
旧ルール:ランナーは体重管理において、一般人ほど食事内容に頼る必要は無い
新ルール:ランナーは体重管理において、一般人以上に食事内容に頼る必要がある。

 最近まで運動科学者達は、最大酸素摂取量(等の有酸素運動能力)やランニング効率等がランニング能力を予測する最も有用な指針であると信じていた。しかし最近の研究結果で、体組成も同じ位有用な指針になることが明らかになった。エチオピアのエリートランナーを被験者とした研究から、体脂肪が少ない程レース成績が良い事が分かったのだ。

 ランナーとして最適な体重(=”レーシング・ウェイト”)は、健康体重の下限付近に相当する。というのも、過剰な体重≒過剰な脂肪は「ただの重り」に過ぎず、それがあるとランニング時のエネルギー消費量が増大するからだ。一説では、体脂肪を450g減らすと、フルマラソンのタイムが1分間短くなるとも考えられている。

 ランナーが理想とするレーシング・ウェイトに到達するのは、一般人が自らの体重を健康体重の範囲内に収めるより難しい。レーシング・ウェイトを実現する為には、ランナーはその食事内容により注意を払う必要がある。

 ランナーにとって問題をさらにややこしくしているのは、いわゆる「補償効果(”Compensation Effect”)」である。つまり、トレーニングする程食欲が増大し、結果として食事量が増えることである。単純に「我慢する」のは実行可能な解決方法とは言えないし、だからといってLサイズのダブルチーズピザを食べるなんて論外である。

 ならば、ランナーがすべきことは食事の「質」を向上させることである。野菜等の高品質の食品はカロリー密度が低いので、食欲を満足させる迄食べても摂取エネルギー量は少なくて済む。高品質の食品として挙げられるのは
・野菜類
・果物類
・ナッツ類/種実類
・精製していない穀類
・脂肪の少ない肉類/魚類
・乳製品
である。逆に、基本的に低品質の食品として考えられるのは
・精製した穀類
・脂肪の多い肉類
・菓子類
・揚げた食品
である。

覚えておきたいこと
 マラソンに向けてトレーニングする期間は、減量の為に高品質の食品を摂ること。筋グリコーゲンの消費を抑制出来れば、「30kmの壁」にはぶつかり難くなる。

(2)炭水化物の摂取
旧ルール:20世紀に推奨された”高炭水化物食”は誤りである
新ルール:現在の流行である”低炭水化物食”は、ランナーにとっては誤りである。

 1960年代にスウェーデンの研究グループが、高炭水化物食によって筋グリコーゲン量が増大すること、そしてその結果として持久力走の成績が向上すると報告した。いわゆるレース前の「カーボローディング」は、この報告を基に生まれた。その後に実施された研究で、高炭水化物食を摂ることでランナーが高強度のトレーニングに耐える能力が増大することも明らかとなった。それ以来、スポーツ栄養学の専門家達はランナーに高炭水化物食を推奨するようになった。

 現在でも、大半のスポーツ栄養学専門家達は高炭水化物食を推奨している。しかし最近、一部で低炭水化物食(=低糖質食)の方が優れているとする説が提唱され始めた。その根拠は、低炭水化物食を継続して摂取することで筋グリコーゲンを節約するように身体が適応し、その結果、脂肪を燃焼する能力が向上すると共に、いわゆる「30kmの壁」を越えやすくなる、というものである。

 事実、低炭水化物食によってランニング時における脂肪燃焼能力が向上するという研究報告も発表されている。しかしながら、この結果は持久力能の向上とは直接結びついてはいない。また、ランナーが低炭水化物食を摂っていると、筋グリコーゲンの貯蔵量が慢性的に少なくなり、強度の高いトレーニングが実行出来なくなるという新たな研究報告も発表されている。

 バーミンガム大学(英国)のAsker Jeukendrupらの研究グループは、低炭水化物食(総摂取エネルギーに占める炭水化物の割合=41%)と通常食(同じく炭水化物の割合=65%)を11日間摂取した場合の、ラントレーニングに対する影響を比較した。その結果、低炭水化物食を摂取した被験者群では、持久力能が低下したと共に、主観的な疲労度が増大した。一方、通常食を摂取した被験者群では、持久力能/主観的疲労度は共に変化しなかった。

覚えておきたいこと
 ランナーが摂取すべき炭水化物量は、トレーニング量と比例している。以下の表を参考にしてもらいたい。

平均的な一日のトレーニング時間 一日に摂取すべき炭水化物量
    30~45分間           3~4g/kg-体重
    46~60分間           4~5g/kg-体重
    61~75分間           5~6g/kg-体重
    76~90分間           6~7g/kg-体重
    91~120分間           7~8g/kg-体重
    120分間以上           8~10g/kg-体重


(3)「断食」トレーニング

旧ルール:ランニング時には、運動能力を高める為にスポーツドリンクを積極的に摂取する
新ルール:筋肉の脂肪燃焼能力を高める為に、時には「断食トレーニング」を実行する

 スポーツドリンクを摂るとランニング時の運動能力が向上する理由は
・脱水症を予防する
・筋肉にエネルギー源を供給する
からである。しかし、ラントレーニング時に常にスポーツドリンクが必要という訳ではない。ある研究によると、
・1時間以内の高強度ラントレーニング
・1時間30分以上のイージーペースランニング
においては、スポーツドリンクを摂取しても運動能力は向上しないことが明らかとなっている。

 また別の研究では、スポーツドリンクを摂取することにより、本来発生する筈の、トレーニングに対する望ましい適応が阻害される可能性があると報告されている。具体的には、トレーニング時に筋グリコーゲンが枯渇することにより、筋肉が脂肪を燃焼する能力が向上するなどの適応が発生するのであるが、スポーツドリンクに炭水化物(≒糖類)が含まれているので、これが阻害されるというのである。勿論、スポーツドリンクは長時間/高強度のトレーニングには不可欠なものであるが、過剰に依存し過ぎると逆効果となり兼ねない。

覚えておきたいこと
 スポーツドリンクは、
・トレーニング時間=1~2時間の場合:2回に1回の割合
・トレーニング時間=2時間以上の場合:毎回
利用するようにしたい。

(4)カーボローディング/脂肪ローディング

旧ルール:レース前にはカーボローディングをする
新ルール:レース前にはまず脂肪ローディング、次にカーボローディングをする

 先に私は(2)で、低炭水化物食(特に高脂肪+低炭水化物食)によってランニング中の脂肪燃焼量が増大すると記した。しかしこの効果の裏返しとして、トレーニングを遂行する能力は低下する。この点から、ランナーは低炭水化物食を摂るべきではないと結論づけた。しかしながら、ある研究によると、レース前にはカーボローディングの前に「脂肪ローディング」を行うと良い、と報告されている。
具体的には、レース13~4日前(10日間)に脂肪ローディングを行うと筋肉の脂肪燃焼能力が増大し、続いてレース3日前~前日(3日間)にカーボローディングを行うと筋グリコーゲン貯蔵量が増大する、というのである。

 2001年に、ケープタウン大学(南アフリカ)の運動科学者であるVicki Lambertは、上記の食生活を自転車競技選手に実践させた場合に見られる、持久力能に対する影響を調査した。持久力能の評価方法は、
・中程度の強度のサイクリング2時間でウォームアップ
・その後、20kmのタイムトライアル
であった。その結果、(脂肪ローディング→カーボローディング)を実践した被験者群では、(通常食→カーボローディング)を実践した被験者群に比べ、タイムトライアルでの速度が約4.5%速かった。

 上記の(脂肪ローディング→カーボローディング)を実践するのであれば、まず、レース2週間前~4日前迄は、摂取エネルギーの65%が脂肪由来である食事を摂る。具体的には、摂取するほぼ全ての食品を、健康に良い脂肪を多く含むものとする必要がある。推奨できる食品は、
・アボカド
・ギリシャヨーグルト(訳者注:普通のヨーグルトを水切りしたものみたいです)
・チーズ類
・鶏卵
・ナッツ類
・オリーブ及びオリーブ油
・鮭
・牛乳(低脂肪や無脂肪タイプでない、ふつうのもの)
等である。

覚えておきたいこと
 レース3日前からは、カーボローディング食に変更すること。カーボローディング食では、摂取エネルギーの70%を炭水化物由来とすること。

(5)ビートジュースを飲む
旧ルール:レース前には大量の水を摂取する
新ルール:レース前には大量の水と少量のビートジュースを摂取する
 
 ランナーの大半は、レース前には水をしっかり補給しておくのが重要だと理解している。しかし、これはやり過ぎる危険を伴う。水を大量に補給する必要は無い。逆に水を大量に摂り過ぎると、スタート前にトイレに行きたくなるし、最悪の場合、レース中にまでトイレに行きたくなってしまう。レース当日の起床後~スタート迄に補給する水分は750ml以下とし、レースのスタート1時間前以降は水分を摂らないようにすべきである。

 もう一つ提案をしたい。マラソンの前に水分を摂る代わりに、ビートジュースを飲もう。何故か?。ビートジュースには天然の硝酸塩が含まれているが、それによって血管が「掃除」され、運動中の筋肉において血流が増大する。ある研究によると、レースの2~3時間前に500mlのビートジュースを摂取すると、レース中の運動能力が向上するとのことである。

覚えておきたいこと
 当然のことながら、普段のトレーニング時にビートジュースを試しておこう。レース当日の朝に初めて飲むのは止めておいた方が良い。

(6)水分補給について
旧ルール:レース中も出来る限り水分を摂取する
新ルール:喉が渇いたら水分を摂取する

 ランナーであれば誰しもが、レース中は体重の減少分(≒発汗量)を補う量 and/or 炭水化物60g/時に相当するスポーツドリンクを摂るべきだと耳にタコが出来る位アドバイスされた経験があるだろう。
このアドバイスは、スポーツドリンクを充分に摂取することで
・体温上昇≒循環器系への負担が回避出来る
・炭水化物が摂取出来る→血中グルコース濃度の維持/筋グリコーゲンの枯渇遅延が図られる
ことで、結果として運動能力の維持/向上が望める、という考えに基づくものである。

 しかし最近では、上記のアドバイスを疑問視する意見も出されている。というのも、ランニング中にスポーツドリンクを積極的に(訳者注:大塚製薬のポカリスエットを例とすると、炭水化物60gは製品1,000mlに相当します)摂取すると消化器系が不調となる一方、喉の渇きを覚えた時点で飲む方法に比べて運動能力が向上するとは言えない、という研究結果が報告されている。ラフボロー(Loughborough)大学(英国)のIan Rolloらの研究グループがJournal of Sports Nutrition and Exercise Metabolismで発表した研究結果がこの「喉が渇いたら飲む」考えを強く支持している。

 その研究では、9名のホビーランナーを被験者とし、被験者には以下の3つの状況下で16km走をさせた。
(a)ランニング中には何も飲まない
(b)喉の渇きを覚えたら、スポーツドリンクを飲む(摂取量は平均して315ml/時)
(c)事前に決めたタイミングでスポーツドリンクを飲む(摂取量は1,055ml/時)
 また、それぞれの状況が終了した時点で、体重減少量/深部体温/消化器系の主観的状態を調査した。ランニングの成績としては、(a)と(c)はほぼ同一であった。しかし、(b)では(a)(c)に比べゴールタイムが平均で約1分間程早かった。

 この結果についてRolloは、追加の調査が必要としている。考えられる理由の一つとしてRolloは、(b)では消化器系の主観的状態が良かった(特に後半の8kmにおいて)ことを挙げている。

覚えておきたいこと
 フルマラソンで、予め決めておいたタイミングでスポーツドリンクを飲むのは困難である。だから、必要に応じて≒喉の渇きを覚えたら飲む、というので充分である。その方が成績が良いかもしれないし。



 

マラソン後の回復

2013年11月27日 | Competitor Running
"Competitor Running"誌からの転載です。

私としては、これから経験していきたいと思います。

マラソン後の回復について
by Alan Culpepper


 マラソン後の回復は、多段階のプロセスを要する

 コーチ/ランナー達は、トレーニング方法/新しいトレーニングの組み合わせ/トレーニングの強度等については熱心に話をする。しかしそのような会話で欠落しているのは、回復について、である。

 レース後の休養/回復はランナーの能力に関係無く大切である。レース距離が延びると、レース後の疲労は酷くなるが、しかし疲労度を決定する主要な要因は、レースの強度である。

マラソンは別物である

 マラソンは
・身体が包括的に消耗する
・心身にかかるストレスが大きい
点で、他のいかなる競技とも異なる。トライアスロン(ロング)の方が明らかにレース距離が長いにも関わらず、回復に要する時間はマラソンの方が長い。トライアスロン(ロング)は
・運動の強度がそれ程高くない
・使う筋肉が異なる
・バイクパートでは栄養補給が常時可能である
という特徴が有り、その結果、レース後の回復に要する時間はマラソンより短くて済む。

 陸上(長距離)に限っても、マラソンよりレース距離が短い競技では、回復に要する時間は短くて済む。レースの距離/強度にもよるが約3~7日間で充分である。しかしマラソンの場合、通常は回復に14~21日間を要する。回復に要する時間がどれ位かは、レースの強度によって決まる。イージーペースで走るのであれば、毎週でもフルマラソンは走ることが可能だろう。しかし、走るペースの強度が高くなる程、心身が回復に要する時間は長くなる。心身共にきちんと回復させなければ、長期的には身体能力は低下する。

ランナーにも個人差がある
 マラソンが独特であるように、個々のランナーがレース距離に対して示す反応や、回復能力については個人差が見られる。私の経験を述べると、最初のマラソンを完走した後で身体は完全に崩壊した。ゴールラインを通過した数分後には、数日間はもう駄目だろうなと覚悟した。ゴール地点から宿泊していたホテル迄はたった800mだったのに、疲れきった脚を引きずって到着する迄30分間も要した。勿論、皆んなが皆んなこうではなかっただろう。

 天候/吸水状態/レース前~当日の食事/ストレッチ/マッサージ/アイスバス等が回復を左右する。これらが利用できるかどうかにも個人差があるので、結局、回復状態は人それぞれになる。また、先天的に筋肉にグリコーゲンを蓄積しやすい&枯渇し難いという人もいる。なので、自らの本能を信頼するべきである。ただ、一般論としては、マラソンの後でトレーニングを再開する迄には最低でも2週間空けるのを推奨する。

どうやって休み、いつトレーニングを再開するか?

 私は若い頃、マラソンの後は数週間完全に休養していた。その間、走ろうなどとは全く考えていなかった。しかし歳を重ねるに連れ、休養期間を伸ばしても、痛みが引かなくなった。用心深い人でも、休養期間後にトレーニングを再開する際には、身体の状態に注意を払うのが望ましい。
 マラソンの後での最適な休養方法は、ランニングを全く休止するのではなく、3日に一度はイージーペースでランニングすることである。その際、距離は長くなくていい(25~35分間で充分)し、ペースも極めてイージーなペースで充分である。その目的も、循環器系/筋骨格系に負荷を掛けることではない。控えめにランニングすることで、筋骨格系の活性は落ちないし、腱は強化される。そして、イージーペースで走ることにより、回復が促進される。

マラソン後の回復に関する知恵
・しっかりストレッチする。レース後の夜に15~20分間ストレッチすることで、筋肉の回復が促進される。
・レース後の夜には抗炎症剤を服用する。摂取することで炎症が抑制され、回復が進行する。なお、2日目以降に抗炎症剤を服用するのは推奨出来ない。
・水分を摂取する。レース中にスポーツドリンクは飲み飽きるだろうので、レース後はただの水を積極的に摂取する。完全に水分を補給するには数日かかる。
・ちゃんと食べる。回復を促進する一番良い方法は、きちんとした食事を摂ることである。理想としては、ゴール後2時間以内にフルコースタイプの食事を摂ることである。
・走る。レース後3日目からは、3日おきに軽くジョグをする。これを2~3週間続ける。

レース後に自問自答すべきこと
・レースでどれだけ頑張ったか?。自分自身に対し、素直になろう。
・気温はどうだったか?。気候が厳しいほど、回復に要する時間は長くなる。
・レース前~当日の食事はどうだったか?。それがいい加減な程、回復に要する時間は長くなる。
・レースの展開はどうだったか?。ゴール迄の最後の数kmはバテバテだったか、それとも滅茶苦茶頑張ったか?。後者の場合、やはり回復に時間を要する。
・レース後数日間をどう感じたか?。特に、レース後の3~4日以内に軽くジョギングした時の感覚が重要である。

 




優秀なランナーは身体が硬いのか?

2013年11月25日 | Competitor Running
…という"Competitor Running"誌の記事です。

"The Sports Gene : Inside the Science of Extraordinary Athletic Performance"って書籍が出たくらいなので、今後は運動能力と遺伝子の関係がより仔細に調べられるようになるのかもしれません。
個人的にはあまり面白くない時代かなぁ…と思いますが。
(この本自体は読みたいです)

あと、ストレッチングをどうするか?も少し考えます。弊堂でも、これからは動的ストレッチを中心にすることも検討します。

優秀なランナーは身体が硬いのか?
By Matt Fitzgerald


 身体の柔軟性欠如と、速く走る能力に関連する遺伝子が同定された

 第1回オリンピックがギリシャで開催されて以来、トレーニングと才能は運動能力を決定する重要な要因と見做されてきた。しかしながら、ごく最近まで、トレーニングの方が才能よりずっと大切だと考えられていた。というのも、トレーニングは眼で見えるし、測定/評価も可能である。一方で、才能は遺伝子にコードされていて判らない、と考えられていたからである。

 しかし時代は変わった。遺伝子は見えるようになった。今や人類は、身体能力という形質とそれを裏付ける遺伝子を関連付ける手法を確立した。つまり、運動能力とそれに関連する遺伝子の関係を特定出来るようになった。

 2011年にケープタウン大学(南アフリカ)の研究グループは、COL5A1という遺伝子/身体の柔軟性/56kmウルトラマラソン参加者の運動能力の関係を調査した。予備的研究によって、COL5A1はランニング効率と関連していることは明らかにされていた。具体的には、COL5A1を有している人はそうでない人に比べ、より効率良く走られる傾向が見られたのだ。また、別の研究では、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていることも明らかにされていた。そこでこれら三者の関係が調べられた。つまり、COL5A1が身体の柔軟性を低下させる結果、ランナーとして優秀になるのかどうかを調査した。

 被験者は72名であった。レース前に、被験者の
・COL5A1の有無
・体の柔軟性(≒立位体前屈)
を調べた。また、レース後に成績をまとめ、上記の調査結果との関連を検討した。

 平均値で評価する限り、COL5A1を有している人は有していない人に比べ、ゴールタイムが24分間(約6.5%)早かった。また、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていた。更に、被験者を(走りが速い/遅い)×(柔軟性が高い/低い)で4つに区分すると、(走りが速い×柔軟性が低い)区分でCOL5A1の発現量が有意に多かった。

 では一体、ランニングスピードの速さと身体の柔軟性はどう関係するのだろうか?。それは、ランニング効率と筋繊維の伸展性の関係に言い換えられる。筋繊維はいわば、ゴムひものようなものである。張力が高いものもあれば、低い≒緩いものもある。そして張力が低いものはよく伸びるが、それらは力を蓄えられない/発揮出来ない。逆に張力が高いものは余り伸びないが、大きな力を蓄えられる/発揮出来る。

 ただ本質的には、筋繊維の張力の高い/低いについて、どちらが良いのかは一概には言えない。要は「時と場合によりけり」である。例えば、体操選手なら筋繊維の張力が低い≒身体の柔軟性が高い方が有利である。一方で、ランナーは張力の高い筋繊維を欲している。なぜか?。ランニング動作では足が着地する際、足関節/膝関節が屈曲するのに合わせて下腿三頭筋(ふくらはぎ)/大腿四頭筋は伸展する。この時、それぞれの筋肉はいわば地面から反作用として受ける力を蓄積していると考えられる(この事は、ゴムは伸ばされる程張力が高くなるのをイメージしてもらえば分かりやすいだろう)。そしてランナーが足関節/膝関節を伸展して地面を蹴る際、筋肉に蓄積された力が地面に伝達され、ランナーは前方に”跳ねる”ように進む。この過程が上手に利用出来れば、ランニング効率が向上し、ひいてはランニング能力が向上する。

 COL5A1については、有しているかいないかの何れかであるし、それはもはやどうしようも出来ないことである。一方で、ランニング歴が長くなるに連れ、身体の柔軟性が低下することに気付いている人も多いだろう。この、身体の柔軟性の低下は、トレーニングを通じランニング効率が向上することと表裏一体である。一般的には、身体の柔軟性の低下は良くないことのように思われているが、決してそうではなく、むしろ過度にストレッチをすることがランニング効率の向上を阻害する可能性もある。

 ややこしくかつ大切なのは、身体の柔軟性の低下自体がランナーとしての長所ではない、ということである。身体が硬いこと/筋繊維の弾性が高いことの2つが合わさることが、ランナーとしての長所となる。また、身体の柔軟性/身体の動きやすさ以外にも、ランナーとしての能力を規定している要因は数多くある。