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[NHL短評]行き過ぎたスターとコミッショナー

2008-12-07 17:08:24 | 日常生活
Avery, Bettman on the wrong side for hockey(FOXSports.com)
Avery might be dumb, but Bettman overreacted(FOXSports.com)
What message should we take from NHL's suspension of words?(ESPN)


日本では試合結果ですら報道されないNHLの世界では、この1週間はダラス・スターズのショーン・エイブリーの
一件が注目され続けました。エイブリーのモトカノが同じNHLの選手と付き合っていることに対してエイブリーが
「酷い言葉」を浴びせたのです。

試合中や試合と関連したところでの汚い言葉の応酬が絶えることがないNHLにおいて、エイブリーは、
セレブと付き合ったり、ファッションショーに登場するほど派手好きで、アリーナ外での言動も
ぶっ飛んでいる、数少ない選手だといえると思います。

Sean Avery -- Timeline(ESPN)

これまでもその言動により、チームやリーグから罰金を受けていたエイブリーですが、今回は試合とは
まったく関係ない、モトカノの一件で6試合の出場停止を受けました。それもわざわざNHLコミッショナーが
事情を聴いた上、リーグとして出場停止を命じました。ここ1年を見ても、試合中の乱闘であったりレフリーへ
変なことをしたりして、出場停止を食らった選手はいますが、今回のエイブリーはどれにも当てはまるとは
考えられません。

確かに、リーグは「またショーンが変なこと言いやがったよ」と考え、これ以上NHLの品位を貶めることは
するんじゃないと怒っているのだろうと思います。一方で、エイブリーも同僚とも言えるのNHL選手が、
自分のモトカノと付き合っていることぐらいで怒り、汚い言葉を浴びせたことはバカバカしいと言えます
(もっとも、そういう人間性を持っているから、モトカノは別れを選んだのでしょう)。

しかし、NHLは何を守ろうとしてエイブリーに6試合もの出場停止処分を与えたのかがわかりません。
はっきりいってしまえば、エイブリーの一件は私生活のひとつであり、何よりも「イリーガル」では
ありません。エイブリーは法を犯していないどころか、言論の自由(言った内容がどうであれ)を
行使しただけです。これがたとえば、人種差別に繋がる発言であれば、それ相当の処分が課されても
不思議ではありませんが、エイブリーはそうではありません。

Al Strachan氏によれば、アイスホッケー選手はその責任(というよりは品位)を保つことを誇りに
しているのだそうです(試合中の乱闘は別腹)。だからこそ、クスリに手を出す選手は、
他のプロスポーツに比べて少なく済んでいます。それくらいの気構えを持っていなければならない、
それなのに、エイブリーは明文化されていない「ホッケーの規範」を砕きました。というよりは、
し続けた結果が今回の一件になったんじゃないかと思います。

しかし一方で、メディアはエイブリーのような選手も必要としています。NFLでいうのであれば、
テレル・オーウェンスやチャド・ジョンソン(オチョシンコ?)あたりの選手が何を言うかを
期待されているのと同じことです。NHLではエイブリーがその役回りに値すると思うのですが、
いかんせん、ヨーロッパやロシアから来ている選手も多いこともあり、口が達者な選手があまり
多くないこともあるかと思います。その分、エイブリーは目立った存在なのです。

残念ながら、エイブリーはアレキサンダー・オヴェチキンやシドニー・クロスビーほどに、プレイのみで
スター性を持ち合わせている「NHLを代表する選手」とは言いがいかと思います。、むしろ、一連の言動が
表に出る点では十分に「NHLを代表する選手」だといえます。どうもNHLはそんなエイブリーを悪例の
見せしめとして、今回の出場停止処分を与えたように思えてきます。しかしそれでもリーグは少し、
いや相当ラインを飛び出しているんじゃないでしょうか。「アイシング」どころではありません。
私生活での発言でリーグが出場停止を与えるようになれば、じゃあ普段から何を言えばいいのでしょうか?

エイブリーも強情で浅はか、わからず屋だとは思いますが、ゲーリー・ベットマン率いるリーグもまた、
浅はかな判断をしたように思えます。出場停止期間中に、リーグがエイブリーに対して恋愛講座を
指南するのであれば、話は別ですが。


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