
AFC最強のインディアナポリス・コルツを破るにはどうしたらいいのか?ショーン・ペイトンHCとニューオーリンズ・セインツは
この2週間考え続けました。いや、頭では何をしたらいいのかはわかっているはずです。
・自分たちがミスを犯さない
・ペイトン・マニング率いるコルツのオフェンスに攻撃権を渡さない
・そして、コルツより1点でも多く獲得する
問題はこれらを具体的に実行するにはどうしたらいいかでした。そこでペイトンHCが出した答えはあまりにもシンプルな
ことでした。これらすべてを自分たちから仕掛ければいいのだと。
しかし現実は厳しいものでした。最初のセインツのシリーズは3回で終わり、その直後のコルツのオフェンスで早速3点を
奪われます。次のセインツのシリーズはいい具合に進んでいたのに、マーキス・コルストンが落球してリズムを崩します。
その結果、コルツが次のオフェンスでこの試合最初のTDを上げます。
それでもセインツは諦めないどころか、ここからゆっくりを巻き返しを始めました。キーとなったプレイが、2ndQ最初の
このパスプレイでした(この試合のPlay-by-PlayはCBS Sportslineから参照)
D.Brees pass short right to M.Colston to NO 26 for 11 yards (J.Lacey, C.Session)

ドリュー・ブリーズから、先ほどイージーなパスを落球したコルストンへ難しい体勢で確保するパスが通りました。
このシリーズは、ブリーズがドワイト・フリーニーにサックを浴び、FGでの3点で終わりますが、2ndQ開始から5分20秒、
セインツが攻撃し続けました。その後のコルツのオフェンスが3回で終わったのとは対照的です。そして残り8:14から、
セインツは攻撃を始めます。結果としてゴール前までオフェンスを進ませながらも、コルツの集まりが良い守備陣に
得点の機会を逃しましたが、それと引換に、コルツの攻撃を自陣1ヤードから開始させることには成功しました。
おまけに、2分を20分に変換させる能力を持つマニングのオフェンスが、1分しかその攻撃時間を使うことができずに
そそくさとサイドラインへ下がっていきました。その結果、リズムを取り戻してきたセインツのオフェンスは残り46秒から
3点を奪うことができました。
この2ndQでのオフェンスの復調と前半最後のFGこそが、後半最初の驚くべきオンサイドキックに繋がりました。
「コルツに攻撃権を渡さない」ため、「コルツより1点でも多く獲得する」ためには、これほどの賭けを自分から
仕掛けなければダメなんだと、セインツ側は悟っていたのでしょう。現に、ペイトンHCはスーパーボウルに向けて
オンサイドキックの練習を重ねてきており、成功率が6-7割になったから使ったのだと試合後の記者会見で
話しています。トーマス・モーステッドが軽く蹴ったボールがセインツの攻撃権を呼び、それがピエール・トーマスの
パスキャッチからの粘り強いTDへ繋がりました。

タダでは黙らないコルツオフェンスは、その後TDで逆転し、セインツもFGでそれに応え、17-16でコルツ1点差で
4thQを迎えます。このあたりから、セインツのディフェンスもコルツを抑えにかかりだしたと思います。まずは、
LBジョナサン・ヴィルマがRBジョセフ・アダイを止めたこのプレイ。
1-10-IND46 (14:21) (No Huddle) J.Addai right tackle to IND 44 for -2 yards (J.Vilma).
これにより、この試合ではコルツにとってまれな2nd/3rdダウン-ロングという状況を作り出しました。それでも、
パスを通してしまうのがマニングのマニングたる所以なのですが(マニングはこの後軽々と4thダウン2ヤードを
更新してしまいます)、同じことは同じシリーズ内で2回連続起こることはありませんでした。
2-8-NO30(11:33) (No Huddle, Shotgun) P.Manning pass short right to A.Collie to NO 33 for -3 yards (M.Jenkins).
4thダウン成功後のこのプレイが、コルツにとってもセインツにとっても大きなプレイになったと思います。コルツにとり、
このダウンで最悪3rdダウン-ショートを狙いたかったところ、セインツは3rdダウン-ロングを再び作ることに成功しました。
それどころか、3rdダウンの更新をできなかったコルツは、ロングヤードのキックが苦手なマット・ストーバーの51ydのFGを
失敗します。無敵艦隊コルツを倒すためには自分たちがミスをしてはいけないと考えていたところ、コルツ自らがミスを
犯しました。それもこのポストシーズン通じて言われているキッカーによるミスでした。
これにより攻撃権を得たセインツには、今シーズン見慣れたセインツの姿が蘇っていました。確かにコルツの守備陣には
ドワイト・フリーニーが本調子でなくなっていた、あるいは欠場していたということもありましたが、仮にフリーニーが
万全だったとしても、あの時間帯のセインツには勝てなかったでしょう。パスをランプレイのように小刻みに使いながら
前進して行く聖者の姿からは、ミスを犯す余地すら感じられませんでした。そしてジェレミー・ショッキーへのTDパスと、
その後の2ptコンバージョンに繋がります。2ptの場面では、ペイトンHCがこの試合唯一のチャレンジを行い、それが見事に
当たりました。

このチャレンジは後半最初のオンサイドキックと同じく、ペイトンHCがコルツよりも1点でも多く取りにいくのだという
強気さを伝えるためにも効果的だったと思います。試合前からビデオでコルツのレシーバー陣の動きを研究し尽くしたと
トレイシー・ポーターのインターセプトTDも、こうしたペイトンHCの思いの副産物だったということができるでしょう。
全勝中だったセインツがクリスマスを前にして、地元でカウボーイズ相手に初めての敗戦を喫したとき、ニューオーリンズを
ホームアリーナにするホーネッツのクリス・ポールは、静まり返った街中を見て「全てが終わったわけじゃないんだから」と
Twitterに言い残していました。しかし日曜日の夜、というよりしばらくの間は、ニューオーリンズのバーボンストリートや
その他の通りでは、全てを喜びに変えるくらいの大騒ぎが続くことでしょう。チーム結成から44年間、長年NFLのお荷物と
陰口を叩かれ、そしてあの大型のハリケーンから約5年間、一時期はセインツはロサンゼルスへ移転するのではないかと
思われたこともありましたが、それらをすべて撥ねのけて、セインツは優勝を納めました。だからこそ学校や仕事をすべて
休みにしてでもこの優勝を祝う権利があります。
ペイントHCとセインツは、恐らくはルイジアナ特有の"Big Easy"が産んだその強気さでこのチームを優勝に導きました。
どんなシナリオをも超えた、それでいて入念に練られてもいたセインツ優勝のドラマはこれにて完結ですが、
第2シリーズも期待したいところです。
Saints overcome slow start to capture first Super Bowl title in franchise history(NFL.com)
New Orleans Saints win Super Bowl XLIV with 31-17 defeat of Indianapolis Colts (neworleans.com)
Payton's second-half adjustments help Saints capture title(NFL.com)
Well-calculated gambles by Payton(ESPN)
この2週間考え続けました。いや、頭では何をしたらいいのかはわかっているはずです。
・自分たちがミスを犯さない
・ペイトン・マニング率いるコルツのオフェンスに攻撃権を渡さない
・そして、コルツより1点でも多く獲得する
問題はこれらを具体的に実行するにはどうしたらいいかでした。そこでペイトンHCが出した答えはあまりにもシンプルな
ことでした。これらすべてを自分たちから仕掛ければいいのだと。
しかし現実は厳しいものでした。最初のセインツのシリーズは3回で終わり、その直後のコルツのオフェンスで早速3点を
奪われます。次のセインツのシリーズはいい具合に進んでいたのに、マーキス・コルストンが落球してリズムを崩します。
その結果、コルツが次のオフェンスでこの試合最初のTDを上げます。
それでもセインツは諦めないどころか、ここからゆっくりを巻き返しを始めました。キーとなったプレイが、2ndQ最初の
このパスプレイでした(この試合のPlay-by-PlayはCBS Sportslineから参照)
D.Brees pass short right to M.Colston to NO 26 for 11 yards (J.Lacey, C.Session)

ドリュー・ブリーズから、先ほどイージーなパスを落球したコルストンへ難しい体勢で確保するパスが通りました。
このシリーズは、ブリーズがドワイト・フリーニーにサックを浴び、FGでの3点で終わりますが、2ndQ開始から5分20秒、
セインツが攻撃し続けました。その後のコルツのオフェンスが3回で終わったのとは対照的です。そして残り8:14から、
セインツは攻撃を始めます。結果としてゴール前までオフェンスを進ませながらも、コルツの集まりが良い守備陣に
得点の機会を逃しましたが、それと引換に、コルツの攻撃を自陣1ヤードから開始させることには成功しました。
おまけに、2分を20分に変換させる能力を持つマニングのオフェンスが、1分しかその攻撃時間を使うことができずに
そそくさとサイドラインへ下がっていきました。その結果、リズムを取り戻してきたセインツのオフェンスは残り46秒から
3点を奪うことができました。
この2ndQでのオフェンスの復調と前半最後のFGこそが、後半最初の驚くべきオンサイドキックに繋がりました。
「コルツに攻撃権を渡さない」ため、「コルツより1点でも多く獲得する」ためには、これほどの賭けを自分から
仕掛けなければダメなんだと、セインツ側は悟っていたのでしょう。現に、ペイトンHCはスーパーボウルに向けて
オンサイドキックの練習を重ねてきており、成功率が6-7割になったから使ったのだと試合後の記者会見で
話しています。トーマス・モーステッドが軽く蹴ったボールがセインツの攻撃権を呼び、それがピエール・トーマスの
パスキャッチからの粘り強いTDへ繋がりました。

タダでは黙らないコルツオフェンスは、その後TDで逆転し、セインツもFGでそれに応え、17-16でコルツ1点差で
4thQを迎えます。このあたりから、セインツのディフェンスもコルツを抑えにかかりだしたと思います。まずは、
LBジョナサン・ヴィルマがRBジョセフ・アダイを止めたこのプレイ。
1-10-IND46 (14:21) (No Huddle) J.Addai right tackle to IND 44 for -2 yards (J.Vilma).
これにより、この試合ではコルツにとってまれな2nd/3rdダウン-ロングという状況を作り出しました。それでも、
パスを通してしまうのがマニングのマニングたる所以なのですが(マニングはこの後軽々と4thダウン2ヤードを
更新してしまいます)、同じことは同じシリーズ内で2回連続起こることはありませんでした。
2-8-NO30(11:33) (No Huddle, Shotgun) P.Manning pass short right to A.Collie to NO 33 for -3 yards (M.Jenkins).
4thダウン成功後のこのプレイが、コルツにとってもセインツにとっても大きなプレイになったと思います。コルツにとり、
このダウンで最悪3rdダウン-ショートを狙いたかったところ、セインツは3rdダウン-ロングを再び作ることに成功しました。
それどころか、3rdダウンの更新をできなかったコルツは、ロングヤードのキックが苦手なマット・ストーバーの51ydのFGを
失敗します。無敵艦隊コルツを倒すためには自分たちがミスをしてはいけないと考えていたところ、コルツ自らがミスを
犯しました。それもこのポストシーズン通じて言われているキッカーによるミスでした。
これにより攻撃権を得たセインツには、今シーズン見慣れたセインツの姿が蘇っていました。確かにコルツの守備陣には
ドワイト・フリーニーが本調子でなくなっていた、あるいは欠場していたということもありましたが、仮にフリーニーが
万全だったとしても、あの時間帯のセインツには勝てなかったでしょう。パスをランプレイのように小刻みに使いながら
前進して行く聖者の姿からは、ミスを犯す余地すら感じられませんでした。そしてジェレミー・ショッキーへのTDパスと、
その後の2ptコンバージョンに繋がります。2ptの場面では、ペイトンHCがこの試合唯一のチャレンジを行い、それが見事に
当たりました。

このチャレンジは後半最初のオンサイドキックと同じく、ペイトンHCがコルツよりも1点でも多く取りにいくのだという
強気さを伝えるためにも効果的だったと思います。試合前からビデオでコルツのレシーバー陣の動きを研究し尽くしたと
トレイシー・ポーターのインターセプトTDも、こうしたペイトンHCの思いの副産物だったということができるでしょう。
全勝中だったセインツがクリスマスを前にして、地元でカウボーイズ相手に初めての敗戦を喫したとき、ニューオーリンズを
ホームアリーナにするホーネッツのクリス・ポールは、静まり返った街中を見て「全てが終わったわけじゃないんだから」と
Twitterに言い残していました。しかし日曜日の夜、というよりしばらくの間は、ニューオーリンズのバーボンストリートや
その他の通りでは、全てを喜びに変えるくらいの大騒ぎが続くことでしょう。チーム結成から44年間、長年NFLのお荷物と
陰口を叩かれ、そしてあの大型のハリケーンから約5年間、一時期はセインツはロサンゼルスへ移転するのではないかと
思われたこともありましたが、それらをすべて撥ねのけて、セインツは優勝を納めました。だからこそ学校や仕事をすべて
休みにしてでもこの優勝を祝う権利があります。
ペイントHCとセインツは、恐らくはルイジアナ特有の"Big Easy"が産んだその強気さでこのチームを優勝に導きました。
どんなシナリオをも超えた、それでいて入念に練られてもいたセインツ優勝のドラマはこれにて完結ですが、
第2シリーズも期待したいところです。
Saints overcome slow start to capture first Super Bowl title in franchise history(NFL.com)
New Orleans Saints win Super Bowl XLIV with 31-17 defeat of Indianapolis Colts (neworleans.com)
Payton's second-half adjustments help Saints capture title(NFL.com)
Well-calculated gambles by Payton(ESPN)