[短評]Tiger lost in the Woods

The Tiger Woods we knew is gone; which one will take his place? (Washington Post)

アマチュア時代を含めて約15年以上もの間、タイガー・ウッズはゴルフ界の話題の中心でした。アマチュア大会で優勝をしまくり、プロデビュー早々に優勝を果たし、若くしてオーガスタを制してきたタイガーは、若干の停滞期があったにしろ、どのプロゴルファーも恐れ、そして倒すべき存在でした。

しかし2009年の感謝祭の日、自宅前で自家用車を木にぶつけた瞬間から、その威光は衰え始めました。すべてにおいて強気を誇ってきたタイガーが、そのときからメディアに別の形で追求されはじめます。それに加えて、膝の故障を抱えていたタイガーは、心理的セラピーからの復帰をあせるあまりに、アキレス腱にも故障を抱えてしまいます。

3年前の6月、タイガーは膝の痛みに耐えながらも、全米オープンに奇跡的な優勝を果たしました。しかし先月のプレイヤーズ選手権では、同様の痛みを抱えていたタイガーはたったの9ホールで棄権をしました。その結果、14年間保ってきたトップ10入りすら果たせなくなりました。そして今月の全米オープンには、タイガーは出場しないことが発表されました。その代わり、膝とアキレス腱の治療に専念することになります。

アスレティック・ゴルファーのはしりでもあったタイガーは、そのあまりにも力強すぎるスウィングゆえ、脚や膝への負担も相当のものがあったと言われています。今回、自らの体の治療に専念することは、評論家からはむしろよい選択であったと評価されています。タイガーがシニアツアーに行くかどうかはともかく、少なくとも50歳まで現役を続けていくには、今の時点で治療を行った方がよいからです。ただし治療が済んだとしても、今までのように体へ無理を強いていたようなプレイスタイルができるかはわかりません。

しかし、それ以上に現在のゴルフ界では、もはやタイガーを恐れるほどにはならなくなったとも言えます。特にタイガーに憧れてたであろう、20代の若い世代が台頭してきた現在、彼らはタイガーに臆することはありません。むしろタイガーが優勝できない、あるいはプレイできない間に、彼らの間での競争意識が高まり、それがレベル向上とゴルフ界の盛り上がりに寄与するように感じられます。ただしスポンサー側やテレビ界では、タイガーがいないことについていまだに迷いが見られるようですが。

そしてこうした若手の台頭は、タイガーにとっても新しい状況が来ることを意味します。長年、自らがトップに立ち、ライバルの選手から追われる立場にありました(事故後はメディアから追われるようになりましたが)。しかし30代後半にして、タイガーは自らのデビュー当時と同じように、追う立場になって復帰することになります。タイガーの真骨頂といえば、今年のマスターズでもその片鱗だけを見せた「タイガーチャージ」ですが、今度はそれをシーズンを通して仕掛け続けなければなりません。長い休養を経て健康体になったタイガーは、様々な意味で自分を新しい環境に適応させていかなければならず、同時にゴルフ人生の中で出会ったことのない現実と向き合わざるを得ないのでしょう。