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[短評]A star was dead

2009-06-26 23:09:11 | 日常生活
World mourns pop legend Jackson(BBC news)

現在ABCテレビで夕方のニュースのアンカーマンを務めているチャールズ・ギブソンは、かつて同じ局の
"Good Morning America"の看板キャスターでした。ギブソンはそのころどのような考えの下でキャスターを
行っていたかを聞かれ、「朝起きて、みなさんが寝ている間に世界中で何が起こったのか、そして皆さんが
寝ている間に地球が滅亡しなかったことを伝えられることが重要だった」と答えていました。

しかし、2009年6月26日の朝、日本中の人たちは、地球は滅亡しなかったにしろ、あるものが消えかかって
いることを知らされました。マイケル・ジャクソンがこん睡状態で病院に運ばれた、そのようなニュースが
NHKを含めた日本中と、ロサンゼルスを含めた世界中を駆け巡りました。それどころか、NHKはロサンゼルスの
芸能系ウェブサイトの記事を借りて「ジャクソンさん死亡か」なんていうビックリする見出しを7時過ぎには
既に出していました。その裏では、CNNはマイケルの死亡を慎重に確認し、BBCは淡々とUCLA病院を空撮し、
ファンは病院前に集まったり、Twitterにその思いを書きなぐっていました(一時期は投稿が集まりすぎて
Twitter自体にアクセスできなかった!)そして、日本中の多くの人が朝食をとり、また身支度をしている間に、
マイケル・ジャクソンの死亡がパパラッチ系メディア、LAタイムズ、AP、BBC、そしてCNNなどと次々と
確認されていきました。

マイケルの心臓病は前々からその兆候があったと言われているけど、それでも今日の死亡を予想した人は
誰もいなかったはずです。マイケルが倒れ、人々が病院前に集まり、そして死亡が確認されるという一連の
できごとを振り返ると、人の死に際を見てしまった印象すら受けます。これほどまでの超がいくつあっても
足りないくらいの大物の死亡を進行形で見たのは、パパラッチに追われた最中に死亡したダイアナ妃以来では
ないでしょうか。

一方で、特にアメリカ人にとって、マイケルの死は、ありふれた言葉で表現するのであれば、いつも見ていた
家族や友達(もしくは悪友)が死んでしまったのと同じかもしれません。インディアナ州で生まれたマイケルは、
「ジャクソン5」のころからアメリカ人が慣れ親しんだアイドルでありスターでした。アメリカ国民と世界の人は、
マイケルが年齢的、体格的な成長と比例どころかそれを遥かに超える勢いで、「大スター」という言葉では
収まりきれない、アメリカそのものを超えるくらいの人物になるところを見続けてきました。死亡が確認されてから、
CNNのトップページに現れるマイケルの画像は、子供のころからスターダムにのし上がったころ、絶頂期のころと、
時間が経過するごとに変わっていきましたが、人々はあのような形でマイケルの成長物語に接しました。
マイケルは「アメリカン・アイドル」が始まる何十年も前からの「アメリカン・アイドル」であり、同時にそれは
リアリティ・ショーでした。もちろんスーパースターになった後、マイケルが奇行に走ったり、落ちぶれていく
ところも接していくことにはなるのですが。

そして今日、スターの誕生から見守ってきた世界の人たちは、突然「アメリカン・アイドル」の最終回を迎えました。
世界で最も密度の濃い50年を過ごした男は、世界の人々に一瞬の心の準備をさせる暇もを与えませんでした。

マイケル・ジャクソンは生涯スーパースターでした。そしてこれからもきっとそうでしょう。一方で偉大すぎて凡人には
理解しがたいところも数多くあったことも事実です。時には孤独になったこともありました。マイケル・ジャクソンは、
ひとりでアメリカそのものを体現し、アメリカのエンターテイメント界の縮図を演じ続けたのではないでしょうか。
「アメリカン・アイドル」が終わった今、こう言いたいです。

何の心配をせず、ゆっくり休んでください。


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