[NFL短評]クリス・ヘンリーの死

Bengals WR Henry dies from injuries sustained in domestic dispute (NFL.com)
Chris Henry's death interrupted his redemption with Bengals (SI.com)
Bengals deal with a second tragedy (ESPN)
Chris Henry: Family Guy (cincinnati.com)

得てして、ワイドレシーバーの選手は自分が目立ちたいと思うところが多くあります。その欲望が時には
重荷になり、悪い方向でその重荷から開放されたいと現実から逃避し、そのまま悪いイメージが植え付け
られてしまう選手も何人もいます。

才能が高いシンシナティ・ベンガルズのワイドレシーバー、クリス・ヘンリーもまたその中の範疇に
入るかもしれません。ウェストバージニア大学時代、そしてベンガルズ入団後もヘンリーはチームへ
プレイでは貢献し、それ以外では迷惑を掛け続けました。逮捕劇があまりにも重なってしまったため、
2007年には、NFLはアダム・"パックマン"・ジョーンズとともに出場停止の罰則を与えました。それにより、
この2人がNFLのイメージ向上に悪いものであり、NFLはそうした人物に対して容赦しないということを
知らしめました。

しかし、多くの記事によれば、この出場停止以降、ヘンリーは独りよがりの人生から家族やフィアンセを
大事に思う人物になることで、再スタートのきっかけをすることに成功したようです。一度はヘンリーを
追放したベンガルズは、2008年に彼を呼び戻しました。確かに、そのときにはなぜベンガルズはこの
トラブルメーカーを受け入れたのかを疑問視していた声が数多くありました。ヘンリーは変わり始めた
ばかりだったことに、ヘンリーに近い人達は察知していたのかもしれません。マーヴィン・ルイスHC曰く、
ヘンリーは"redeemer"でした。

ヘンリーは今シーズン中盤にケガをし、それ以降の試合に出場していませんでしたが、そのケガからの
回復と同じくらい、人生の進む道を変えようとしていましたが、その最中に、フィアンセとの口論から
起きたピックアップからの転落事故により、瀕死の重体となりました。そしてヘンリーは人生の戦いに
負けてしまいました。「かつての」トラブルメーカーが、どういう原因かはわかりませんが、新たな
トラブルにより、新たな道を進むことすらできなくなったことは非常に残念ですし、もとより才能高く、
若いレシーバーが失われたことが残念なことです。

勝利を積み重なているベンガルズは、10月にディフェンスコーディネーターのヴィッキ・ジマーの奥さんが
亡くなるという悲劇がありました。その直後の試合でベンガルズは勝利し、その後のロッカールームではとても
感動的なシーンが展開されました。そしてプレイオフ進出は確実にしながらも、重要なチャージャーズ戦を前に、
ベンガルズはチームメイトの死に直面しました。ヘンリーが人生をやり直しているように、ベンガルズは2－3年の
低迷期から脱出し、プレイオフ進出チームになりました。ヘンリーはそんなベンガルズの象徴だった、そう言える
かもしれませんが、もうヘンリーがベンガルズをフィールドで勝利を導くキャッチをすることはありません。

もうひとつ、今回の事件で印象に残っているのは、日本時間の木曜日朝にこの事故が報じられて以降、
数多くのNFL選手がヘンリーを非常に心配し、その仲間の回復を祈るように数多くのtweetをしていたことです。
残念ながら、その祈りは通じることはありませんでしたが、この団結力には感銘を受けました。