カタスミ

『マドンナ』奥田英朗著

年下の部下に恋をした
既婚40代課長のお話他、短編集。
以下ネタバレあり。



















奥田英朗氏の短編が好きなので購入しました。
ん~、まあまあかな?
主役は40代の既婚課長(全て別人)達。
サラリーマンおっさんの短編集5編となります。

●マドンナ
表題作。42歳課長が異動してきた
20代半ばの女性に恋をしてしまう話。
既婚なので深入りはしないものの、
彼女の言動で喜んだり、嫉妬したり、落ち込んだり、
同じ部署の部下の独身男性と張り合い、
最終的には殴り合いのけんかしたり(笑)
でも結局その女性は他に好きな男がいて
また日常に戻りました、と言う話。

そういえば、昔いた会社も
おっさんが若い女子に告白したりってありましたけど
今思えばいくつになっても性格的なものは
若い頃から大して変わらないので
あんまり年取った感覚がないんだろうなぁ…
逆に若い方は年上と同年代はしっかり線引きするから
ジェネレーションギャップみたいなのが出来るんだろうねぇ…

●ダンス
息子が大学には行かずにダンス育成学校に進学すると言い
頭を悩ませる40代課長のお話。
また、会社の同期の一人が自由人で、部長に媚びを売る事もなく、
煙たがられていたが、同期であるが故降格騒動に巻き込まれていく。

最近世間を騒がせている騒動にも見られるが、
昭和の風潮を残す企業って媚びへつらいが必須みたいな所ありますよね…
最近だと社内行事強制参加もパワハラと言われるようになってきてるのかな?
会社での権威を自分の権威とはき違えたおっさん達をよく見ます。
こういう会社のサラリーマンは大変だなぁって思いますよ。
ただ、息子に関しては、大学行かずにダンス学校で働いて学ぶって言うのより
課長が言うとおり、大学に通いながらダンス教室にも通うって言う方が良いと思う。
若い頃ってこれ一直線に頑張る事こそ正義、みたいな所あるけど、
いくつも選択肢残しておいた方が良いと思うし。
世の中そんなに甘くないよなぁ…と思います。

●総務は女房
営業のエリート課長は2年だけ内勤の経験を積み、
その後また営業に戻る予定で腰掛け総務の課長になる。
が、総務は業者との癒着で自分達に都合良くなるよう
いろいろとちょろまかしていた…

これも今の時代だとアウト?
これ書かれたのが2002年らしいので、
平成半ばくらいならまだ昭和の名残もあっただろうけど
多分今だと総務の長全員取り替えになりそうね。
エリート課長は最初はきちんとしようと奮闘するけれども
総務の役職付き総出で頭を下げられ、妻からも責められ、
最終的にはどうでもよくなって総務に丸め込まれるという…
今の日本の縮図だなぁ…と思います。
こういう負の遺産が積もりに積もって
今あちこちで噴出している訳ですから。
最初からきちんとしときゃあいいんですよ。
この課長も忘れた頃にとんでもない事に巻き込まれないと良いなぁ…

●ボス
新しくやり手の女部長がやってきた部内の課長を中心に
新しいやり方をどんどん取り入れる女部長に
ついていけない昭和の男たちが描かれております。

残業を無くす、社内行事参加は個人の自由、などなど
とても良い事をしているのは重々承知しているが、
やっぱり勝手に頭ごなしに決めるのではなく
部内の意見も聞いてからにしないと
上司としては失格じゃないかなぁ…?

他人行儀で、本音を見せない女部長にイライラする課長だが、
最終的に、水曜ノー残業デーにしたのは
女部長が自分の推し活を滞りなく実行する為だった事が判明し、
課長は人間らしさが見えて親しみを覚えるのですが、
いやぁ、私だったら逆に切れるわ…w
あんだけ一方的にさも会社の為ですって顔してノー残業うたったのって
え?推し活の為?は?舐めてんの?ってなりそう^^;
いや、課長達よりも部長のやり方の方が全然いいんだけどねw
ただ、課長の奥さんの推し活姿を見せてからの、部長の推し活にもっていく辺り
伏線の張り方とか回収の仕方とか上手いなぁと思いました。

●パティオ
都市開発会社、港パークの開発担当課長は
いつもパティオと呼ばれる中庭にやってくる老人に気付く。
昨年母を亡くし、一人田舎に暮らす父と重なり、
毎日静かにパティオで本を読む老人が気になり始める。

一番好きなお話。
老人との微妙な距離感が良いですね。
田舎の父親との関係も模索しつつ、
老人がいつも一人である事も気にしつつ、
仕事だから港パークの開発もしないといけないし、
いろいろイベントをする事で、静かだったパティオに人が集まり
老人の居場所を取ってしまったという罪悪感も有り…
ベタベタ仲良くする訳ではないが、ちょっとだけ顔見知りになり
ちょっとだけ会話をして別れる、って感じが切なくて良い。
最後の方は少しうるっときてしまいました。

今回の短編集は、まぁこんなもんかな、という感じでしたが
文章が落ち着いていて、安心して読めました。
星は3つ。
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